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第67回
プロ野球選手の生き方を再認識した出直しの開幕
レギュラーシーズン開幕日、東京ドームに集まってきた私の周囲の人たちは何か片付かない気分でいるようでした。私も半月ばかりイライラの毎日。待ち遠しかった開幕でしたが、いつもの年のように「さあ行くぞ」と心から弾んだ気持ちにはなれなかったのです。
満員のスタンドのファンに向かって、新オーナーと新監督がそろって「お詫び」の挨拶をしました。巨人球団史上初めてのことでしょう。情けなく、お恥ずかしい事情は、皆さんご承知の通りです。
野球賭博関与は球界で最悪の行為ですから、断罪は言わずもがなで、口にするのも気が滅入ります。それに続いた、試合前の円陣の「声出し役」をめぐる選手間の金銭のやり取り、これが皆にモヤモヤ気分を生んでしまったのです。
「法律とは最低限の道徳」でしたか...そんな言葉があるはずです。法律違反をしないというのは、社会人として最低限のモラルは守っていますよ、という程度のことで、別に自慢にはなりません。ましてや「野球協約」は法律ではありませんから「協約違反ではない」などという弁解のレベルはかなり低い...。いや、嘆きはこれくらいにしておきます。

プロ野球選手の義務の一つと言える「常にかっこよく」の意味
プロの野球人に限ったことではありませんが、人の生き方は、シンプルなことを心に留めるだけでずいぶん違ってくるはずです。例えば、恥ずかしいこと、みっともないことはしない、これで相当カバーできます。ベンチ入りする28選手は、日本野球界が作る大きなピラミッドの頂点にいます。野球界のエリートですから、かっこいいのが当たり前、職業上の義務の一つが「常にかっこよく」だ、と言っていいくらいです。
"有料の声出し"でチームの一体感を得ていたとは、プロ野球とはそんな安直な仕事なのでしょうか。自分の職業をおとしめるみっともない行いと思わなかったのか、これが数チームにまで広がっていたとは...。プロ野球全体が安っぽくなったようで悔しくなりました。
オーナー、監督のお詫びの時、私はブーイングがあるのでは、と多少緊張していました。おそらく選手も同じ、身も縮む思いだったでしょう。ファンは静かに見守ってくれたのですが、ファンに迷惑をかけたという全員の緊張感が開幕3連勝を生んだと思います。
巨人の今季は、この緊張感を最後まで持続することに尽きています。

ファンの期待「らしく」を全うすることの難しさ
ファンはチームと選手を磨き上げます。「もっと勝て」、「もっといいプレーを」、「もっと面白い試合を」と常に働きかけてくる声援です。そんな期待に応えるため力を尽くすチーム、選手への原動力が声援です。また、その声は、応援するチームや選手の"理想の姿"を求める声でもあるでしょう。例えば、ファンは、「スポーツマンらしく」、「オリンピックのメダリストらしく」、「巨人選手らしく」とよく言います。この「らしく」の中身は説明しにくいものですが、それには「かっこいい」という共通項があるはずです。
巨人が3連勝した夕方、大相撲春場所の千秋楽で白鵬が4場所ぶり36度目の優勝を果たしました。NHKテレビのインタビューで白鵬は「ああいう変化(左に変わって日馬富士の突進を外した)で決まるとは思わなかったので、本当に申し訳ないと思います」と涙しました。
私は、勝負だから許せる、と考えますが、「横綱らしくない」との声に白鵬は涙で答えたのです。「堂々と胸を合わせて組まなかったのはダメだ」と厳しいのです。白鵬ほどの大横綱にも「らしく」を全うするのはこれほど難しいのです。
V9時代に「勝ち方が巨人らしくない」とやられたことを思い出しました。また、軽く打てば勝利打点になるけれど、長嶋だからそうはいかない、とフルスイングしたこともよみがえってきました。
巨人は、ファンがイメージしていた「巨人らしさ」から後退してしまいました。一からの出直しではなく、マイナスからの出直しです。それを覚悟しての戦いが今季なのです。
第67回 プロ野球選手の生き方を再認識した出直しの開幕
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