防犯対策・セキュリティのセコム TOP
> ホームセキュリティ
> おとなの安心倶楽部
>
月刊 長嶋茂雄
> 第32回 国民栄誉賞受賞の喜びと感謝、そして松井のこと

第32回
国民栄誉賞受賞の喜びと感謝、そして松井のこと
私事になりますが、国民栄誉賞の受賞はうれしかった。国からお誉めいただいたのは「文化功労者」(2005年)がありますが、こちらは背筋を正して「謹んでお受けいたします」。今度は「ありがとうございます。うれしいなあ」です。たちまち部屋は送られてきた花でいっぱいになって花屋の店先のよう、ちょうど玄関先のサクラも満開で、我が周囲はいっきょに華やぎました。
うれしさがさらにふくらんだのが松井(本当は松井秀喜さんと言うべきですが、ここは普段着で、松井で行きます)とセット、ではなかった、一緒に受賞できたこと。それから、授賞式が首相官邸ではなく、松井の引退式と重ねて東京ドームのファンの前でやってもらえることです。
ファンを喜ばせるプレーを信条に、また、ファンに支えられてきた野球人としては、球場が舞台になったのは最高です、そこに立つだけでファンへのお礼になりますから。
二人同時受賞も"職場"での授賞式も過去になかったはず。こんなユニークさも私の好むところです。

松井は私の野球に対する考え方の継承者
松井受賞でまず思ったのは、「ヤンキースでも良くやったからな」ということです。大リーグで最も質の高いプレーを要求され、最も厳しい眼を光らせるメディアとファンに囲まれたチームで、チームの勝利第一の姿勢と誠実なプレー態度を貫きました。
ワールドシリーズのMVPが金字塔ですが、今後この賞を獲得する日本人選手は出現しないのではないでしょうか。巨人での働きと合わせて、受賞は文句なしだと感じています。
ただし、うれしさの中身にはそういった成績とは別の感慨もありました。私は松井を私の野球に対する考え方の継承者と思っていたからです。
たとえば、大リーグ行きを決めてそれを私に伝えに来た時の顔つきです。話さないうちから「行きます」、「行かせてください」との複雑な思いがなんとも言えない表情に出ていました。このときの顔は、記者会見での「日本ファンからは裏切り者と言われるかもしれませんが・・・」に続きました。
フリーエージェント(FA)ですから、大リーグ行きはだれにも遠慮はいらないのです。それなのに、本当にすまないと思っているのです。またそれはヤンキースで左手首を骨折した時に「迷惑をかけて申し訳ない」と"謝罪"して地元メディアを驚かせ、ファンを感動させたときの顔にもつながります。
根っからの謙虚さもあるでしょうが、野球人として、ファンを最上位に置いているのが分かります。「ファンに喜んでもらえるプレー」一筋の私の信条と重なるのです。ですから一緒の受賞がたまりません。
松井は折にふれて「監督(私のことです)が好きなジョー・ディマジオは"私はこの試合だけしか観に来られないファンを思ってプレーしている"と自分の全力プレーの意味を語ったと言いますが・・・」と"PR"してくれます。松井自身の気持ちも込められているのを感じますね。

ファンの皆さんと一緒に賞をいただく気持ちで
松井の受賞談話で、最高の思い出は私と1対1の素振り、とも言ってくれました。偶然ですが、このバットの空気を切る音で判断し、正しいスイングを身につける素振りについては3カ月前のこのページでお話ししました。松井はさらに、ある選手が私にバッティングの相談の電話をしたら、「電話の前でバットを振って、音を聞かせろ」といわれた、と書いているそうです。読んだ人が、「本当ですか?」と言う。分かっていませんね。
松井の素振りに付き合う私は、時に目をつぶってスイングの音だけを聞いていました。自分の選手時代の素振りでも部屋を暗くしてスイング音だけに集中して振り続けたこともあります。受話器のマイクがスイング音を拾えれば、振りの良し悪しの判断は可能なのです。それは松井も承知のはずです。
と、まあ、この種の話には気合が入ってしまいます。授賞式には何やら趣向があるような気配ですが、それは当日のこと。グラウンド上に起こるすべてに対応するのが野球人ですから、「なんでもこい」と弾みます。
ファンの皆さんと一緒に賞をいただく気持ちで松井と並んでグラウンドに立とうと心の準備をしています。
第32回 国民栄誉賞受賞の喜びと感謝、そして松井のこと
長嶋茂雄さん 看板豆知識・伝説・語録
歴代のセコムオリジナル長嶋茂雄さんの看板(ビッグボード)と、それにまつわる豆知識のご紹介や、1957年に通算8本塁打で東京六大学リーグ本塁打の新記録を達成してから現在にいたるまでの、長嶋茂雄さんの伝説「NAGASHIMA Living Legend」と、数々の名言を世の中に送りだしてきた長嶋茂雄さんの名言「伝説の長嶋茂雄“語録”」をご紹介します。