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第34回
4番打者の選択論争
6月22日、カンボジア・プノンペンで開催された世界遺産委員会で、世界遺産に「富士山」が決定しました。長年、いろいろな方々の活動が実って、実現したもので富士山が大好きな私にとっては大きな喜びでした。
さて、今回は「4番打者」の話です。
「4番打者」がファンや野球記者の間で熱っぽく語られることが少なくなった気がします。今年になって「4番打者」がすこしばかり話題になったのは開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の時でした。
「日本の4番を誰が打つのか?」。話が熱くならないうちに巨人の阿部(慎之助)に落ち着きました。4番・阿部に異論はありませんが、強力な対抗馬が見当たらず、話が盛り上がらなかったのが残念でした。
各チームの3番、4番をみると外国人選手がほとんどです。今月のオールスター戦で、外国人選手と4番の座を争うのは、セは阿部、パは日本ハムの中田(翔)ぐらいでは「4番打者論争」は期待薄です。オーバーかもしれませんが、これでは日本人の「4番打者」は"絶滅危惧種"になりかねません。選手時代のほとんどで「4番」を打ってきた私としては、気になります。

O⇒Nと組むか、N⇒Oにするか
もっとも半世紀も前の私の選手時代に「4番打者論争」が続いていたのは、王(貞治)さんの存在が大きかったでしょう。
当時は「4番最強打者」が定説でした。その一方で、大リーグは「3番最強打者」ではないか、との説もありました。大リーグ史上最強コンビがヤンキースの3番ベーブ・ルース、4番ルー・ゲーリッグだったからです。ホームラン王ルースと鉄人ゲーリッグのどちらが最強打者かは難しい。そんな「最強打者論争」も加わって、3番、4番をO⇒Nと組むか、N⇒Oにするか、ファンにも野球記者、解説者にも絶好の話題になったのです。
「もし監督だったらどうする?」と記者たちに聞かれます。「ためらうことなくO⇒Nですよ」と決まり文句で答えました。昔の記事を点検してもらうと、案の上でした。「ワンちゃんが前で打てば打つほど闘志が沸く。気負いすぎてやられることもあるが、相手にダメージを与えるには3番・王、4番・長嶋以外には考えられませんよ」。
王さんの答えは「僕はどっちでもいいんだけれど、監督の立場で考えるとやはりO⇒Nでしょう。勝負強い打者が後ろにいた方が相手投手によりプレッシャーが掛けられる。僕は出塁率が高いので、3番の方がチームの得点力は高まるはず」とあったそうです。王さんに投げる投手は、後に控える私のことも気になる。集中力が分散され失投が多くなり本塁打出来る甘い球も、四球での出塁も増えるわけです。
ラインドライブヒッターの私がロングヒッターの王さんに負けずに打点を挙げるには、走者を置いた場面は絶対に逃がさない、とのこだわりが必要でした。4番への執着も王さんより強かったようで、王さんと打順を入れ替えられると反発心がわいてよく打ちました。
ファンや野球記者には「4番打者」探しではなく、「どちらを4番に」の選択論争、これは熱が入るでしょう。客観的に考えもONコンビのような3、4番はもう生まれそうもありませんから、贅沢な論争で楽しかったに違いありません。私も自分を磨いてくれたチームメイトに恵まれた幸運に感謝するばかりです。
ルース・ゲーリッグやONは球史の例外でしたね。

日本人4番打者育成に取り組む時期
さて、そこで、今の「4番打者」。またもパ上位になった交流戦での印象ですが、セ・リーグに比べパ・リーグには昔からの4番打者のイメージに重なる"一振りにかける打者"が多かった。"絶滅危惧種"には保護、育成しかありません。日本ハムの中田も今季4番に座るまでに6年でしょう。指名打者制で打者1人多く使えるのも育成の助けになっていそうな気がします。セ球団もスケールの大きな打者育成に忍耐強く取り組む時期を迎えていると思います。
「昔の空は青かった」めいた話になりましたけれど、セオリーはどうなのか。巨人V9の教科書『ドジャースの戦法』で確かめてもらいました。
「3番には確実な打者を選ぶ。脚も速くパワーも必要。4番は長打で得点を挙げる打者、脚は速くなくてもよいが、走者がいるとき投手を恐れさす存在でなければならない」。
教科書的には王さんの方がわずかに4番打者に向きの感じですが、私はアウトロー・プレーヤーでしたから教科書規格外れの4番打者でよかったのです。
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