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第27回
2012年のグッド・ニュース
今の「重大ニュース」を昔は「十大ニュース」と言っていた気がします。自然災害や事故や事件・・・その年の話題ベスト・テンです。社会の関心を集めた度合いでニュースのランク付けですが、何だか、毎年悪い出来事の方が多くて、良い話はランクの下の方に二つか三つ並んでいる年が多かった感じがしています。
人間は失敗や苦境の方が長く記憶に残るらしい。これは球界も同様です。「ファインプレー」は三日で忘れられますが、私のように本塁打してベースを踏み忘れたり、前の走者を追い越したりしたりすると誰も忘れてくれず、何十年も後までも話の種にされてしまうのです。

何度失敗してもめげるな、くじけるな
さて、そこで今年のトップ・ニュースですが、これはグッド・ニュースですね。iPS細胞作製で山中伸弥先生のノーベル医学生理学賞の受賞、文句なしでしょう。この細胞は再生医療や難病治療の新薬開発への応用が期待されるといいます。"万能細胞"とも言うらしいから、私たちにも分かりやすい。「うーん、万能とは大したものだ」と、私の受賞業績への理解はこの程度ですが、新聞やテレビで報じられた山中先生の話しがとても良かった。
若い人たちに向けた講演で「9回失敗しなさい。それが1回の成功につながる」と語りかけたと言います。
我々バッターの世界では失敗が7割で3割の打率を挙げれば一流打者とみなされます。「野球は失敗のスポーツ」と言われるゆえんですが、ノーベル賞レベルの科学の世界では"打率3割"は夢物語、本当は1割成功をしてもそれがすべて大きな成果に結びつくものではなさそうです。山中先生は若い人たちにハードルを低くして話したのでしょう。先生の失敗は9回程度ではすまなかったはず。そんな気がします。とにかく何度失敗しようが、つまずこうが、めげるな、くじけるな、持続こそが力だ、と励ますのです。
「そういうことだ」と私は共感してうなずき、1本のヒットあたりの素振りの数は何百回になっていたかな、などと思いを巡らしました。表舞台に出ない練習を失敗例に加えていけば、ノーベル賞には遥かに及ばないまでも我らバット・マン生活なかなかの難行だった、と思わないでもありません。
そういえばホームラン王の王(貞治)さんも3000本安打の張本(勲)さんも「練習量だけは誰にも負けない」という意味のことを言っていました。私も二人に負けないと思っているのです。練習量=失敗量がバット・マンの自負になっているのですね。
山中先生の話はさすが科学者でデータが入って具体的でした。医師として挫折し研究者に転じたエピソードがたまりません。手術が下手で普通の医者が20分で済ませる手術が2時間もかかってしまったこと。他の医者の邪魔になるので「じゃまなか君」と呼ばれたこと。笑ってしまいますが、とりようによっては、いじめに近いようで、そうとう厳しい。
挫折感は大変だ、と誰にもわかります。そんな体験をした科学者が「9回失敗しなさい」と言ってくれるのですから気力がわいてきます。先生のお人柄もこのユーモラスなエピソードで良くわかり、身近に感じられ明るい気分になり元気が湧いてきます。
間違いなく今年のトップ・ニュースでした。

元気をくれた日本選手の活躍
これにロンドン五輪の日本選手の活躍を続けたい。金メダルは7個と少なかったけれど、メダル総数38個は史上最多だったとか。なでしこジャパンは銀メダルと渋かったが、よかったなあ。女子選手が頑張った大会でした。メダリストの銀座パレードに50万人もの人たち駆けつけたというのも、昨年の大震災以降いかに日本中が明るいニュースに飢えていたかのあらわれでした。
今年の重大(十大)ニュースの上位は元気をくれたこの二つです。
全くの余談ですが、気になったこともある。20分の手術予定時間が2時間もかかってしまった山中先生の患者さんのご家族、手術中はどんな思いだったのか。先生は患者さんに謝ったそうですが、その後の"物語"を失礼ながら想像すると微笑がこみ上げます。もうひとつが政治、外交、経済の失敗は何回目になるのか、一体いつ1回の成功に結びつくのか、です。
グッド・ニュースには巨人の"日本一"もありますが、客観的には下位ランクかな。失敗続きの後の久しぶりの王座ですから、個人的にはほっとしたニュースですけれど。
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