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第57回
頭と体。野球の面白さを発見するのは?
野球に体でぶつかっていって、汗をかき、身をもって面白さを発見して夢中になった。野球に限りませんが、スポーツを好きになるのは、かつての子供たちのこのダイレクトな行き方が理想でしょう。"野球教科書"を読み、映像を眺めて頭の中でイメージをこしらえ、さてグラウンドで、というのでは、体当たりで得られる熱さ、楽しさにはかないません。しかし、子供たちが野球に飛び込む環境となると...。そんなことを考えたのは、小学校の体育の授業で野球を教えるNHKのニュースを見たOB野球記者が「驚いた」という話を聞いたからです。
「ボールを投げるのに右腕と右足を一緒に前に出すから、ボールの押しだしです。右打者がバットを構えると左手が上で右手が下。これではバットが振れるわけがない」。女の先生はもちろん男の先生も野球経験を持たないのが大半です。先生と生徒の悪戦苦闘の場面に、苦笑するより驚いて、「野球の将来が心配」というのです。危機意識の見出しが、ちょっと大きすぎる気がしますが、問題点を衝いているのはたしかです。
私たちの子供時代は体当たり挑戦です。泳げない子がいきなり水に飛び込んだのと同じですから、必死で覚えてしまう。体が先で頭(ルールやプレーを考えるのは)そのあとです。道路でキャッチボール、空き地で三角ベースがどこでも見られた時代です。生活環境が違う今とは比較になりませんが、ボールの投げ方、バットの持ち方の講義から始めないといけない時代を野球は迎えているのですね。

ちびっ子ファン対策のためのアメリカでのデータ提供
子供の野球離れはアメリカでも同様らしい。最近リトル・リーグのチームが激減し、「なぜ子供たちは野球を見捨てたか」と、"国民的娯楽"の危機に警鐘をならす連載記事が有力紙に載ったそうです。
大リーグでは今季から打席をたびたび外す打者、投球間隔の長い投手には警告を発して強引とも思える試合時間の短縮策を始めました。これはナイターの長い試合時間を敬遠して減っているちびっ子ファンに球場に来てもらうため、と大リーグ機構は明言しています。テレビ観戦のファンには、コンピューター・ゲーム世代に合わせて各種データのサービスです。ホームランが出た。すると打球の初速が時速175キロ、27度の角度で打ち出され、滞空時間5・36秒でスタンドに落ちた...というような速報です。
子供たちを野球に引きつけようとの努力は分かりますが、最初は珍しいデータでも慣れてしまえば興味を引き続ける効果に限界がありそうな気がします。

スポーツ庁に期待するちびっ子ファン対策
データと言えばこんなことがありました。
「40年近く昔にお預かりした本です」と古文書みたいな英文の本を昔の担当記者が持ってきた。私の監督2年目の1977年、「さわりを訳してノートを作ってくれないか」とキャンプで渡されたのだといいます。『パーセンテージ・ベースボール』名門大学の機械工学者の野球データ分析本です。贈られた本と思いますが、記憶はあいまいです。そのOB記者は、最近のアメリカの新聞の電子版に今のデータ分析野球の原点の本、と書かれているのを見て思い出し、探し出したというのです。「ミステリーを読む程度の英語では、数学の専門書ですから歯が立ちません。困っていると巨人は開幕からどんどん勝ちだした。それで翻訳などどうでもよくなってしまって」。
私もどうでもよくなって、忘れてしまったらしい。この年はリーグ優勝でしたから、記者の英語力がまともだったならば、私はデータ野球の先駆的監督になっていたかもしれませんが、面白い野球の提供という面ではどうなっていたことか。
データは野球を舞台裏で支えるものだと思うのです。
データ野球がメディアで盛んに報じられるアメリカでも「野球をコンピューターの中から野原のもとへ取りかえせ」という声が高くなっているといいます。
日本では今年の10月にスポーツ庁がスタートします。プレーできる広場の拡大、指導者の育成など、環境作りに期待したいところです。子供たちが思い切り体を動かし、汗を流して野球の面白さを自分で発見できるようになって欲しいものです。
長嶋茂雄さん 看板豆知識・伝説・語録
歴代のセコムオリジナル長嶋茂雄さんの看板(ビッグボード)と、それにまつわる豆知識のご紹介や、1957年に通算8本塁打で東京六大学リーグ本塁打の新記録を達成してから現在にいたるまでの、長嶋茂雄さんの伝説「NAGASHIMA Living Legend」と、数々の名言を世の中に送りだしてきた長嶋茂雄さんの名言「伝説の長嶋茂雄“語録”」をご紹介します。