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第37回
「猫の目打線」巨人の独走
巨人はレールの上を走るように順調に勝ち進んでセ・リーグのペナントを勝ちとりました。私の周囲では「何だか山場のないレギュラーシーズンだったな」と言う声が聞かれました。「夏場に阪神が競りかければ盛り上がるはず・・・」。そんな"余裕の期待"も7月、8月の対阪神戦10試合が8勝2敗ですから、"猛暑の夜の夢"で消えてしまいました。
独走でしたね。
「だけど変な独走だ」とOB記者が言い出しました。独走チームは、バッティング・オーダー(打順)が安定しているもの。今季の巨人打線は「猫の目だ」と言うのです。猫の瞳は光の強弱に敏感に反応して大きさがしょっちゅう変わります。勝てないチーム、打てないチームが、何とか点を取ろうとジタバタして試合ごとに打線を組み替えるのが「猫の目打線」。「独走チームがこれだけ打線を変えたのは記憶にない。原(監督)の趣味かなあ?」。
確かに打順はよく変わった。あまり動かすものではないクリーンアップまで結構動きました。阿部(慎之助)だけはおおむね3番から5番の間で納まっていましたが、坂本(勇人)や村田(修一)は上がったり、下がったり、激しかった。
「監督が選手を完全に手の内に入れた。選手も監督の考え方を理解した。選手は動かされているうちにその打順の役割に応じたバッティング身に付けた。それで、チームの攻撃の引き出しが増えた。選択肢が広がって、いい方向に回って行った」それが今シーズンの巨人だった、と私は言いました。

緊張感を生み出す刺激剤
「ミスター・オクトーバー=10月の男」をご存知か。
レジー・ジャクソン。金縁眼鏡をかけ、口ひげをはやしFAでヤンキースに乗りこんで10月になると決まって大暴れした豪傑バッターです。ワールドシリーズで1試合3ホーマーはいまだに語り草です。私は浪人時代に彼に会ったのですが、その時の言葉を思い出しました。
「オレはストローだった。オレがヤンキースに来た時、チームは名門意識に浸ったぬるま湯だった。そこでストローになって大いにかき回し、チームに刺激を与えて緊張感みなぎるチームに変身させた・・・」。
チームの刺激剤の自負ですね。レジーの場合は多少"劇薬"だったのですが、毎年10月の大試合での活躍にファンが贈った尊称が「ミスター・オクトーバー」でした。
話が脱線していると思ってはいけません。私は、原監督の「猫の目打線」がレジー・ジャクソン的な刺激剤になった、と観ているのです。
順調に勝っている時は波風を立ててリスクをとることはない。打線はいじるな・・・これがセオリーですけれど、巨人は本命ですから、全チーム(交流試合もあるから11チーム)から目標にされ、そのプレッシャーを引き受け、勝ち抜かなければなりません。チーム内にたとえ小さくとも油断や余裕の気配が生まれると、たちまち広がってぬるま湯状態になってしまいます。それでは勝利は危うくなる。セオリーに寄りかかって惰性になりがちの打線をあえて「猫の目」にすることで、ベンチ内は大いにかき回されました。
ベテランも中堅もそして若手もこの渦の中で、うかうかしていられなくなり、誰にでもチャンスが巡ってくる状況になりました。シーズンを通して持続したチーム内の緊張感は、これで生まれたはずです。

円熟期を迎えた原監督
最後にひとこと感想をつけくわえると、原監督の監督キャリアを思わないわけにはいきません。第一期2年、そして第二期が今季8年目で計10年。この積み重ねた経験で、大リーグの名監督の言った「チーム掌握のカギは、鳥を手の中で持つのと同じ。持つ力が緩すぎると鳥は飛んで逃げてしまい、強すぎれば死んでしまう」との微妙な秘訣を会得した、と思うのです。監督として円熟期を迎えた、と。
昨季の"日本一"で気持ちが緩みかねない今季は、チームをちょっと強く握った、それが「猫の目打線」だったと思います。原監督の趣味でやったわけではありませんよ。
クライマックス・シリーズ、日本シリーズに向けて巨人は抜かりなしでしょう。
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