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第60回
よみがえったキューバにまつわる私の記憶
キューバとアメリカが7月に国交を回復しました。54年ぶりだといいます。そのニュースを伝えるテレビに首都ハバナの街が映りました。
「変わっていないなあ」と私は思いました。走っているのは、横幅が広く、平べったい感じのアメリカの大型車です。アメリカと国交を断絶、経済封鎖されたのが1961年ということですから、それ以後は輸入ができず新車はないのです。
1981年、私はキューバ・スポーツ省の招待でハバナに出かけました。「年季の入ったアメ車ばかりだ」と、国際関係の難しさを思いながら利用した車がさらに30年近い年齢を重ねクラシック・カーとなってテレビに映っていたのです。街の風景も当時の"タイムカプセル"からよみがえったようで、「変わっていないなあ」となったのです。

国内リーグと史上最高の内野陣と大リーグ
目を見張らされ続けたキューバ野球
思えば、この招待で観た野球はキューバ野球の黄金時代の入り口でした。
長い手足、体中にばねが仕込まれたような動き...選手の身体能力の高さに目を見張らされました。
フェデル・カストロ首相(と当時は言っていたように記憶しますが、正確には国家評議会議長)が大学時代は投手で鳴らし、そのカーブに大リーグの数球団のスカウトが目をつけていた、という話を聞かされました。しかし、カストロ議長は野球より法律の勉強を選び弁護士になり、さらに革命家となった。もし大リーグ球団のどこかがカストロ投手と契約していたらキューバ革命は起こらなかった...という"歴史のもし"伝説もありました。野球好きのカストロ議長は革命後すぐに「セリエ・ナシオナル・ベイスボル」(スペイン語です)という国内リーグを創ります。私の訪問はリーグ誕生後3、4年で、観客の熱狂も大変でした。
それから10年ほどたって、私はバルセロナ・オリンピックで金メダルを獲得したキューバ野球の圧倒的な強さに目を見張りました。一塁・キンデラン、二塁・パチェーコ、三塁・リナレス、遊撃・メサの内野陣はキューバ野球史上最高のメンバーで、実力は大リーグのトップクラス・チームに並んでいたと思います。鎖国状態になったキューバは、野球の国際試合にリーグからメンバーを選んだ代表チームを送り込み、勝ち続けて国の誇りを維持していたのでしょう。
国技ですから今でも選手の人材は豊かです。
今季、大リーグでプレーしているキューバ選手は開幕ロースターで30人。いずれも亡命選手ですけれど、国交が回復したこれからは、大リーグはキューバ選手獲得のための"インターナショナル・ドラフト"を検討しているそうです。豊かな球団が数十億円もの大金で亡命選手を買っている現状から、すべての球団がキューバ選手獲得の機会を均等に持てるようにしよう、というのです。実施は2017年からといいます。

ヘミングウェイの別荘と
大カジキ、ジョー・ディマジオ
キューバの思い出といえばもう一つ、ヘミングウェイの別荘を訪れたことも忘れられません。ノーベル文学賞の文豪はその生涯の後半22年をキューバで過ごし、別荘で『老人と海』をはじめとする多くの作品を書いたのです。別荘はヘミングウェイの死後、未亡人からキューバに寄贈されヘミングウェイ博物館として大切に保存されていました。
ヘミングウェイがキューバを気に入ったのは大カジキ釣りが好きだったから、と言います。『老人と海』の主人公の老人のモデルは日系の老漁師というのも、このとき教えられた話です。かかった大カジキに小舟を引っ張られ外洋に出た老人は、ヤンキースのジョー・ディマジオの故障を押してプレーする姿を思い起こし、自分を奮い立たせるのです。仕留めた大カジキを食べにくるサメの群れと何日間も戦う筋立てが野球人ディマジオをお手本にしてきた私にはたまりません。
別荘はヘミングウェイが住んでいたときそのままです。机の上には本やノート、メガネが置かれ今にも大作家が出てきそうでした。そうそう、未亡人はノーベル賞の金メダルもキューバの教会に寄贈し、礼拝者にみられるよう展示されているそうです。
海外ニュースのハバナの場面は、私にこんなキューバにまつわる記憶をよみがえらせてくれました。
キューバの産業といえば砂糖とタバコですが、今後の経済立て直しの成長産業は美しい海と自然、ユネスコ文化遺産に指定されたハバナ旧市街などを生かした観光業とニュースは伝えていました。野球やキューバ音楽もありますね。
キューバの球場に日本球団の関係者がスカウトに出かける日も遠くないようです。
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