歴代のセコムオリジナル長嶋茂雄さんの看板(ビッグボード)と、それにまつわる豆知識のご紹介や、1957年に通算8本塁打で東京六大学リーグ本塁打の新記録を達成してから現在にいたるまでの、長嶋茂雄さんの伝説「NAGASHIMA Living Legend」と、数々の名言を世の中に送りだしてきた長嶋茂雄さんの名言「伝説の長嶋茂雄“語録”」をご紹介します。
第52回
巨人のV9から感じた、「マニュアル」を読むと実践するの違い
新しい年を迎えました。穏やかな年になって欲しいものです。
クリスマス前の天皇誕生日の日、テレビのニュースで、天皇陛下が「自然災害が多く、穏やかな年とは言えませんでした」とおっしゃっていました。
昨年は豪雨、土砂災害、火山の噴火などで、そのたびに「災害対応マニュアルが十分生かせなかった」と反省が繰り返された感じです。マニュアルを読み頭で分かっていても、本番で身体が動かない、野球でもよくあることです。
昨年末、ある総合雑誌が「戦後70周年記念」で歴史に残る出来事との証言の一つとして、私に「巨人のV9について語ってくれませんか」と言ってきました。話してしばらくするとNHK・BSで『巨人V9』のドキュメントの放映です。1965年(昭和40年)から73年(昭和48年)までの9年間、巨人は日本シリーズを勝ち続けました。まさに空前絶後の出来事でした。
NHKドキュメントで焦点が当てられたのは、川上(哲治)監督と1冊の本、『ドジャースの戦法』でした。川上さんが巨人の監督になった1961年、巨人はベロビーチ・キャンプです。ドジャースのキャンプ地ベロビーチ、そこで『ドジャースの戦法』を"発見"し、この勝利の秘伝の虎の巻を他球団に先駆けて読んだおかげでV9達成...分かりやすい。しかし、それでは誤解です。『ドジャースの戦法』は私の大学時代に野球雑誌に翻訳され連載されていました。調べてもらうと、本が出版されたのが、私の巨人入団の前年、1957年(昭和32年)。430円で誰もが簡単に読むことが出来たのです。
NHKドキュメントで焦点が当てられたのは、川上(哲治)監督と1冊の本、『ドジャースの戦法』でした。川上さんが巨人の監督になった1961年、巨人はベロビーチ・キャンプです。ドジャースのキャンプ地ベロビーチ、そこで『ドジャースの戦法』を"発見"し、この勝利の秘伝の虎の巻を他球団に先駆けて読んだおかげでV9達成...分かりやすい。しかし、それでは誤解です。『ドジャースの戦法』は私の大学時代に野球雑誌に翻訳され連載されていました。調べてもらうと、本が出版されたのが、私の巨人入団の前年、1957年(昭和32年)。430円で誰もが簡単に読むことが出来たのです。
読み込んだことで生み出された巨人野球と他チームの野球の違い
ここからがこの雑談の本題です。
書いてあることは、リトル・リーグから大リーグにまで通じる野球の基本です。基本を書いた教科書ですから、少しでもプレー経験があれば読後の感想は、「知っていることだ」となります。私もそうでした。だが、「読んだ」と「読み込んだ」では、まったく違います。川上さんは「読み込んだ」。基本の奥に潜む意味を考え抜いた。ベロビーチでドジャース選手たちの反復練習を見て、書かれている基礎が選手に徹底されていることを知りました。それを実行させた物静かなウォルター・オルストン監督(監督在籍23年)の強いリーダーシップに印象付けられた。読んで「分かった」で終わらせず、実践したことが巨人野球を他チームの野球と違うものにしたのです。
たとえば、今では高校野球でもやる走者一塁の場面のバント・シフト。投手の投球と同時に一塁手と三塁手が打者に向かって猛ダッシュする。遊撃手は二塁に、二塁手は一塁にはしる。ライト、センターの外野手も二塁寄りに動く。バント打球を捕った野手に捕手が送球を指示する。送りバントの守りに8人の選手が関わるのです。「完璧の守り」と読んで分かりますが、さてプレーは?シフトを敷くチームでも外野手が動くまではやりませんね。
書いてあることは、リトル・リーグから大リーグにまで通じる野球の基本です。基本を書いた教科書ですから、少しでもプレー経験があれば読後の感想は、「知っていることだ」となります。私もそうでした。だが、「読んだ」と「読み込んだ」では、まったく違います。川上さんは「読み込んだ」。基本の奥に潜む意味を考え抜いた。ベロビーチでドジャース選手たちの反復練習を見て、書かれている基礎が選手に徹底されていることを知りました。それを実行させた物静かなウォルター・オルストン監督(監督在籍23年)の強いリーダーシップに印象付けられた。読んで「分かった」で終わらせず、実践したことが巨人野球を他チームの野球と違うものにしたのです。
たとえば、今では高校野球でもやる走者一塁の場面のバント・シフト。投手の投球と同時に一塁手と三塁手が打者に向かって猛ダッシュする。遊撃手は二塁に、二塁手は一塁にはしる。ライト、センターの外野手も二塁寄りに動く。バント打球を捕った野手に捕手が送球を指示する。送りバントの守りに8人の選手が関わるのです。「完璧の守り」と読んで分かりますが、さてプレーは?シフトを敷くチームでも外野手が動くまではやりませんね。
お不動様が王さんを動かしたことで変わった日本野球の一塁守備
川上さんは「不動の4番打者」でしたが、一塁手守備でも動かず記者たちは「不動の一塁手」と言っていました。そのお不動様が王さんをものすごく動かした。王さんの動きは日本野球の一塁守備を変えました。川上さんの目指す守備は、ボールを扱う者だけでなく全員でやるチームプレーですから、野手全員の動くタイミングが合わなければダメです。守備の位置取りにも神経を使います。「ミスター、動きが速すぎます」、「守る位置がちょっと違うようです」。私は、理屈屋の捕手・森さんや二塁・土井さんによくやられました。
私は守りが好きでした。皆と理想の形をグランドに実現させるのが楽しかったですね
ONがいて、(敬称なしで)金田、堀内ら投手陣、内野に土井、黒江、外野が高田、柴田。そして捕手・森。これだけに才能が集まったのは奇跡のようですが、それだけではV9は無理です。個性派が一つになり、「1点をやらない」ドジャースの守り中心の野球を巨人流に磨き上げ、「石橋を叩いても、なお渡らない川上野球」の勝利を積み上げがV9でした。
『ドジャースの戦法』は言わば「マニュアル」です。この本を読んだ他チームの監督、コーチも多かったはずですが、「読んで分かった」と「読み込み、練習で鍛え、実行に移した」との違いをつくづく思いました。
今年はあらゆるところで「マニュアルを生かす」年になって欲しいものです。
私は守りが好きでした。皆と理想の形をグランドに実現させるのが楽しかったですね
ONがいて、(敬称なしで)金田、堀内ら投手陣、内野に土井、黒江、外野が高田、柴田。そして捕手・森。これだけに才能が集まったのは奇跡のようですが、それだけではV9は無理です。個性派が一つになり、「1点をやらない」ドジャースの守り中心の野球を巨人流に磨き上げ、「石橋を叩いても、なお渡らない川上野球」の勝利を積み上げがV9でした。
『ドジャースの戦法』は言わば「マニュアル」です。この本を読んだ他チームの監督、コーチも多かったはずですが、「読んで分かった」と「読み込み、練習で鍛え、実行に移した」との違いをつくづく思いました。
今年はあらゆるところで「マニュアルを生かす」年になって欲しいものです。
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