大人の知らない最新ケータイ事情<その1>~健全コミュニティサイトに広がる闇~

セコムの舟生です。

大人の知らない最新ケータイ事情みなさんのご家庭では、お子さんに携帯電話を持たせていますか?

...今から3年前、同じ問いかけから始まる記事を書きました。ケータイ有害サイトの脅威についての話でしたが、いまでもアクセス数が多く、子供の携帯電話利用への関心の高さが伺えます。

子供の携帯電話の利用がどんどん広がる一方で、ケータイサイトを通じて犯罪に巻き込まれる事件が後を絶ちません。ものすごいスピードで進化し続ける子供のケータイ事情を多くの大人が把握し切れていないというのが現状なのではないでしょうか。

子供たちは、いまケータイでどんな遊びをしているのか。

今回は、3年前にインタビューさせていただいた下田博次氏に、子供の携帯電話・インターネット利用問題について再度、インタビュー。実情を伺いました。

下田氏は、群馬大学社会情報学部 大学院の教授を退官後、引き続き子供のケータイ利用問題解決のための講演や執筆活動に力を注いでいらっしゃいます。現在はNPO青少年メディア研究協会の理事長であり、この問題に関する情報提供を目的としたポータルサイト・ねちずん村の村長さんでもあります。

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▼ 終わりなき「学校裏サイト」「プロフ」問題 舟生:前回お話を伺ったときには、「学校裏サイト」や「プロフ遊び」といったケータイサイトが非常に大きな問題になっていました。あれから3年経ちましたが、その流行は今も続いているのでしょうか?

下田氏:かつて問題視されていたような、特定の学校の話題のみを扱う貸し掲示板、いわゆる「学校裏サイト」は、最近ではほとんど見られなくなりました。ですが、「別の場所で、学校裏サイトとまったく同じことが行われるようになった」というのが、この3年間の変化だと思います。

舟生:「学校裏サイト」という名前のものはなくなったけれども、現状は変わっていないということですか?

下田氏:そうです。「学校裏サイト」は、実はSNS(※1)やソーシャルゲーム(※2)などのコミュニティサイトで、サークルやコミュニティとして存在し続けています。いわゆる「非出会い系」と呼ばれる交流目的のサイトに、学校やクラスのサークルを作って、「学校裏サイト」と同じようなことをしているんです。

それにコミュニティサイトでは、入会登録をすると、プロフィールや日記などが書き込めるようになります。それを元にサークルに参加したり他の人と交流したりするわけです。形は変わったけれど、「学校裏サイト」や「プロフ遊び」の流行は、継続しているということです。


▼ 密室でなにが行われているのか?さらに暴走するケータイサイト
舟生:先日、私もこのブログで、「非出会い系」サイトの問題を取り上げました。警察庁の発表では「出会い系サイトを通じた犯罪被害は減少した」ということですが、「非出会い系」での犯罪被害はむしろ増加していますよね。

下田氏:以前より、子供たちにとってサイトの使い勝手がよくなったといえるかもしれません。ほとんどのコミュニティサイトには、保護者や教師から見られないための"カギ"があるんです

例として、某大手ゲームサイトのサークルを見てみましょう。学校というカテゴリーだけで5万件以上登録されています。その多くが「○○中学限定」「○○中○年○組限定」といったもの。これらのサークルは承認制になっていて、該当する生徒しか参加できません。

たとえば、私がある学校限定のサークルに参加希望の申請を出すと、このサークルの管理者である子供は、私のプロフを見に来ます。私がこの学校の生徒ではないとわかると、参加を拒否することができる。これが実質的な"カギ"の役割を果たしています。親や教師の目を嫌がる子供たちが喜ぶサービスを、運営会社側が考え出したということです。

学校サークルの中では、嫌いな先生や友達を誹謗中傷していたり、わいせつな情報が発信されていたりすることも珍しくなく、ほとんど「学校裏サイト」そのものです。それどころか、以前よりも大人から見えにくい形になったぶん、問題の根も深い

舟生:実際の学校生活でトラブルの元になる"ネットいじめ"が、より密室化した状態で繰り返されているということですね。

下田氏:一応、運営会社側が監視していて、問題のある投稿は削除されることになっていますが、われわれから見れば明らかに問題のある書き込みでも、運営会社側では問題にしていません。

それに、ほとんどのコミュニティサイトには、個人同士でダイレクトにメッセージ交換ができる「ミニメール」という機能がついています。これが「出会い系サイト」の役割を果たしている。個人のメールアドレスが書かれたミニメールは送れないことになっているサイトが多いですが、表記の方法をちょっと工夫すれば、監視の目をくぐって送ることができてしまいます。

実際にコミュニティサイトから犯罪被害にあった人の中で、このミニメール機能を利用した人が全体の6割います。その中でさらにミニメールから個人の直接のメールアドレスに切り替えた人が9割です。この実態を見れば、運営会社の監視が機能していないことがわかるでしょう。


▼ まるで"人物カタログ"?健全コミュニティサイトの闇
舟生:どうしてこのようなことが、公然と行われているのでしょうか?

下田氏:昔の「学校裏サイト」は、悪徳業者が運用している掲示板がほとんどで、「悪い」ということがわかりやすかった。これは、現在適用されている「ブラックリスト方式」のフィルタリングでも閲覧をブロックすることができましたし、警察も摘発しやすいので、徐々に姿を消していきました。

しかし、いま子供の遊び場として使われているコミュニティサイトは、いわゆる"優良企業"が運営している形をとっています。ですから、「ブラックリスト方式」では、閲覧制限の対象になりません。有名なコミュニティサイトは、「健全サイト」という扱いになっているので、子供が自由に利用できてしまうのです

舟生:コミュニティサイトに対して、「無料でゲームが楽しめる」「友達がたくさんできる」といった程度の認識しかない人も多いかもしれませんね。

下田氏:だから保護者の方に「お宅のお子さん、プロフを作っていますか」と聞くと、「やっていませんよ、そんなこと」と言う人が多いです。ところが、「ケータイの無料ゲームサイトを使っていますか?」と聞くと、「使っていますよ」と当然のように言う。

こうしたサイトでは、入会登録をすると、本人が望まなくてもプロフができてしまいます。アルバムと称して個人の写真を自由に公開することもできる。悪い大人から見れば、これは選び放題のカタログなんですよ。その証拠に、出会い系の犯罪につながるような書き込みやメールが頻繁に飛び交っています。この事実を知らずに、子供に携帯電話を使わせていることが、一番の問題です。

まずは、子供たちが携帯電話を使って何をしているのか、正しく理解しなくてはいけません。

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3年前にお話を伺ったときよりも、子供を取り巻くケータイ事情が明らかに悪化していることに、愕然としました。いったいどうしたらいいのでしょうか...。

話をお聞きするうちに不安でいっぱいになってしまいまいたが、下田氏は「この現状を打開する方法は、ある」とおっしゃいます。

次回は引き続き、携帯電話・インターネットを通じた犯罪から子供たちを守る方法、私たち大人がいまやるべきことを、伺いたいと思います。

インターネット時代に子育てをしている親であれば必ず知っておきたい、大切な話です。ぜひ次回もご覧ください!


<注釈>
※1...ソーシャル・ネットワーキング・サービスのこと。参加するユーザーが互いに自分の趣味、好み、友人、社会生活などのことを公開しあったりしながら、幅広いコミュニケーションを取り合うことを目的としたコミュニティ型のWebサイトを指す。主な機能としては、自分のプロフィールやアバターなどを公開して自己紹介するためのマイページ機能、交流のある友人・知人を登録しておけるアドレス帳の機能、マイページを訪問したユーザーの履歴を参照できる「あしあと」機能、ブログのように簡単にエントリーを更新できる日記帳の機能、同じ趣味や感性を持った人同士がコミュニティを作れる掲示板の機能、などがある。

⇒大人の知らない最新ケータイ事情<その2>~子供をネット犯罪から守るために~

※2...SNS上で提供されているゲームの総称。ソーシャルゲームには、SNSを通じてコミュニケーションを取っているユーザー同士が共にゲームを楽しめる、あるいはゲームを通じてコミュニケーションが取れるという特色がある。





2011年1月20日(木)

カテゴリー: インタビュー・座談会

プロフィール

舟生 岳夫

セコム株式会社
IS研究所 所属

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