大人の知らない最新ケータイ事情<その2>~子供をネット犯罪から守るために~

セコムの舟生です。

大人の知らない最新ケータイ事情前回に引き続き、NPO青少年メディア研究協会の理事長 下田博次氏へのインタビューをお届けしたいと思います。

前回は、「学校裏サイト」や「出会い系サイト」に代わって、健全とされるコミュニティサイトで新たな問題が発生している現状を伺ったところまでご紹介しました。

携帯電話・インターネットを通じた犯罪が、想像を超えた範囲で起きていること。また、それが大人の見えない形で行われていることに、皆さんも改めて驚かれたのではないかと思います。

私も、だれもが当たり前のように使っているケータイサイトが、あまりにも簡単に悪用できる事実に、衝撃を受けました。子供たちは危うい綱渡りを楽しむように、コミュニティサイトでの交流に夢中になっています。

今回は、子供をケータイサイトの脅威から守るためにできること、「ペアレンタルコントロール」について、ご紹介したいと思います。

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▼ アメリカに学ぶ「ペアレンタルコントロール」とは? 舟生:非出会い系サイト」を発端とする犯罪被害が増加していることは、メディアでも取り上げられていますが、行政の対策は十分でないように見えます。民間企業も含め、実際に何か行われている対策はあるのでしょうか?

下田氏:フィルタリングサービス」などいくつか対策はありますが、絶対的な効力はほとんどないといってもいいと思います。本来ならこうした問題を予測して、インターネット機能を持つ商品を売り出すときには、有効なフィルタリング機能を一緒に提供しなければならなかった。でも実際にフィルタリングによるアクセス制限が行われ始めたのはここ3年ほどで、しかも現行の方式では、コミュニティサイトのような定義があいまいなサイトは制御しきれません。

現在の取り組みだけでは、情報を発信する側にいくら規制をかけても抜け穴だらけ。受け手の側で自己防衛しなくてはなりません。唯一ともいえる防衛手段が「ペアレンタルコントロール」です。

舟生:耳慣れない言葉ですが、それはどういう意味なのでしょうか?

下田氏:簡単に言えば、「親や教師による、子供のネット利用の管理・監督責任」ですね。携帯電話やインターネットを子供に好き勝手に利用させるのではなく、子供が危険に遭遇することのないように、親や教師が責任を持って利用の仕方や範囲をコントロールし、きちんと自分でリスクを管理して使いこなせるようになるまで管理・監督をする。これが「ペアレンタルコントロール」です。

この考え方は、アメリカから伝わってきたものです。欧米では、子供のインターネット利用について親が管理・監督をすること、「ペアレンタルコントロール」は、もはや当たり前のこととなっています。その背景には急速なインターネットの発達・普及があります。この新しいメディアの時代に、子供にどのような指導をすべきかが問われているのです。

アメリカでは、「ネットマム」と呼ばれるインターネットを理解した親たちが、ネットパトロールや啓発活動などを行っています。インターネット時代の子育ての義務として、親たちが勉強し、学びあい、それを広げていく活動が、80年代から盛んに行われているんです。


▼ 携帯電話の特性を正しく理解する。ネットマムからの警鐘
舟生:子供に携帯電話を持たせることについて、漠然とした不安を持っている親御さんは多いのですが、「具体的にどうしたらいいのか」「何に気をつけたらいいのかがわからない」という声が、良く聞かれます。

下田氏:それが一番の問題点ですね。残念ながら、管理・監督をすべき立場の親や教師の知識が、子供に追いついていません。

たとえば、携帯電話でのネット利用では、保護者が知らないところで有害な情報やモノ、人物につながる危険性があります。先ほどご紹介したネットマムたちは、これを「インターネットのダイレクトリンク」「バイパス効果」と呼んで警鐘を鳴らしていますが、これは子供のネット利用における重大な注意点です。しかし、日本の親・教師たちは、これがいかに危険なことかをよく理解していません。

携帯電話を単なる電話と考えていては、「ペアレンタルコントロール」はできません。携帯電話は、親の目を通さずに利用できる高性能なモバイルインターネット端末です。このことを正しく理解することが、解決への第一歩です


▼ きちんと管理・監督できない親は子供にケータイを持たせるべきではない
舟生:携帯電話だけではなく、インターネット機能のあるゲーム機などにも同じことが言えますね。では具体的に「ペアレンタルコントロール」は、どういったことをすればいいのでしょうか。

下田氏:原則は「注意」→「見守り」→「指導」の3段階の繰り返しです。買い与える前の話し合いから始まって、利用する上での約束事やルール作り、約束を守っているか間違った使い方をしていないかの管理・監督などが、これにあたります。

「ペアレンタルコントロール」を行うためには、親自身が子供の問いかけや要求にきちんと答えを出せなくてはいけません。子供にダメというならば、それはどうししてなのか答えられますか?子供の成長に合わせた段階的な使い方を提案できますか?親に「ペアレンタルコントロール」の能力がないのであれば、子供に携帯電話を買い与えるべきではないと思います

舟生:ずいぶん厳しいようですが、それくらい事態が深刻だということですよね。日本ではまだまだ親や教師が勉強できる場が少ないと思うのですが、どうやって「ペアレンタルコントロール」を学べばいいのでしょう。

下田氏:私たち青少年メディア研究協会では、「市民インストラクター養成講座」を行っていますが、以前に比べるとずいぶん問い合わせが増えてきました。

最近では、自治体単位で取り組むところも増えてきて、今では13の県がペアレンタルコントロール教育に取り組んでいます。「市民インストラクター養成講座」で学んだ親や教師たちが、今度はインストラクターとして自分の地域や学校でほかの保護者たちに学んだことを伝えていく。少しずつではありますが、こうした活動が広がってきていることに期待しています。

「ペアレンタルコントロール」は、今できる中での最善策であり、スタートでもあります。社会教育プログラムや生涯学習として、国を挙げて取り組むべきだと思っています。日本はモバイルインターネットの先進国なのですから、ペアレンタルコントロールの原理を学んだ保護者・教師を増やすことが、日本の急務です。そのためにこれからも全力で取り組みます。

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この取材からの帰り道、偶然、小学生の子供たちが携帯電話を使ってソーシャルゲームに興じる姿を見かけました。これは決して珍しい光景ではありません。ごく当たり前のことのようですが、それこそがまさに問題なのだと、認識を新たにしました。

まずは私たち大人が正しい知識を得なくては、この状況に歯止めをかけることはできません。なんだかお尻に火がついたような気分です。私自身、もっと勉強が必要だと痛感しました。

後日、「ペアレンタルコントロール」について、もう少し具体的にわかりやすくまとめてみたいと思います。その際は、ぜひまたご覧いただき、一緒に勉強していきましょう。


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⇒ 大人の知らない最新ケータイ事情<その1>~健全コミュニティサイトに広がる闇~





2011年1月27日(木)

カテゴリー: インタビュー・座談会

プロフィール

舟生 岳夫

セコム株式会社
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