経済産業省の子供の安全への取り組み(その1)

セコムの舟生です。

経済産業省の子供の安全への取り組み悲しいことに、子供の事故があとを絶ちません。そうしたなか、経済産業省が「子供の安全」対策に動き出しています。なぜ、経済産業省が「子供の安全」なのか? 今回は、経済産業省 製造産業局デザイン・人間生活システム政策室 室長補佐 諸永裕一さんにお話を伺ってきました。前編と後編の2回に分けて、そのときの模様をお届けしたいと思います。

前編の今回は、子供の事故はなぜ起こるのか? というテーマで話していただきました。

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舟生:はじめにまず、どうして経済産業省で「子供の安全」に関して取り組むことになったのでしょうか?

諸永さん:まずお伝えしておきたい点として、ある道具の使い方に関して子供は、大人の考えとは異なった使い方をすることがあります。しかしこれは"誤使用"でしょうか?私たちは子供の使用においては、"誤使用"という概念はないんだと思います

舟生:"誤使用はない"とはどういうことですか?

諸永さん:ひとつ例をあげるならば、赤ちゃんが誤ってなにかを口に入れてノドを詰まらせることは"誤飲"とされます。しかし本当にそれは"誤飲"なのでしょうか?赤ちゃんがモノを口の中に入れたがるという行為はごく自然のことですし、本来であればその製品を口に入れても問題が起こらない製品にすべきなのではないか、という観点にたってものづくりを見直す必要があるのではないでしょうか。私たち「経済産業省 デザイン・人間生活システム政策室」では、子供の事故について考えるとき、事故の起こった原因や問題を子どもの行動分析やものづくりの立場から考えています

舟生:製品そのものから見直していくきっかけをつくろうと。

諸永さん:おっしゃる通りです。なぜ事故が起きたのかを調査・検証し、同じ事故を防ぐことが大切です。指を挟んでしまったのなら、指を挟まないようなデザインを考案しなければなりませんし、遊具から転落したのであれば、そもそも転落を防止する手立てを考えなければなりません。子供たちの"大人で言うところの誤使用"を完全に防ぐことは、とても難しいことです。しかし、起きてしまった事故から学び、改善していくことを怠ってはいけないと思います。

舟生:具体的にはどのような調査を行っているのですか?

経済産業省の子供の安全への取り組み諸永さん:以前、滑り台に設置したらせん状の階段から小さなお子さんが転落するという事故がありました。その事故を調査したところ、子どもの年齢によって、らせん階段の登り方に違いがあることがわかりました。足も長くて脚力もある5~6歳児では、らせん状の階段の外側を足場にした方が効率よく登れるのに対し、足も短く体格の劣る3~4歳児では、自然とらせん状の階段の内側を通ることで、早く上に登ろうとしていたのです。

舟生:らせん階段の内側は、当然、階段の幅がせまいので踏みはずす危険が高まりますね。

諸永さん:我々大人にはそのことが容易に想像できるわけですが、子供たちはそのような発想をしないのです。無邪気に遊ぶ子供たちに、いくら「らせん階段は、外側をのぼりましょう」と教えても、守ってはくれないでしょう。

舟生:うちの子を見ててもそう思います(笑)

諸永さん:そこで考案されたのが、子供たちの動線をコントロールするデザインです。らせん階段の一段目を登る際、小さな子供でも自然と階段の外側に足をのせるよう、階段の外側からアプローチさせるようにしたり、らせん階段の中心に近づけないように手すりを設けたりしました。それまでは、どの向きからでもらせん階段に入ることができましたが、考案後は、体格の大きな子も、小さな子も、らせん状の外側から階段に入る仕組みに改善しました。

経済産業省の子供の安全への取り組み舟生:子供は、楽しいことを目の前にしたとき、「危ないかもしれないぞ」とは、なかなか考えません。このらせん階段のように、ちょっとしたアイデアで防げる事故がたくさんある気がしますね。

諸永さん:同じようなケースは他にもあります。たとえば、子供がエスカレーターの手すりに寄りかかり、外に身を乗り出すことによって天井とエスカレーターの隙間に頭を挟まれる事故や、回転ドアに子供が挟まれる事故もそうです。子供にとってみれば回転ドアやエスカレーターは、自動的に動く楽しい乗り物であり、「動く手すりに乗っかってみたい」「回転ドアの中に、早く入ってみたい」という行動は、子供の行動原理から考えれば起こりうることなのです。
このような事故が起こると、「子供から目を離した親の責任」も指摘され、事故予防のために「保護者の方は、子供から目を離さないで」ということになりますが、それでは、事故防止の根本的な解決にならず、結局、悲しい事故が繰り返し起こってしまいます。

舟生:子供の危機回避能力を育てることも重要ですが、特に子供が小さいほど、危険を察知する能力が身につくまでには訓練と経験が必要になります。子供の安全を考える企業の立場として、製品に"子供の視点"を盛り込むことの重要さを改めて認識させられる事例でした。

諸永さん:「事故は予想外」「親は子供から目を離さない」。そういった意見は、確かに間違いではないかもしれません。しかし、そもそも事故を起こすきっかけとなった、エスカレーターや回転ドア、遊具で防ぎうる設計ができないか、事故の発生数や発生率などの情報収集と、子供の行動特性などを調査し、科学的に検証する必要があります。私たちは、より事故が起きないもしくは起きても被害が小さくなるようなデザインを検討・実現することで、少しでも子供の安全につながればと考えています。

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今回は、ここまで。後編は、子供に安全なデザインを広めるための取り組みとして"キッズデザイン賞"についてレポートしたいと思います。




2006年8月22日(火)

カテゴリー: インタビュー・座談会

プロフィール

舟生 岳夫

セコム株式会社
IS研究所 所属

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