地球温暖化防止
「セコムグループ カーボンゼロ2045」の策定
地球温暖化防止に関わる温室効果ガス削減目標
セコムは2021年、従来の温室効果ガス削減目標を大幅に見直し、新たな中長期目標「セコムグループ カーボンゼロ2045」を策定・公表しました。
世界196の国と地域が合意した「パリ協定」が2016年に発効し、世界共通の長期目標として、平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに1.5℃に抑える努力をすること、そのために人為的な温室効果ガス排出量を21世紀後半までに実質ゼロにすることなどが盛り込まれました。
日本政府が2016年に閣議決定した「地球温暖化対策計画」を踏まえ、セコムグループでも2050年までに温室効果ガス排出の80%削減を目指す長期目標を定めていましたが、従来の目標を5年間前倒しし、さらに「カーボンゼロ」に向けた取り組みを加速させることとしました。
2021年5月、温室効果ガス削減目標について、2045年までに排出ゼロを目指すとともに、その通過点である2030年度までに2018年度比で45%削減する、さらにサプライチェーン全体においても2050年までに排出ゼロを目指す、新たな中長期目標を取締役会で決定しました。
こうした当社グループの温室効果ガス削減目標は、世界の気温上昇抑制に向けた妥当なものであるとして「SBTイニシアチブ※」から認められ、2021年7月に「SBT」認定を取得しています。
- SBTi(Science Based Targets initiative)・・・国際的な気候変動イニシアチブ。企業の設定する温室効果ガス削減目標がパリ協定における「世界の気温上昇を産業革命前より2℃未満に抑える」といった目標に準拠し、科学的根拠に基づいた妥当なものであるかを検証し、認定する
SBTイニシアチブに認定された温室効果ガス削減目標
<長期削減目標>
- スコープ1+2※:2045年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す
- スコープ3※:2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す
<中期削減目標>
- スコープ1+2:2030年度までに温室効果ガス排出を2018年度比で45%削減する
- スコープ3:2030年度までに温室効果ガス排出を2018年度比で40%削減する
- スコープ1・・・直接排出量(ガソリン、軽油、灯油など) スコープ2・・・間接排出量(電力、冷温水など)
- スコープ3・・・スコープ1・2以外の間接排出量(サプライチェーンの上流、下流の他社の排出)
中長期目標と実績
*温室効果ガス排出量は、マーケット基準を用いて算出。
サプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減
セコムグループでは、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出の削減に取り組むことが重要であるという認識のもと、スコープ3の温室効果ガス排出についても新たな中長期目標を設定し、2050年までに排出ゼロ、2030年度までに2018年度比40%削減を目指すことを宣言しました。
当社グループのスコープ1、2排出量が全体の14.5%であるのに対して、スコープ3排出量が85.5%を占めています。その中でもカテゴリー1(購入製品・サービス)の割合が全体の50%以上を占めるため、主要サプライヤーに向けた説明会を開いて、セコムのサステナビリティへの考え方や環境方針について各社の理解と情報共有を図るとともに、当社向け商品・サービスに関する温室効果ガス排出量などの算定を依頼し、サプライチェーン全体における地球環境保全に取り組んでいます。
地球温暖化防止活動への理解が進むにつれて、年々算定にご参加いただく会社数が増え、セコムにおいて2022年度は購入金額ベースで70%以上を占めるサプライヤーの皆様から回答をいただきました。これからも各社と協力して、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出削減に取り組んでいきます。
サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量
*温室効果ガス排出量は、マーケット基準を用いて算出。
温室効果ガス排出原単位
事業活動と温室効果ガス排出量の効率性を示す指標として、「売上高あたりの排出量(排出原単位)」を算出しています。
セコムグループの2022年度の連結売上高は、前期比で4.9%増加し1,101,307百万円となる一方で、温室効果ガス排出量は4.5%減少しました。売上高百万円あたりの温室効果ガス排出量は0.156トンとなり、排出原単位は前年度に比べて7.7%削減となりました。総量排出量のみならず、効率化の観点からも原単位での排出削減を実現しています。
売上高あたりの温室効果ガス排出量
*温室効果ガス排出量は、マーケット基準を用いて算出。
地球温暖化防止活動(オフィスのエコ)
温室効果ガス排出量のおよそ70%を占めるオフィスの電力使用量を削減するために、「自社施設の建物用途に応じた各種環境認証の取得や最適な省エネ機器の積極的導入(ハード面)」と「全社的な節電・省エネ活動(ソフト面)」の両面から環境保全活動に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの利用とRE100への加盟
セコムグループでは、温室効果ガス排出削減のために再生可能エネルギー由来のグリーン電力の調達などを進め、さらには創エネのために自社施設への太陽光発電設備の設置を行っています。
2022年度は、日本国内において33,373MWh、海外では6,040MWhの再エネ電力を利用し、計39,413MWhの再エネ電力を利用しました。また、自社施設においては152MWhの発電を行いました。
現在、セコム(株)の再エネ導入率は37.8%、グループ全体では13.4%まで向上しました。
なお、セコムグループは再生可能エネルギーの利用を一層加速させるため、2045年までに事業活動で使用する電力を再エネ由来に100%転換することを掲げ、国際的な環境イニシアチブである「RE100(Renewable Electricity 100%)」に加盟しています。
再エネ証明書
データセンターのソーラーパネル
RE100に宣言した再生可能エネルギー導入目標
- 2045年までに再生可能エネルギー100%を目指す
建物用途に応じた環境認証の取得
自社施設の新築時および改修時には建物用途に応じた各種環境認証の取得を進めています。
「Nearly ZEB」認証の取得
2026年5月竣工予定(建物は2025年1月竣工予定)の「セコムHDセンター御殿場」がセコムでは初となる「Nearly ZEB※」認証を取得しました。屋上及び東側敷地にはソーラーパネルが設置されるほか、災害時など有事にも活用できるヘリポートを新設予定です。「セコムHDセンター」は全国に3カ所あり、一年を通して各種研修が行われています。今回は建物の老朽化に加え、多様な研修プログラムへ対応していくために建て替えの運びとなりました。今後もカーボンゼロ達成に向け、自社施設の新築時および改修時には環境・エネルギー性能の向上を検討していきます。
- ZEB(Net Zero Energy Building)・・・快適な室内環境を維持しながら、建物で消費する年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物のこと。Nearly ZEBはZEBに限りなく近い建物を指し、省エネ(50%以上)+創エネで、75%以上の一次エネルギー消費量の削減を目指す指標。
「セコムHDセンター御殿場」の完成イメージ
省エネ機器の積極的導入
照明をLED化することにより電力使用量を約60%削減するとともに、従来節電のために行っていた蛍光灯の間引きの見直しを行うことで職場環境も改善しています。
また、空調機器を高効率型に切り替えることで、エネルギー効率がアップし、電力使用量を1台当たり約40%削減しています。きめ細かい温度設定変更にも対応できるため、快適な職場環境の維持が可能になりました。
さらに、コピー機、スキャナー、プリンター、ファクシミリの4つの機能を1台に集約した複合機の全社的な導入により、省スペース化を図るとともに待機時や使用時の電力使用量を1台当たり平均35%削減しています。
デスクトップパソコンに関しては、サーバー側でデータとメモリーを一括管理するシンクライアント端末に切り替えることで、情報管理を強化するとともに、サーバーと端末で使用する電力使用量を1台当たり約60%削減しています。
LED照明化されたオフィス
節電・省エネ活動
エネルギー使用量を正確に把握して“見える化”する独自のシステムを構築し、オフィスのエコ活動の基盤としています。また、社員一人ひとりが、地球市民として自ら行動することに重点をおき、さまざまな施策と啓発活動を行っています。
全国の環境推進委員会活動
全国に設置した「環境推進委員会」のもと、大規模なオフィスでは建物や設備に応じた最適なエネルギー使用を行うための「省エネ活動手引書」、中小規模のオフィスでは空調・照明などの運用を定めた「節電・省エネガイドライン」に基づき、全社で節電・省エネ活動に取り組んでいます。
「セコムグループ環境情報システム」により毎月エネルギー使用量の動向を把握し、前年同月や前月に比べて大幅な増減が発生した事業所においては、必ず原因を確認し、必要な是正措置を取っています。
夏季・冬季の「節電・省エネ」チェック
電力使用が増える夏季・冬季の前には、環境推進委員長のマネジメントのもと、全事業所で「節電・省エネガイドライン」に基づいた節電・省エネ活動が基本通り確実に行われているか、チェックシートに基づき一斉点検しています。気候が厳しくなる前に点検を行うことで、オフィスの節電・省エネと快適・効率的な執務環境の両立を図っています。
地球温暖化防止活動(クルマのエコ)
セコムグループでは、緊急対処、現金護送、技術・工事対応、営業活動などで約9,000台の四輪車両を使用しており、排出される温室効果ガス排出量は全体のおよそ30%を占めています。そのため、車両燃料に起因する温室効果ガスと大気汚染物質(NOx/PM)の削減は環境保全活動の重要課題と考え、さまざまな取り組みを行っています。
セコムグループにおける車両導入目標
当社グループでは、2030年度に向けた温室効果ガス削減目標を達成すべく、2030年度までにすべての四輪車両を「電動車※」にする、という導入目標を掲げています(電動車に代替できない特殊車両を除く)。また、カーボンゼロ達成のため、2045年までには走行時に温室効果ガスを排出しない電気自動車・燃料電池車などにすべて切替を行う予定です。
- 電動車・・・ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車を指す。大気汚染物質や地球温暖化の原因となるCO2の排出が少ない、または排出のない、環境にやさしい自動車のこと
セコムグループの電動車導入率 中長期目標
セコムの電気自動車
車両の導入目標
<長期目標>
- 2045年までにすべての車両(二輪含む)を「電気自動車・燃料電池自動車」にする
<中期目標>
- 2030年度までにすべての四輪車両を「電動車」にする
適切な車両の選定
車両を用途や走行距離、特殊装備の有無などにより20タイプに分類し、タイプごとに環境性能や走行性能から車種を絞り、最も排出ガスが少なく環境に優しい車を選定しています。燃費が良い場合でも排出ガスが多めの車は除外するなど、1台ごとに判断して最適な車両を選定しています。
経団連「チャレンジ・ゼロ」への参加
2019年に日本経済団体連合会は、“イノベーションを通じた課題解決”というコンセプトを中核に据えて、「チャレンジ・ゼロ」(CO2排出ゼロへのイノベーション)を打ち出しました。セコムグループは、近年の自然災害の激甚化と「IPCC1.5度シナリオ」の公表などを鑑みて、一段進めた地球温暖化防止対策が必要と考え、経団連「チャレンジ・ゼロ」への参加を表明し、2045年までに車両に起因する温室効果ガス排出ゼロを目指します。
電動バイクの導入拡大に向けて
カーボンゼロ達成のために、セキュリティスタッフが使用するバイクの電動化にも取り組んでいます。しかし、電動バイクのさらなる普及には「充電時間の長さ」「バッテリー充電切れへの懸念」が課題と言われており、セコムにとってもセキュリティサービスの品質に関わることから慎重に検討しています。
電動バイク利用における課題に貢献すべく、2022年12月には(株)Gachacoが実施するバッテリー交換による電動二輪の運用の実証事業に参加しました。実証事業等を通じて電動バイクの実用性・効率性を繰り返し検証し、導入拡大を進めていきます。
電動バイクとGachacoステーション
安全運転の推進活動
お客様の安全はもちろん、社員・家族・会社を守るため、さらには環境への負荷を減らすため、省エネ運転・安全運転の実践は当社にとって重要な課題の一つです。
社内のイントラネット上には車両に関するサイトがあり、安全運転の基本マニュアル、道路交通法の理解をはじめ、「低燃費車」の導入状況や事業所の燃費向上実績など、車両に関するさまざまな情報を掲示し、社員への啓発を行っています。
「エコ安全ドライブ」の徹底
省エネ運転と安全運転を兼ね備えた「エコ安全ドライブ」を実践し、お客様への迅速な対応と地球温暖化防止に努めています。
「エコ安全ドライブ」を実践するための教育・啓発活動は、マニュアル配布のほか、全国のすべての事業所でセキュリティ・ドライビング・トレーナーによる実地指導を行い、重点事業所には本社担当部門のスタッフが直接訪問し、指導しています。業務車両にはドライブレコーダーを設置しており、責任者が適宜確認・指導なども行っています。また、地域ごとに集合教育も実施しており、多くの研修受講者に、セキュリティ・ドライビング・トレーナー、管理者、本社担当部門スタッフによる指導をしています。さらに国土交通省、経済産業省、警察庁ならびに環境省が連携してエコドライブの普及促進を図る11月の「エコドライブ推進月間」に合わせ、全国の事業所を対象に「エコ安全ドライブ推進活動」を実施しています。
一人ひとりが「エコ安全ドライブ」を深く理解し、納得するまで徹底して繰り返すことにより、安全面・省エネ面で成果を上げています。
省エネ運転と安全運転を兼ね備えた「エコ安全ドライブ」の研修
海外での取り組み
セコムオーストラリア―成長と環境課題の解決を高い次元で両立
セコムオーストラリアでは地球環境保全を事業運営の最重要テーマと捉え、セコムグループの目標である「カーボンゼロ2045」を確実に達成するための取り組みを進めています。具体的には、事業活動の中での温室効果ガスの発生源を特定、それぞれの削減策を計画した上で、現在、実行フェーズに移行しています。
例えば、工事部門のセコムテクニカルサービスでは、車両の電動車への入れ替えを順次行っています。また、温室効果ガス排出量の大半を占めるオフィスの電力使用量を削減するため、オフィス面積の大幅削減と省エネ機器の導入に取り組みました。オフィス面積の削減により、光熱費が大幅に減少したことはもちろん、より利便性の高い地域に移転することで、車両燃料費削減、社員の生産性改善にも貢献しています。
これらの施策の結果、温室効果ガス排出量は年々減少しており、2018年度の402トンを2022年度には144トンまで減らすことができました。今後は、環境対策と同時に、顧客サービスの向上と業務効率化の両方を達成する取り組みを一層推進します。
セコムオーストラリアの電動車
その他の温室効果ガス排出削減の施策
中国での取り組み
大連セコムでは、遠隔での画像確認が可能なセキュリティを導入することで出動体制の効率化に努めた結果、業務車両数の削減、ひいては燃料使用量の大幅削減をすることができました。具体的には、2018年度には約60,000ℓだったガソリン使用量が2022年度には約30,000ℓと半減しました。他方、照明のLED化、節電の徹底など電気使用量の削減にも努め、温室効果ガス全体としては2018年度の259トンから2022年度には148トンと、大幅に減少しています。
また、中国政府の後押しもあり、国内各社ではガソリン車から新エネルギー車・低燃費車※への入れ替えを積極的に進めています。例えば、広東セコムでは自社保有車両41台を2027年末までに全車入れ替え完了するため、車種選定・台数の計画を策定しました。2023年度には11台の入れ替えを行う予定です。上海セコムにおいても、2022年より新エネルギー車の試用を開始し、試用した事業所においてガソリン車6台を電気自動車5台、ハイブリッド車1台に変更した結果、2023年3月までの燃費を前年比72.7%改善することができました。この取り組みを今後、他の事業所にも広げていく予定です。
- 新エネルギー車・低燃費車・・・中国政府が認定する新エネルギー車は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)、低燃費車はハイブリッド車(HV)を指す。
台湾での取り組み
台湾の中興保全科技股份有限公司は、グループ全体で再生可能エネルギーを積極的に導入しています。子会社である中保物流は、2021年から自社倉庫の屋上に太陽光発電設備を設置し、太陽光発電量が2022年には796MWhに達しました。
中保物流の自社倉庫の屋上全面に太陽光発電設備が導入された
アット東京の地球温暖化防止の取り組み
データセンターでの実質再生可能エネルギー利用
データセンターを運営するグループ会社の(株)アット東京は、サプライチェーン全体で地球温暖化防止に貢献すべく、さまざまな取り組みを進めています。
自社のデータセンターにおいて、2022年10月、お客様がご使用になる電力に、再生可能エネルギー由来の非化石証書の環境価値を適用し、実質的に再生可能エネルギーの利用が可能となる「グリーン電力オプションサービス」の提供を開始し、2023年4月からは、ハウジングサービスで使用される全電力について、実質再生可能エネルギー100%を標準として切り替えました。「グリーン電力オプションサービス」のご選択や、ハウジングサービスのご利用により、データセンターのお客様が脱炭素化の取り組みを推進することができるようになっています。
廃棄される冷却水の再利用
アット東京のデータセンターでは空調に水冷式を採用しており、サーバー室で発生した熱は、冷却水が冷却塔にて一部蒸発することで処理されます。蒸発により冷却水の含有物の濃度が高くなるため、給排水を行い、濃度を調節します。このときに本来廃棄されるはずの冷却水(ブロー水)を高度なろ過装置にて再利用することで、水の消費量の削減に取り組んでおり、約40%のブロー水の再利用に成功しています。
データセンターの冷却塔
東京都条例「トップレベル事業所」の認定を更新
2022年3月には「アット東京 中央第2センター」が、2023年3月には「アット東京 第3センター」が「地球温暖化の対策の推進の程度が特に優れた事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)」として、東京都知事が定める基準に適合すると認められました。中央第2センターは2015年度、第3センターは2017年度に認定を取得し、認定更新となりました。
アット東京のデータセンターは、お客様のご利用拡大に伴い、新たなサーバー室の増設や設備増強を行ってきました。コロナ禍においても設備の運用を止めず、省エネへの地道な取り組みをしながら増強してきたことが評価され、今回の認定に至りました。
当社のデータセンター事業は日本全国へと拡大しつつありますが、今後も「ノーダウンオペレーション」を使命として高品質のデータセンターサービスを提供しながら、省エネ対策を着実に実施していきます。
2021年度トップレベル事業所認定証