人財マネジメント
基本方針と推進体制
基本的な考え方・方針
セコムでは、「人財」を何より重視しています。それは、セコムグループのあらゆるサービスが「人」を通じて提供され、お客様からの「信頼」をもとに成り立っているからです。社会が激しく変化する中、リーディングカンパニーとして、いつの世にも広く社会から信頼され、一層の発展をしていくためには、社員一人ひとりが活き活きと働き、能力を発揮できる環境を整えることが重要と考えています。人財マネジメントにおいては、「創意」や「強靭さ」、「国際性」を備えた人財の確保と育成に取り組み、「自分達が変えていく」という強い思いを伴った企業文化を醸成することで会社と個人の持続的な成長を目指しています。
推進体制
人財マネジメントを統括する人事本部には、採用を担当する「人材採用部」、教育を担当する「研修部」、総合的な人事戦略を担う「人事部」が設置されています。人事部のもと、「D&I推進担当」がダイバーシティ&インクルージョンの具体的な施策を、「健康推進室」が社員の健康の維持・増進を図るための施策を担います。
また、全国3カ所にある研修センター「セコムHDセンター」(HDはHuman Developmentの略)が能力開発の拠点となっており、一年を通して各種研修が行われます。


人財採用の取り組み
多様な採用コースと実績
新卒採用・キャリア採用を問わず、多様な価値観やキャリアを持つ人財の確保を目指しています。積極的な採用活動を進めた結果、2023年度は770名を採用しました。
当社では採用促進のために、ライフステージや志向に応じて勤務地を選べるよう、勤務地を希望するエリアに限定できる「地域限定採用」を設けています。そのほか、女性の職域拡大として警備職や法人営業といった従来は募集していなかった職種での受け入れや、正社員の募集年齢を引き上げ、ミドル層も採用の対象としています。また、シニア層が活躍できる職種や柔軟な働き方が可能な時短制度などの整備も行ってきました。
採用実績(セコム(株))
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
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採用者数 | 992名 | 909名 | 781名 | 770名 | |
男性 | 853名 | 784名 | 685名 | 699名 | |
女性 | 139名 | 125名 | 96名 | 71名 |
採用競争力強化に向けた取り組み
給与のベースアップ
社会の安全に貢献している社員の待遇を高めるべく、2022・2023・2024年度と3年連続のベースアップを行いました。
自動車運転免許取得補助制度
2024年度に入社する高校生の採用から、自動車運転免許取得補助制度を導入しました。業務上、自動車運転免許を必須とする職種で入社した高校卒の社員を対象に、免許取得にかかる費用の補助として上限20万円を入社後に支給します。セコムへの就職を希望する若年層が安心して社会人生活を始められることを目的としています。
奨学金返還支援制度
セコムへの入社を考える求職者に対する訴求と、新入社員の定着を図ることを目的に、2024年度から奨学金返還支援制度を導入しました。奨学金返済義務を負っている入社5年目までの社員を対象に申請時点の奨学金残債額の4%を年間支援額(上限20万円)とし、5年間支給します。
本制度により奨学金の返還が必要な社員の経済的な負担を和らげることで、社員の生活の安定と働きやすさを向上させるとともに、社員の自己実現におけるさまざまな選択肢が広がり、それが会社のさらなる発展に寄与する人財の育成につながっていくものと考えています。
職業体験施設「connect base akasaka」の開設
セコムは、2024年6月に採用応募者の学生などが選考前から警備員の仕事を体験できる施設「connect base akasaka」を東京都内に開設しました。この施設では、ご契約先事務所やセコムの事業所を模したブースで、オンライン・セキュリティシステムによる警備の一連の流れを体験することができます。また、学生などの職業体験だけでなく、新卒採用・中途採用を問わず内定者とのコミュニケーションの場としても活用しています。セキュリティスタッフの仕事内容に理解を深めていただくことで入社前の不安を払拭し、多くの新しい人財の採用につなげていきます。

「connect base akasaka」での仕事体験の様子
人財育成・研修制度
セコムが、しなやかで強い企業として持続的成長を遂げていくためには、「セコムの理念」を継承し、次世代を担うプロフェッショナルな人財の育成が重要な課題です。当社では、入社時研修に始まってフォローアップ研修、部門別・職能別の研修などを行うほか、セコムセルフラーニング制度を設け、社員の成長と自己実現を促す独自の教育・研修体系を確立しています。
各種研修と実績
2023年度は5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことを踏まえ、必要な感染症対策を行いながら集合研修を実施しました。今年度は新たな取り組みとして、女性社員に対するキャリアデザイン研修、多様な方々へ向き合うためのマインドとアクションを学ぶユニバーサルマナー研修を実施し、さらなる人財の活性化を図りました。
また、オンライン研修やeラーニングの活用、自己啓発のためのセルフラーニングの拡充にも努めました。これらは移動時間や交通費などのコスト面でもメリットがあるため、引き続き活用していきます。
2024年度は、全国3カ所にある研修センター(セコムHDセンター)のうち、御殿場の施設が収容規模を拡大してリニューアルするため、同施設の活用により研修実績も増やしていく計画です。
研修実績
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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研修受講者数 | 延べ5,107名 | 延べ6,950名 | 延べ5,709名 | 延べ5,663名 |
研修時間 | 165,174時間 | 174,472時間 | 170,161時間 | 158,420時間 |
*HDセンターで実施した研修の受講者数と研修時間。対象はセコム(株)。
一人当たりの研修時間(KPI目標:2030年に50時間)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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26.6時間 | 28.4時間 | 28.1時間 |
*HDセンターで実施した研修時間のほか、HDセンター以外での集合研修、社外研修・セミナー、業務上必要な資格等に関する教育、各種eラーニングを含む。対象はセコム(株)。
研修制度

新入社員入社時研修
入社後に行われる研修では、「現状打破の精神」「正しさの追求」といった「セコムの理念」や社員としての心得・心構えに加えて、各職務に必要な知識や技能を習得し、セコムが目指す「社会システム産業」を構築する担い手としての基本を身につけます。
2023年度は881名(セキュリティ事業に携わる関連会社の教育も含めると1,306名)に対して実施しました。
次年度は社会人教育をさらに充実させ、人として成長できる機会を広げていきます。

2023年度入社式は原宿本社や各地域本部など、16会場に分かれてオンラインで開催
集合研修
配属後は、基本的な職務内容や重要事項などをOJT※1で学習する一方、OFFJT※2として集合研修を実施しています。この研修では、キャリアに役立つ最新の知識や技能を身につけるための多彩なプログラムを準備しています。
2023年度は280コース、延べ5,663名の社員に対する研修を行いました。セキュリティスタッフへの教育にあたってはVR(バーチャルリアリティ)等の先端技術も導入し、研修の充実化を図っています。
2023年度は例年に続いて、新たにセキュリティ事業所の責任者となった社員に対し、新任事業所責任者研修を行いました。参加者は管理職の役割、部下とのコミュニケーションや育成指導の方法などを学び、学びを実践につなげるため、自身のアクションプランを作成しました。
また、2023年度は営業職研修、女性階層別研修、シニア向け研修、希望制の技術研修などの新たな研修も実施しました。

セキュリティスタッフの集合研修

女性階層別研修でキャリアデザインを考える参加者
セコムセルフラーニング制度
社員の自発的な学びを積極的に支援するために、実務で役立つビジネススキルを身につけるコースや資格取得を目指すコースなど、仕事に直接関係する学びから一般教養、オンライン英会話など語学を学べるコースまで、さまざまな通信教育講座を設けています。また、スキマ時間でも学べる動画学習サービスなど、従来の通信教育の枠にとらわれない新たなコースも積極的に取り入れ、若手から管理職クラスまで、視野を広げ、幅広い知識を吸収できる環境を整えています。管理職クラス向けには、多様な人財を活かすためのダイバーシティ・マネジメントや職場のメンタルヘルスなど、近年重要性が増している新たなマネジメントスキルの講座も充実させ、受講を奨励しています。
社員はいつでも、いくつでもコースを受講でき、講座を修了すると、会社から「自己啓発助成金」が支給されます。求められる知識・スキルや自身のありたい姿を真剣に考え、自己研鑽する社員の意欲に応える制度です。
2023年度も講座の見直しを行い、仕事にプラスとなる知識やスキルのほか、IT・ビジネストレンド、一般教養など、幅広いテーマの全184コースをラインナップしました。また、受講人数は前年比155.1%となりました。今後も、社員一人ひとりの可能性を広げ、未来への希望や意欲につながる制度となるよう進化させるとともに、自律的に学ぶ組織風土の醸成を進めていきます。
通信講座実績
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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通信教育講座開設数 | 151講座 | 139講座 | 166講座 | 184講座 |
通信教育講座受講人数 | 延べ277名 | 延べ662名 | 延べ786名 | 延べ1,219名 |
*対象はセコム(株)。
海外留学制度
海外留学制度は、「将来に対して明確なビジョンを持った視野の広い人材の育成」を目的とし、海外で知識・見聞を広めて新しい考え方などを吸収するため、欧米やアジア各国の大学院(MBA等)に留学、国内外でグローバルに活躍できる人材を育成する制度です。1979年から開始し、毎年4~5名の社員を派遣しています。留学後は本人の志向等を鑑みながら配属し、国際部門や経営部門などさまざまな分野で活躍しています。
2016年からは、海外赴任国のエキスパート人材になることを目的に現地言語を集中的に習得する「特定地域人材育成プログラム」を新たに制度として設けています。海外で働きたいという意欲や将来のビジョンを重視した公募制で、今まで16名の社員を中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、トルコに派遣しました。プログラム終了後は現地グループ会社で勤務しており、女性も活躍しています。
責任者教育「責任者ナビ」
部下を持つ責任者を教育する目的で、社内イントラネット上に「責任者ナビ」を設置しています。すべての責任者が、組織の運営力・仕事の管理力・部下の指導力・部下の育成力という責任者に必要な「4つの力」と、職務を遂行する上で必要な「責任者心得」を、この「責任者ナビ」で常に確認できるようにしています。

社内イントラネット内の「責任者ナビ」
DXを加速させる人財育成の場
セコムは、まだ世に存在していない「安全・安心」を提供し続ける企業であるために「創意」「強靭さ」「国際性」を備えた人財の育成を重視しています。「創意」を発揮するためには創造的な対話を通じ、協働できる「場」が必要です。
2022年には社内外の枠組みにとらわれず、お客様やセコムグループ社員が交流する場として「HARAJUKU 3rd Place」をセコム本社ビルに開設しました。
「HARAJUKU 3rd Place」では、さまざまな部門に所属する社員が集い、データサイエンス技術など DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる知識の習得や研究、部門横断的プロジェクトを推進しています。今後も人材戦略である「創意」を備えた人財の育成を積極的に進めていきます。

DXを加速させる拠点「HARAJUKU 3rd Place」
譲渡制限付株式を活用した福利厚生制度
「セコムグループ ロードマップ 2027」で掲げる従業員エンゲージメントの一層の向上を目的に、2023年6月に譲渡制限付株式を活用した福利厚生制度を導入しました。本制度は、希望する社員へ自社の株式を付与し、毎年配当金も受け取ることができる仕組みです。社員一人ひとりの努力に適切に報いるとともに、経営参画への意識を高め、中長期的な企業価値の向上を捉えるマインドを持った人財の育成を目指しています。
人事評価制度・表彰制度
キャリア形成支援の制度
人事制度のコンセプトは「評価と育成」「透明性と公正さ」で、社員自らが申告した担当業務・成果・反省点と、職務ごとに最適化された合理的な評価項目の両面を冷静に評価し、結果をその都度、社員に開示するオープンで公正な仕組みにしています。
また、評価は資格級や賞与審査のためだけに行うのではなく、社員を育成することを目的としており、評価結果や理由、今後の取り組み目標・改善事項を本人との面談で具体的に伝えることにより、自発的な成長を支援しています。
さらに、年に1回、自分の将来の目標や希望を上司に申告し、仕事を通じた自己実現の機会を得るために行う「自己申告制度」や、随時本人がやってみたい職種を希望することができる「チャレンジサポート制度」を整えています。
自己申告制度
社員は、「自己申告制度」によって毎年1回会社に対して、今後希望する職務・時期・理由などを、「自己申告書」で意思表示することができます。この制度を活用することにより現状に満足することなく、自分の将来のあるべき姿を真剣に考え、仕事を通して自己実現する機会を得ることができます。
チャレンジサポート制度
「自己申告制度」をさらに一歩進めて、「すぐにでも現在と異なる仕事にチャレンジしたい」という社員の希望を支援するのが「チャレンジサポート制度」です。希望する事業分野や職種・職務と自分が保有するスキル・資格などを申告し、本人の意欲・能力と会社の必要性が合致した場合は、希望を受け入れており、会社に大きな活力を生み出す仕組みの一つとなっています。
社員の努力を公正に評価し、自発的な成長を支援する人事システム

表彰制度
セコムには、個人を表彰する制度として、「セコム大賞」があります。営業・業務・管理などの職種ごとに、年間を通しての取り組みや成果を総合的に判断し、表彰する制度です。
また、社会および会社に対して大きな功績があった社員については、都度表彰を行っています。表彰事案の詳細を写真やコメント付きで社内イントラネットに公開することで、個人と組織のモチベーションアップにつながっています。
組織の表彰としてはほかに、営業・業務・管理などの部門を総合的に評価し、年間を通して優秀な結果を収めた組織を表彰する制度があります。
表彰についてコンプライアンス