先端技術の研究と応用|先端技術の活用とパートナーシップ|サステナビリティ重要課題|セキュリティのセコム株式会社-信頼される安心を、社会へ。-

先端技術の研究と応用

基本方針と推進体制

基本的な考え方・方針

セコム(SECOM)の社名は「セキュリティ・コミュニケーション(Security Communication)」を略した造語で、“人と科学の協力による新しいセキュリティシステムの構築”というコンセプトを表しています。当社が開発した「オンライン・セキュリティシステム」は、センサー、機器、通信回線、コンピューターというハードと、人間の判断力・処置力という人的サービスのソフトを組み合わせたサービスシステムであることが特長です。このシステムをはじめ、セコムはこれまで「人とテクノロジーの融合」を具現化することを強みとして発展し、“人の力を最大限に発揮させるための技術”の創出に取り組んできました。

サステナビリティ、すなわち持続性を考えるときには、時間の幅を念頭に置く必要があります。その実現には、「いま現在の社会」を理解しながらも拘泥されず、離れた視点から思考することが重要となります。これこそが「研究」であり、社会や企業に価値を生むものであると考えています。

推進体制

時代のニーズをセコムのサービスへと変換する出発点として、「IS研究所」「開発センター」が連携しながらセコムの研究・開発を担っています。IS研究所では、約130名の多彩な分野の研究者が6つの部門(ディビジョン)、20のグループに分かれて、画像処理技術やAI、サイバーセキュリティなどの先端技術を研究しています。

AI活用の指針についてリスクマネジメント

画像認識・センサー・AI技術の研究

画像から自動で異常を検知する技術の活用

監視カメラの映像を人が見続けて異常を発見することは、非効率な上に見落としも発生します。そこで、セコムでは高品質で高効率なサービスを実現するために、まずコンピューターで異常を自動検知し、その結果を人が高い判断能力をもって確認する仕組みを構築しました。

監視カメラの画像から異常を検知する「画像認識技術」に取り組み、1998年にこの技術を生かしたオンライン・セキュリティシステム「セコムAX」を、2010年には強盗を監視カメラの画像から自動で検出・通報する「セコムインテリジェント非常通報システム」、2014年には歩いている人物の顔認証を可能とした「ウォークスルー顔認証システム」を開発しました。その中にはAIのコアであるパターン認識※1が重要な要素技術として使われており、ディープラーニング※2が登場するずっと以前からAI技術を導入したサービスを社会に提供してきました。

2017年12月には、東京国際空港国際線旅客ターミナルビルにおいて、国土交通省が主催する国際テロ防止を目指した先進的警備システムの実証実験に参加しました。監視カメラの映像から、画像認識により不審行動を自動で発見し、服装や体型から特徴を把握して追尾する技術や、一定時間放置された荷物等を不審物として検知する技術により、混雑した環境での警備強化・警備員負担軽減に貢献しました。

また、大規模イベントにおける広域監視へのニーズも高まっており、群衆全体の行動を解析する「群衆解析技術」の研究も進めています。この研究では、国内のマラソン大会で実証実験を行い、観衆の混雑度推定や群衆の動きの解析によって監視員の負担軽減に貢献しました。

  • パターン認識・・・画像や音声等の多くの情報から、一定の規則や意味を持つ対象を選別し、取り出す処理
  • ディープラーニング・・・膨大なデータを機械に学習させて、ルールや特徴を自動的に抽出させる手法
図:画像認識技術で似た服装でも識別して追尾

画像認識技術で似た服装でも識別して追尾

図:群衆の動きや密度を画像から自動解析する

群衆の動きや密度を画像から自動解析する

「人の知識に基づくAI」と「データ解析に基づくAI」を融合

近年のAIは、機械に大量のデータを学習させるディープラーニングにより、高い性能を実現しています。しかし、「侵入行為」や「不審行動」などを間断なく自動検知することが必要なセキュリティサービスにおいて、これらのデータを大量に集めることは現実的に不可能で、データの「量」だけに依存しない技術の確立が必要です。

また、ディープラーニングは非常に多くの学習データを使用し、それらに対する膨大な計算が複雑に絡み合って結果が出力されるため、「なぜ」そのような結果が出力されたかを理解することが困難です。セコムが目指す「安全・安心」を提供するには、結果が出力された理由を人が明確に理解でき、その理解に基づいて持続的に技術を改良できることが重要です。

このため、人間の持つ常識や長年培った警備対象に関する知識・ノウハウに着目し、独自の「人間の知識に基づくAI」の研究に取り組んでいます。さらに、現在主流となっている「データ解析に基づくAI」においても、学習データやアルゴリズム(計算方法)にさまざまな工夫を凝らすことで、透明性の高いAIの構築を目指し、さらに両者を融合させ、目的に応じてバランスを取りながら社会実装に取り組んでいます。

センシング技術の高度化

サービスの最前線に位置するセンサーは、人やモノ、空間などの状況を把握するために不可欠なものです。サービスをより良くするには、「より早く」「より確実に」「より詳細に」状況を把握できるようセンシング技術を進化させる必要があります。

そのために、個々のセンシング技術の高度化と、複数センサーの融合による高度化という2つのアプローチで研究に取り組んでいます。個々のセンシング技術として、光や電磁波、可聴音、超音波などの技術を継続的に進化させています。また複数センサーの融合において、各々の弱点を補い多様な環境で高い性能を維持する技術の確立を狙っています。

研究の応用先として、例えば家庭内での見守りが考えられます。実現にあたっては正確な状況把握はもとより、わずかな変化から将来の異常を予測する技術や、プライバシー保護などが大きな課題となります。このため、カメラを使わずに超音波やマイクロ波・ミリ波等の電磁波を用いるセンサーを使用して人やモノの詳細な動きを把握する技術の研究に取り組んでいます。

写真:音波によるセンシング(セコムSCセンターの無響室にて)

音波によるセンシング(セコムSCセンターの無響室にて)

情報通信基盤の安全性とその信頼の研究

「安全・安心」な情報通信基盤の研究

セコムは、通信回線を通じてセンサーの信号を集約し、その情報を活用するIoT(モノのインターネット)の考え方を50年以上前から具現化してきましたが、その仕組みを支える情報通信基盤の安全と信頼を確保するための研究にも取り組んできました。

インターネットの回線にはあらゆるモノがつながり、利便性が高まる一方で、サイバー空間には多種多様なリスクがある上に、日々進化するサイバー攻撃などの新たな脅威が生まれています。インターネット上の安全を確保するためには、システムやサービスの信頼性を担保する通信の秘匿性や、データの真正性を担保するセキュリティ、そして利用者のプライバシー保護が不可欠であり、セコムはセキュリティの根幹技術として暗号化や署名・認証などの技術や、サイバーセキュリティの研究に取り組んでいます。また、異なる会社や組織の機器同士が、このようなセキュリティ技術を使って相互連携するには、その技術が共通の基準に標準化されている必要があります。セコムでは世界中から研究者やエンジニアが集まるIETF(Internet Engineering Task Force)をはじめとする国際標準化にも取り組んでいます。

写真:研究員が執筆に参加したブロックチェーン関連の書籍も出版されている

研究員が執筆に参加したブロックチェーン関連の書籍も出版されている

写真:IETFで標準化の提案内容を説明するセコムの研究員

IETFで標準化の提案内容を説明するセコムの研究員

IS研究所顧問が第19回「情報セキュリティ文化賞」を受賞

2023年1月にIS研究所の顧問である松本泰が第19回「情報セキュリティ文化賞」を受賞しました。「情報セキュリティ文化賞」は、日本の情報セキュリティ分野の進展に大きく貢献した個人を表彰することを通じ、情報セキュリティの高度化に寄与することを目的として、情報セキュリティ大学院大学が制定したもので、産官学の有識者によって審査が行われます。松本は、今世紀初頭の日本初となる複数ベンダによる公開鍵暗号基盤PKIの相互運用実験Challenge PKI 2001を主導し、現在も日本のPKI技術の第一人者として政府や業界団体の審議会などに多数参加しています。

今回の受賞においては、CRYPTREC暗号技術検討会、JNSA標準化部会、セキュリティ・キャンプなど文理を横断する幅広い活動により、日本のセキュリティ向上・推進に多大な貢献をしたことが高く評価されました。

社会・サービス・ヘルスケア分野の研究

空間情報の活用で効率的な調査・分析・立案

世界中から要人が参加する国際会議や多くの選手や観客が集まるスポーツ大会などの大規模イベントでは、入念かつ高度な警備計画の立案が欠かせません。そこで、GIS(地理情報システム)とBIM(建物情報モデリング)を統合した空間情報の活用技術を研究し、2016年には「セコム3Dセキュリティプランニング」として販売開始しました。

デジタル空間に現場の環境を緻密に再現して、現場の状況把握とリスクの特定や分析をすることで、実際に現地に赴き調査をする労力を大幅に削減、さらに3Dマップやシミュレーションを活用することで、直感的に地形・建物・施設を確認できます。移動車両から撮影した全方位画像を確認できるなど、地理的環境を把握し、さまざまな計画の立案を効率的に行えます。本研究の成果は「G7広島サミット」にて、3D技術を活用した警備計画の作成に試用されました。

また、空間情報からサービスに必要な情報を効率よく取り出して活用するための手法も研究しています。空間情報は、設備、IoT機器、ロボットなど様々な機器とリンクするため、多くの関係者が協調して構築・共有します。そこで、空間情報活用のあり方を関係者と議論し、共創するため、GUTP(東大グリーンICTプロジェクト)に参画し、多くの関係者が同じ枠組みで空間情報を活用できるように、成果の一部をオープンソースソフトウェアとして公開しました。

図:上空および地上のあらゆる角度から警備対象を直感的に把握可能に

上空および地上のあらゆる角度から警備対象を直感的に把握可能に

安全・安心・快適を効率よく提供するための研究

未来の社会に必要になるサービスをセコムが創造していくために、サービスそのものの在り方、品質・効率向上のためのオペレーションや警備計画の解析・最適化技術、そして人やサービスプロセスのような物理的には定式化できない対象のシミュレーション技術を研究しています。

シミュレーション技術の研究では、人の集まる空間の警備等の運用計画を最適化し、安全で快適な空間を提供することを目指し、人の動きをモデル化して予測する研究に取り組んでいます。また、サービスオペレーションのシミュレーションにより、スタッフの人数や稼働時間、サービス提供品質などを事前に評価する方法も研究しています。

図:シアター入口での人の動きのシミュレーション

シアター入口での人の動きのシミュレーション

ヘルスケア分野の研究

超高齢社会の課題解決に向けて、医療の質向上・経営効率化のための病院内のデータ分析技術の研究や、介護予防、健康増進のための研究に取り組んでいます。

セコムは1994年に日本初の遠隔画像診断支援サービス「ホスピネット」の提供を開始しました。CTやMRIの普及が急激に進む中、画像診断を行う専門医が少なく、診断に時間がかかり治療の遅れにつながるという社会課題がありました。それに対して、セコムグループのメディカル・技術開発・情報通信の専門家が集結して、「オンライン・セキュリティシステム」で培ってきた通信技術や画像圧縮技術などの技術基盤をベースに、遠隔画像診断の研究・開発を行い実現しました。

また、2018年から、東京都杉並区の「セコム暮らしのパートナー久我山」でコミュニケーションロボットを活用した高齢者のQOL(生活の質)維持・向上を目的とする実証実験を実施しており、服薬支援や孤独感の緩和に一定の効果があることが確認されています。高齢者が安心して暮らすためには、病院での医療サービスや通常の介護サービスだけでなく、ご自宅でも健康に豊かに過ごしていただくことが重要なため、生活のリズムに合わせた服薬誘導など、利用者の生活スタイルに応じた健康サービスのための技術研究を進めています。

写真:実証実験を行っている「セコム暮らしのパートナー久我山」

実証実験を行っている「セコム暮らしのパートナー久我山」

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先端技術の研究と応用。セコムのサステナビリティについて紹介しているページです。セコムは、経済面、環境面、社会面の活動を通じて、「企業と社会が共に持続的に発展することが重要である」という考え方を根底におき、創業以来、事業を通じて社会・環境課題の解決に努めています。