女性へのAED使用をためらわないで!下着はどうすべき?


AEDを備える
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更新日:2021年5月12日
AEDを女性に使用する際、下着をはずすべき?上半身は露出させて大丈夫?など疑問を持つ方も少なくないでしょう。救命しているのに痴漢やセクハラと間違われたらどうしよう?と、救命処置に対して消極的になってしまう方もいるかもしれません。救命は時間との勝負ですので、もしものときに備えて、女性にAEDを使用する方法について詳しく見てみましょう。
異性へのAED装着に対する意識に男女差はある?
令和元年に、京都大学などの研究チームが公表した調査結果によると、学校構内で心停止に至った日本の小中高生へのAEDの使用において、男女差があることが指摘されています。
小学校・中学校・高校において、心肺蘇生法(CPR)を受けた人数に男女差はなかったのに対し、AEDパッドの装着を受けた人数では男女差があることがわかっています。特に高校・高専では、女子が約56%、男子が83.2%と大きな差があります(出典:総務省近畿管区行政評価局『学校における救命活動に関する調査―AEDの使用を中心として―』)。これは女性の衣服をはだけさせることに対してのとまどいが、重要な救命行為を妨げている可能性があるということです。
なぜなら心肺蘇生やAEDは実施が遅れると、救命率が1分で約7~10%ずつ下がっていきます。119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は8.7分と言われています。そのため、もし119番通報をして救急隊の到着を待っていた場合には、救命率が著しく低下します。命が助かったとしても、重度の障害が残る可能性が高くなるのです。異性へのAED装着をためらわず行い、男女差のない救命活動を実施することが非常に重要であることが分かります。では、具体的に女性を救命するにはどうすればいいのでしょうか?
女性が目の前で倒れたらどうすべき?
女性のAED装着に関して正しい知識を得ることは、もしものときにとまどわずに行動できることに繋がり、女性の命を救える確率が高くなります。もし、目の前で女性が倒れた場合に、なにをすればいいか確認してみましょう。
- 周囲の安全を確認し、声をかける
- 反応がない場合は、大声で周りの人に協力を要請する
※「女性の方、協力してください!」「そこのスーツの男性、手伝ってください!」など具体的に指名するのが有効です。他人事から自分事として捉えるきっかけになります。 - 協力者に119番通報を依頼する
- 他の協力者にAEDを持ってきてもらうよう依頼する
- 呼吸を確認し、呼吸が止まっているもしくは、普段通りの呼吸をしていなければ、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始める
- AEDが届いたら、電源を入れる
- AEDの2枚のパッドを素肌に貼り付ける
※胸部の露出が必要です。着衣や下着をはずす必要がありますので、協力者にAEDや傷病者に触れない位置で周囲の視線を遮ってもらい、協力者に女性がいる場合は、AED装着を手伝ってもらいましょう。 - 音声メッセージに従い、電気ショックの必要な状態かの解析を待つ
- AEDが必要と判断した場合は、周囲の人の安全を確認し、電気ショックボタンを押す
- 電気ショックのあと、AEDの電源は切らずパッドは付けたまま、すぐに胸骨圧迫を再開する。順番つきリスト
なぜ下着をはずす必要がある?
AEDを使用する際、下着を付けたままにすると心電図解析に影響がでる可能性があります。そのため、胸の周りは何もない状態が適切です。また、AED装着後に露出を避けるために胸部に布などを被せるのも、心電図解析への影響を考えると避けたほうがよいでしょう。
プライバシー保護のためには、救助を直接的に行う人のほかに、協力者の存在が重要となります。
協力者としてできることは?
119番通報やAEDを届けること以外に、救助の協力者としてできることは多くあります。
無用の視線を遮る
AEDを使用する際、胸部の露出が必要になります。傷病者が女性の場合、救助に必要のない無用の視線から守り、プライバシーに配慮することは大切です。
ストールやタオル、ビニールシート、ついたてなどを使ったり、人数が多ければ人垣を作ったりして視線を遮りましょう。
救助の目的以外で近づく人を阻む
残念ながら、救命処置を手伝う目的ではなく、好奇心から傷病者や救助の現場に近づいたりする人が少なからず存在します。救助の妨げになりますので、離れておいてもらいましょう。
特に女性にAEDを使用する際は、周りの傍観者を遠ざけ、人目から守ることが大切です。
救助の様子をスマートフォンで撮影する人を止める
信じられないことですが、救助の様子や傷病者を撮影し、その内容をSNSへ投稿・拡散する人がいます。
そのような悪質な人間から傷病者を守るためにも、スマートフォンなどで撮影している人を見かけたら、すぐに止めるよう声をかけましょう。
救急車で到着した救急隊員を傷病者の元に案内する
傷病者が屋内にいる場合、救急隊員が速やかに傷病者の元に行けるよう、建物の外で待機し、救急車を誘導する協力者が必要です。
また、救急車からストレッチャーや担架を運び入れる必要がありますので、傷病者の元まで最短距離で迎えるよう、経路を確保する協力者も必要です。高層階ではエレベーターが必須ですので、エレベーターを1階(もしくは救急車の到着階)に止めておく必要があります。経路上にある、搬送の妨げになる机やイス、物品(段ボールや台車など)を除けておくことや、自動ドアやオートロックを解除してスムーズに搬送できるようにすることも大切です。
傷病者の家族に連絡する(連絡先が場合わかる場合)
傷病者が救急車で搬送された後、さまざまな治療を受けます。治療の内容によっては、家族の承諾が必要になりますので、できるだけ早急に傷病者の家族に連絡しましょう。傷病者の状況とともに、救急隊員から搬送先の病院名を聞いて伝えることも必要です。
また、協力者に女性がいる場合、傷病者へのAED装着を手伝ってもらったり、装着後に傷病者の肌に触れない位置で上着などを用いて無用の視線を遮ってもらったりするなど、プライバシーへの配慮をお願いしましょう。
女性へのAED使用はセクハラになる?
厚生労働省では、市民が人命救助のためにAEDを使用する場合、刑事罰、民事罰ともに「原則として免責される」という方針を打ち出しています。その方針に従ったAED条例を制定する自治体も増えています。
そのため、一連の救命処置の流れから逸脱しておらず、AEDの指示に従った行為であれば、性的行為とは見なされることはないとされています。倒れている人が女性でも男性でも全力で救助しましょう。
前述した通り、救命現場ではたった1秒の判断の遅れが、救命率を左右します。胸骨圧迫をすることで2倍、さらにAEDを用いた電気ショックを行うことで、一般市民が目撃した突然の心停止の半数以上の人を救うことができるのです。
もし、目の前に倒れている女性を見て、救助すべきか葛藤が生じたら、自分の家族や大切な人が倒れていると考えて対応しましょう。命の危機にさらされている家族を放置するでしょうか?一刻も早く救命処置を行い、少しでも助かるように全力を尽くすはずです。目の前の救助者にも、自分と同じく家族や大切な人がいるはずです。他人事ではなく、自分事として積極的に救助に関わっていきましょう。
女性へのAED使用は協力者の意識で変わる
AEDの使用は、早ければ早いほど効果的です。女性の傷病者だからとAEDの使用が遅れることのないよう正しい知識と対応を身に着けましょう。
救命率に男女差が出ることは、避けるべき事態です。あなたの行動が、誰かにとって大切なお母さん、奥さん、娘さん、姉妹の命を救うことに繋がるはずです。
この記事の監修者

小杉 理恵
医学博士。 日本内科学会総合内科専門医。 日本循環器学会認定循環器専門医。 日医認定産業医。 人間ドック健診専門医・指導医。 北里大学医学部入学。北里大学病院にて初期研修終了後、関連病院にて心不全や心筋梗塞といった循環器内科領域の研鑽を積み、北里大学医療系大学院にて博士号取得。 北里大学病院循環器内科助教、北里研究所病院循環器内科医長、北里大学東病院健康科学センターを経て、北里研究所病院予防医学センター人間ドック科部長として活躍中。
2021.3.19公開
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