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回復体位とは?普段どおりの呼吸はあるけど意識がない!救急車を待つ間にできること

「回復体位」という言葉を聞いたことはありますか?回復体位を知っておけば、救急車を待つ間、傷病者に起こるさまざまなリスクを避けられる可能性が高くなります。回復体位とはどんな姿勢なのか、姿勢の取り方や必要な状況などについて見てみましょう。

一次救命処置とファーストエイド

もし社内に急病で倒れた人がいたら、あなたはどうしますか?意識がなく、普段どおりの呼吸ではない場合は、胸骨圧迫や人工呼吸、AEDなどの一次救命処置が必要です。しかし、意識はないものの呼吸は普段どおりという場合には、一次救命処置ではなく、「ファーストエイド」が必要になります。

ファーストエイドとは、急な病気やケガをした人を助けるために行う、最初の行動のことを指します。一般の方でも比較的安全に実施できるため、救急隊や医師が対応するまでの間にファーストエイドを行うことで、傷病者の命を守り、苦痛を和らげ、悪化を防ぐことが期待できます。

回復体位

回復体位とは、ファーストエイドのひとつの対応として、救急車が到着するまで傷病者が安全な場所で安静を保てるようにするための姿勢です。具体的には、反応はないが普段通りの呼吸をしている傷病者に、横向きに寝た姿勢をとらせます。その姿勢を回復体位と呼びます。

傷病者の意識がない場合、喉の奥の筋肉や舌の力が抜け、舌の付け根が喉の奥の空気の通り道(気道)を塞ぐことがあり、呼吸ができなくなります。また、嘔吐したり吐血(血を吐く)したりしている場合も、その吐き出したものが気道に入り、呼吸ができなくなる場合があります。
回復体位はこれらを予防し、傷病者の呼吸を維持することで、苦痛を和らげ、状態の悪化を防ぐことができます。

回復体位はどんな姿勢?

回復体位は、横向きの体位で手や足の位置を調整する必要があります。

回復体位は、横向きの体位で手や足の位置を調整する必要があります。姿勢の取らせ方を見てみましょう。

  1. 仰向けから、横向きに寝かせます。
  2. 上側にきた方の手を顎から顔の下に入れます。
    ※左を下にした場合、右手の甲に顔を乗せます。
  3. 下あごを軽く前に出して、気道を確保し、息をしやすくします。
  4. 後ろに倒れないよう、上側の足を前に出して、膝を90度曲げておきます。
    ※左を下にした場合なら、右足を曲げます。

回復体位が必要な状況は?

回復体位は、反応のない状態の傷病者に適している体位です。特に下記の状態の際には、回復体位が必要になります。

  • 反応はないが普段どおりの呼吸をしている場合
  • 嘔吐や吐血が見られる場合
  • やむを得ず傷病者のそばを離れる必要がある場合

回復体位を取らせることで、吐いたものによる窒息を予防できます。

その他の安静に適した体位

安静に適した体位は、回復体位のほかに下記のような体位があります。
(出典:横浜市『救命処置以外の応急手当』北九州市『傷病者に適した体位』

仰臥位(ぎょうがい)

仰臥位は、背中を下にした水平な仰向けの状態で、全身の筋肉などに無理な緊張を与えない体位です。心肺蘇生法を行うのに適した体位で、最も安定した自然な体位になります。

座位(ざい)

座位は胸や呼吸の苦しさを訴えている傷病者のなかで、座った状態が楽と感じている場合に適した体位です。

半座位(はんざい)

半座位は上半身を軽く起こした体位で、ベッドの頭部分を上げたり、クッションなどにもたれたりした状態をいいます。座位と同じく、胸や呼吸の苦しさを訴える傷病者のなかで座った状態が楽な場合に適しています。また、頭のケガや、脳血管障害が疑われる場合に適した体位です。

下肢挙上(かしきょじょう)

仰臥位で足側にクッションなどを敷いて、足を高くした体位です。貧血や出血性ショックにより血圧が著しく下がっている傷病者に適しています。

ファーストエイドの方法

回復体位以外に、遭遇する可能性のある状況とファーストエイドの方法が下記の通りになります(出典:厚生労働省『救急蘇生法の指針2015』)。

気管支喘息発作

気管支喘息は、肺への空気の通り道である気管支が急に狭くなり、呼吸が十分にできなくなる発作が起こる病気です。喘息発作がひどい場合は命に関わるため、ただちに救急車を要請する必要があります。発作時に使用する気管支拡張薬という吸入薬を持っている場合があり、傷病者自身で吸入を行います。発作がひどい場合には、周りにいる人が口元まで吸入器をもっていき、吸入しやすくしてあげることが大切です。

アナフィラキシー

アレルギーの中でも重篤な反応を示すことをアナフィラキシーといいます。アナフィラキシーでは、気道が狭くなって呼吸ができなくなったり、血圧が急激に下がったりすることがあり、命に関わります。速やかに救急車を要請しましょう。

過去にアナフィラキシーを経験した方は、医師から処方されたアドレナリンの自己注射器(エピペン)を持っている場合があります。一刻も早くエピペンを打つ必要がありますので、傷病者が打てない状態であれば、周囲の人が打つのを手伝う、もしくは救助者がエピペンを傷病者に打ちましょう。エピペンを注射する位置は、太ももの前外側になります。

低血糖

糖尿病の方でインスリン治療を受けている方に起こりやすいのが、低血糖です。血糖が下がりすぎると、汗をかく、手や指が震えるなどの症状から、頭痛や集中力の低下などに症状が進み、重症になるとけいれんや意識障害が起こり、命に危険が及ぶこともあります。そうなる前に、ブドウ糖タブレットなどを摂取したり、角砂糖や甘いジュースなどを摂ったりすることが大切です。

けいれん

自分の意思とは関係なく、筋肉の収縮が続く状態がけいれんです。てんかんや薬物中毒、低血糖、電解質の異常、脳の病気などによって起こります。けいれんが起きた場合、けがの予防と気道確保が最も重要になります。けいれん中は、傷病者の体に当たりそうなものを移動させ、家具の角などに当たらないようにクッションなどでガードしましょう。無理に体を押さえつけたると骨折することがあるため行ってはいけません。また、舌を噛まないようにタオルなどを口に入れたりすること窒息したりする可能性があるほか、救助者が指を噛まれる危険性があります。

けいれんがおさまらない場合は、救急車の要請が必要です。けいれんがおさまった場合は反応を確認し、心停止していれば救急者の要請と一次救命処置が必要になります。呼吸に異常がなく、意識を失っている状態であれば、救急要請した上で回復体位を取りましょう。

熱中症

体温が上がり、体内の水分や電解質のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりした状態が熱中症です。体温の上昇やめまい、嘔吐、頭痛、けいれん、意識障害などの症状を引き起こし、重症例では命の危険を伴います。炎天下での作業や、高温多湿な部屋での作業は要注意です。

熱中症の症状が見られたら、すぐに涼しい場所に移動させ、経口補水液などの塩分を含んだ飲料を飲ませ、体を冷やしましょう。意識がもうろうとしている場合や体温が極端に高い場合は、早急に救急車を要請することが大切です。

体位ひとつでその後が変わる

傷病者にとって、救急車を待つ間の体位を取り方ひとつで、今後の状態に影響を与える可能性があります。特に意識のない傷病者では、回復体位を取ることで状態の悪化を防げたり、合併症を予防できたりします。必要な場面に遭遇した際に、適切な体位を取れるよう、イメージトレーニングをしておくといいですね。

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この記事の監修者

写真:向後 寛子

向後 寛子

医学博士、外科専門医、下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術実施医。都内大学病院に心臓血管外科として従事、現在は血管外科医として勤務。働くママドクターとして若手女性心臓血管外科医への啓蒙活動も行っている。

2021.1.27公開

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