SNSでの犯罪被害から子どもを守るために
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セコムの舟生です。
コロナ禍において、子どもとインターネットの距離感がいっそう近づいているようです。
今年内閣府が発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、小学生の半数以上が1日2時間以上、3割以上が1日3時間以上インターネットを利用しているという結果になりました。
子どもとインターネットの接点が増すなか、SNS利用をきっかけとした子どもの性的被害が増加傾向にあります。
昨今は自分専用のスマートフォンを所有している小学生も増えており、保護者が知らないところで見知らぬ第三者とつながることも可能です。
事件の発覚後に保護者が「誰と連絡を取っているのか知らなかった」とショックを受けるケースも少なくないと聞きます。
子どもがスマートフォンやインターネットを利用するのが当たり前になった今、SNSでの犯罪被害も他人事ではありません。
どうすれば子どもを守ることができるのか、あらためて子どもとSNSの安全な付き合い方について考えてみましょう。
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▼ SNSにおける小学生の被害実態
今年3月に警察庁から発表された「令和2年における少年非行、児童虐待および子どもの性被害の状況」によると、SNSに起因する事犯の被害者となった児童は1,819人。
そのうち小学生の被害者は84人で、前年度より12人増えています。
また、SNSで被害にあった児童のフィルタリングの利用状況を見ると、85.5%が被害前にフィルタリングを利用していなかったことがわかっています。
ここ数カ月で報じられた実際に起きた事件を振り返ってみましょう。
・SNSを通じて知りあった10歳未満の女児と、女子高校生に、被害者自ら撮影したわいせつ画像を送らせた30代男を逮捕。複数画像を記録保存し、児童ポルノを製造した疑い。
・短編動画投稿アプリを通じて知りあった小5女児を呼び出して、車で連れまわし、体に触れるなどした30代男を逮捕。男は数回にわたって女児を呼び出しており、女児が拒否すると「住所を知っている」などと脅迫していた。
・SNSで知りあった小学生女児を呼び出し、わいせつな行為をした10代男2人を逮捕。廃業したホテルに連れ込み、女児の体に触るなどしたうえ、財布を盗んだ疑い。
被害者と加害者がSNSで知りあい、自撮りのわいせつ画像を送らされる、呼び出されて実際に会い、わいせつな行為をされるなどの被害が起きています。
なかには、自ら送った画像や、わいせつ行為を撮影された動画によって脅されたり、インターネット上に出回ったりする被害もあり、子どもの心に深い傷を残すことは想像に難くありません。
保護者は、「子どもが被害にあってからでは遅い」と認識を強く持ち、子どもが日ごろからスマートフォンやインターネットをどのように利用しているのかを把握しておく必要があります。
▼ インターネット環境があれば、子どもは知らない第三者とつながれる
「うちの子はSNSで知らない人とつながったりはしないだろう」と考える保護者の方もいると思います。
兵庫県尼崎市がおこなった調査によると、調査対象の小学生のうち約3割が「インターネットで知らない人と連絡を取ったことがある」と回答。
「SNSで気軽につながる」こと自体が、小学生にとってさほどハードルの高い行為ではなくなってきているのかもしれません。
また、過去には、オンラインゲーム上で知りあった人と、ダイレクトメッセージなどを使って連絡を取りあっていたケースがありました。
子どもが使用するゲーム機でも、オンライン対戦ができるゲーム、音声チャットやフレンド機能などが組み込まれたゲームがたくさんあります。
スマートフォンに限らず、インターネット環境があれば、見知らぬ第三者とつながることはできるということ。
相手に悪意があれば、無防備な子どもをだますのは簡単です。
子どもが多く利用しているSNSやオンラインゲームの掲示板などで、プロフィールを偽って言葉巧みに子どもに近づくケースもあとを絶ちません。
性別に関わらず、児童の誰でもが被害者になりうるので、保護者の方も危機感を持って子どものインターネット利用を把握・管理することが必要です。
▼ 子どものSNS利用には保護者が関わることが大事
統計からわかるように、SNSで被害にあった児童の8割以上は、フィルタリングを利用していませんでした。
小学生の子どもを、悪意ある大人やインターネット上の有害な情報から守るためには、フィルタリングは必須。
スマートフォン本体で設定するフィルタリング、携帯会社が提供しているフィルタリングサービス、フィルタリングのアプリなど、複数の方法があります。
それぞれ制限範囲や管理できる内容が異なりますので、お子さんにあったフィルタリングを今からでも設定しましょう。
フィルタリングをかけることによって、子どもが利用したいSNSが使えないケースもあります。
その場合、特定のアプリだけフィルタリングを解除する設定が必要になります。
子どもにそのSNSの利用を許可するなら、適切ではない機能は制限するなどの設定が欠かせません。
そのうえで、保護者が利用状況をチェックすることを条件にしたほうが安心です。
子どもが使用しているアカウントを開き、誰とつながっているのか、どんなコミュニケーションをとっているのかなど、実際に目で確認しましょう。
加えて、子どもとSNSの利用方法について話しあい、利用時間や利用場所などルールを決めましょう。以下のようなこと伝えると、具体的にどんなルールを決めるべきかが見えてくると思います。
【子どもと一緒にルールを決める際に教えるべきポイント】
・SNSやオンラインゲームにはあなたをだまそうとする人がいる
・インターネットで知りあった人と会うと、事件の被害者になることがある
・インターネット上で知りあった人を安易に信頼したり、やり取りしたりするのは危険
・インターネット上に一度出回った情報は消すことができない
・自分の写真や個人の情報を投稿したり、相手に送ったりすると、悪用されるかもしれない
実際にあった事件を例にして、「どうすれば被害を防げたのか」「自分だったらどうするか」を話しあってみると、ルールづくりがしやすくなるはずです。
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本来であれば、SNSをはじめとするオンラインでのコミュニケーションは、小学生には少し早いのかもしれません。
しかし、時代の変化とともに常識も変わっていくもの。
安易に禁じるより、どうすれば安全に利用できるかを考えながら、親子二人三脚でSNSの利用能力を高めていくほうが前向きです。
小学校での交友関係を把握するのと同様に、子どものSNS利用に関心を持って関わりましょう。2021.05.20