安全のプロのママと話そう!【2】
「子供目線の製品」についてどう思う?(前編)
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セコムの舟生です。
今回から2回にわたって、NPO法人 子どもの危険回避研究所のみなさんとの座談会第2弾をレポートします。
先日ご紹介した「子供の送り迎え」をテーマにおこなった座談会に続く2度目の開催です。今回の座談会は「キッズデザイン博2008」を一緒に見学後、場所を移して開きました。
座談会に参加してくださったのは、子どもの危険回避研究所所長の横矢さん、副所長の西江さんのほか、一般のお母さん代表としてヴルチェクさんと玉置さんを新たにお迎えし、いろいろなお話しで盛り上がりました。
◆お菓子を囲んで、楽しい雰囲気のなか座談会スタート!
舟生:荒天のなか、「キッズデザイン博2008」にご足労いただき、みなさん、ほんとうにありがとうございました。会場までの道のり、大変だったのではありませんか?東京メトロ銀座線「外苑前駅」構内売店の傘は完売状態でしたし、出口通路は豪雨がおさまるのを待つ人で大混雑でした。西江さん:突然の豪雨でしたから傘を持っていない人も多かったですね。今日の集中豪雨といい、近年の日本の気象状況はどこかおかしくありませんか?夏は異常に暑いですし、突然の豪雨なんて、まるで熱帯地方のスコールのようですもの。そういえば昨年は、東京で12月頃まで紅葉が見られるところもありましたね。紅葉が終わったらすぐにクリスマスやお正月がやってきて...。これも温暖化の影響なのでしょうか?
横矢さん:しかし、これほどの荒天のなか、「キッズデザイン博2008」の会場には多くの方々が訪れていましたね。小さな子供を連れた親子連れも多くて、予想以上の盛況ぶりに驚きました。
舟生:キッズデザイン博も今年で2回目ということで、子供を持つ保護者の方々や企業・団体に、「子供の安全」の重要性が浸透してきた、その成果だと思います。
横矢さん:私達が子どもの危険回避研究所を発足した当時に比べると、社会全体の子供の安全に対する認識や関心が一層高まってきているのは感じますね。今回の「キッズデザイン博2008」を見学して、さらに実感することができました。
舟生:さて、座談会のほうですが、お子さんをお持ちのみなさんの実際の意見が聞ける貴重な機会と思っていますので、ぜひ、ざっくばらんに普段お感じのことをお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
横矢さん:前回は第1回の座談会ということで、参加者は全員、研究所のメンバーでしたが、今回は、西江さんのお友達の玉置さんと、小さなお子さんのいらっしゃるヴルチェクさんに参加をしていただきました。では、西江さんから玉置さんの紹介をお願いします。
西江さん:私と玉置さんは、中学・高校と同級生です。現在はふたりの小学生のお母さんです。
玉置さん:玉置と申します。大学卒業後、5年間教師を務めておりました。現在は、小4と小1の子供がいます。ふたりとも私立学校に通っていて、電車通学をしているのですが、最近、電車内や駅構内での事件が多く報道されているので、今はそれが一番の心配事です。
ヴルチェクさん:ヴルチェク実奈子と申します。ヨーロッパの大学で3年間教師を務め、その後、国際結婚をしました。子供はまだ3歳ですが、現在、海外旅行の添乗員として勤務をしています。
横矢さん:ヴルチェクさんは、海外在住経験があるので、海外の子育て事情を含めた海外事情について詳しく、子供の安全・安心にとても関心が高いんです。「子供の安全」について、ヴルチェクさんから研究所のほうにメールでいろいろなご意見やご質問をいただき、それからお付き合いをさせていただいています。
ヴルチェクさん:もう、子供の防犯や安全のことになると心配で仕方がないんです。
舟生:キッズデザインについてはご存じでしたか?
ヴルチェクさん:はい。新聞の広告やキッズデザイン協議会のホームページなどで知っていました。少し心配性のところがあるので、子供のことについては、日頃からネットなどでよく調べるほうです。
◆キッズデザイン賞 受賞作品に触れてみて
横矢さん:キッズデザインとユニバーサルデザインには、どういった違いがあるのでしょうか?舟生:今のユニバーサルデザインは、どちらかといえば、高齢者の方や障害者の方に配慮されたデザインが対象になっている場合が多いんです。そこで、キッズデザインが誕生したわけですが、本来は高齢者や障害者にも、また子供にも安全なデザインがユニバーサルデザインだと私は思うんです。子供にとって安全・安心なデザインということは、幅広い世代の人に安全なデザインといえますよね。
横矢さん:私も兼ねてからお会いする企業の方々には、どんなものづくりにおいても、「子供の目線を入れてほしい」と常々言っているんです。今回のキッズデザイン賞 受賞作品展示でも、「子供目線を上手に取り入れてくれているな」「子供の安全のために地道な研究をしているな」といった作品が多く見受けられ、会場で舟生さんに一番お気に入りを教えてほしいと言われた時には、どれを選ぼうか、本当に悩みました。
舟生:最後まで悩んでいましたものね。
横矢さん:審査員長特別賞【自治体賞】を受賞した、東京都の「東京都商品等の安全問題に関する協議会における"折りたたみ椅子等の安全確保"」などは、自治体が子供の事故防止に対して地道に取り組んだもので、とても素晴らしいなと思っています。
舟生:折りたたみ椅子の指はさみ事故は、意外と多く発生しているんですよね。それなのに、具体的な対策は遅れていた分野でした。
横矢さん:そうなんです。なかには、指を切断してしまうこともあるんですよ。そこで、東京都として、折りたたみ椅子等による事故防止のため、東京都が関係機関などに働きかけをおこない、施設管理者などに注意喚起をおこなったわけです。そして、このような都の動きを受け、日本オフィス家具協会は、前脚と後脚が重ならず、すき間を確保できるタイプの椅子を推奨することを決めてくれました。
舟生:そこで横矢さんが一番に選んだ、キッズデザイン賞 会長特別賞を受賞した、岡村製作所の「折りたたみ椅子8168ZZ」に結びつくわけですね。
横矢さん:「折りたたみ椅子8168ZZ」は、折りたたみ時に指をはさんで重大な事故が起きないよう、デザインされた「折りたたみ椅子」なんです。こういった安全性の高い椅子が、標準仕様になるといいですね。それに日本オフィス家具協会は、しばらく残る古いタイプの椅子に注意するよう訴えるポスターなども、早急に作成してくれました。そういうところも評価したいんです。ポスターは、ホームページからもダウンロード可能なんですよ。
西江さん:私は子供を保育園に通わせているので、保育施設の安全や子供の安全に関する製品について、ある程度の認識がありました。そのなかで、私自身が全然イメージしなかったキッズデザイン「給食用食器"繕い"」に強く惹かれました。磁器を直して使うことにより、物を大切にする心を教えるだけでなく、「ここを直したよ!」という、可愛いデザインに仕上がっている点にも共感できました。また、展示会で説明をしてくれた企業・担当者の「器を大切にするのも食育です」という熱い思いも感じられました。食物についてや調理法を学ばせることだけが食育ではないのだなあと、目からウロコでした。
横矢さん:江戸時代には、高級な和食器などの陶器が割れると、「金継ぎ」という方法で陶器を修復することで、価値が上がったりすることもありましたからね。
舟生:当時は茶碗や湯飲みなどの陶器も修理をして使っていたそうですよ。「割れたらすぐ捨ててしまう」現代とは、ずいぶん違いますね。
横矢さん:玉置さんやヴルチェクさんはいかがでしたか?
玉置さん:私は「ナーサリーユニフォームR49」というスモックを選びました。スモックって、すぐに汚れますし、毎日のように使いますでしょう?すぐに洗えて、シワになりにくいという点が、便利でいいなと思いました。
西江さん:首の部分に日よけが付いている「カラーキャップサンガード」も受賞していましたね。外遊びの時は首が無防備になるので、あの帽子はいいですよ。うちの子が通っている保育園では、私物の帽子を園の外遊びで使えるので、このタイプの帽子を使わせています。どの園も、このタイプの帽子で統一すればよいのにと思いますね。
ヴルチェクさん:私は「ジャンボ安全絵本シリーズ」を選びました。名前の通り大きな絵本で、防犯・防災・交通安全について3歳になる子供と一緒に遊びながら学べて「いいな」と思いました。さっそく、購入して帰ろうと思っています。大きい絵本ですので、保育園や幼稚園などで、先生が園児達に読み聞かせをするのにもいいと思うんです。さっそく、保育園に提案してみようかしら...。
舟生:すべての子供から年配の方までが、安全に利用できるよう工夫されたエスカレーターも、会長特別賞を受賞していましたね。
ヴルチェクさん:エスカレーターの事故についてはとても興味深く見てきました。巻き込みを防止する工夫やハンドレールから身を乗り出しても、首が巻き込まれたりするのを防止するセンサーなどが付いていて、安全性が高まっていましたね。エスカレーターを設置する施設や企業の方々に、ぜひ採用してほしいなと感じる作品でした。
横矢さん:子供が関係ない製品なんてないんですね。「子供目線の大切さ」を、ぜひ多くの企業や自治体、そして社会全体に理解してほしいなと私は常々思っています。
そして、子ども自身が、みんなの安全について考えることも大切だと感じます。日立Webサイト内に、日立のユニバーサルデザイン「ヨッシー&レイコの これってどうなの?」という連載コラムがあるんですけど、このコンテンツは親子で見られる、とても良いコンテンツです。子ども自身が、みんなの安全について考えるチャンスになるので、ぜひ親子でのぞいてみてほしいと思っています。舟生:すべての世代に安全な製品が、ひとつでも多く標準仕様になることで、今よりもっと安全で、安心して暮らせる社会になることでしょう。日本には、ぜひ、子供や年配の方々に優しい国になってほしいものです。
次回は、キッズデザインの話題から、さらに話を発展させ、子供の安全や防犯について、ママ達の不安や貴重な意見が飛び出した、座談会の後編をお伝えします。子育て中のみなさんが、きっと共感できる話が聞けると思いますよ。
お楽しみに b(⌒o⌒)<<【前回】 安全のプロのママと話そう!【次回】>> 「ママと話そうシリーズ」バックナンバーはこちら
2008.08.27