【特集:子どものネット教育を考える [1]】 有識者に聞くネット教育の今<前編>
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セコムの舟生です。
現代の生活に欠かすことのできないインターネット。
情報に囲まれたこのインターネット時代の中で、親が子どもを守りながら育てていくにはどうしたらいいのでしょうか?最近、"情報を正しく使いこなす能力"という意味の「メディアリテラシー」という言葉をよく耳にしますが、インターネット時代において子どもを守る盾になると注目されています。
今回から3回にわたり、「メディアリテラシー」をテーマに、【子どものネット教育を考える】という特集をお届けしたいと思います。
初回となる今回は、メディアリテラシー研究の第一人者である千葉大学教育学部の藤川大祐教授に、メディアリテラシーと学校教育の現実、親ができるネット教育など、幅広くご意見を伺いました。
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▼ メディアリテラシーの基本は「批判的に受け止める」こと
舟生:小学校の授業でもパソコンが使われるのが当たり前になってきました。最近、保護者からも「使い方だけでなくモラル教育を」という声が聞こえてきます。「メディアリテラシー」に対しての関心も高まっているようですが、これは具体的にどういうものかを教えてください。藤川教授:メディアリテラシーという考え方は、カナダからはじまりました。テレビの多チャンネル化に伴い、カナダでもアメリカの番組がたくさん見られるようになり、急速に情報が増えていきました。
そのような状況下で、溢れかえる情報との付き合い方がカナダで問われはじめ、情報を批判的・懐疑的に受け止める必要性が叫ばれたのです。メディアリテラシーの核心は"クリティカルシンキング"(批判的思考)です。批判=ケチをつけるという意味ではなく、むしろ"よく吟味する"というニュアンスですね。よく吟味して自分で判断するというのが、メディアリテラシーの中心的な考え方です。
舟生:テレビの多チャンネル化を経て、今はインターネットの時代です。メディアリテラシーの考え方が生まれてきた当初よりも、さらに情報量が増えているということですね。
藤川教授:子どもたちも含めて、現代社会では情報が溢れており、自然と情報に触れる機会が以前より増えています。昔は子どもの情報源は学校の勉強がメインでしたが、現代の子どもたちにとっては、学校はいくつかある情報源のひとつでしかありません。情報社会の現代では、メディアリテラシーが必要不可欠な基礎力といえると思います。
インターネットを介して情報を得るだけではなく、コミュニケーションを行うことも当たり前になってきましたが、メディアを介したコミュニケーションというのは、"人"の顔が見えませんよね。見えない相手を想像するのも、メディアリテラシーに必要な能力です。
▼ インターネットモラルは実践で身につけるしかない!?
舟生:文部科学省の学習指導要領が新しくなって、2011年度から小学校で、2012年度からは中学校でメディアリテラシーの教育に力を入れるようになっていますね。藤川教授:メディアリテラシーというとインターネットに関することだと思われがちですが、それだけではありません。友だちから聞いたうわさ話とか、手紙のやり取りとか、電話なども該当します。インターネットも含めて、日常のあらゆるところで情報を吟味する勉強が必要なのです。
舟生:メディアリテラシーの教育にあたって、学校も試行錯誤していると思うのですが。
藤川教授:とくにインターネットが関わる問題はスピードが速く、新しい話題がどんどん出てくるのでなかなか追いつけないのが現実です。まず教材がないんです。文部科学省検定済教科書は、通常4年毎に改訂されますが、インターネットの問題を考えるのに4年もかけていたら間に合いません。
一般的なメディアリテラシー教育については、かなり体制ができてきていると思います。しかし、最新のインターネットや携帯電話の問題に完全に対応できているかといえば、難しいと思います。学校外から教師を招いて補っている学校もありますが、教える内容も一律ではありません。
舟生:子どものメディアリテラシー教育にバラつきが出るのだとすると、ちょっと怖いですね。
藤川教授:学校にすべて委ねてしまうなら不足は多いでしょうね。しかし、学校の役割が基礎教養を身につけさせることだと考えれば、家庭の役割が見えてきます。基本的な力を学校で身につけて、現代の情報社会で求められるメディアリテラシーについては、子どもたち自身が実践しながら身につけていくしかないのかな...と思います。
▼ コンプリートガチャ問題に垣間見える現代っ子の金銭感覚
舟生:最近は、コンプリートガチャの課金システムが問題になりましたが、ネットゲームは大人より子どものほうが使い慣れていて、「危ないらしいけど、どうしたらいいかわからない」という親御さんも多いようです。何をやっているかわからないうちに、莫大な請求がきてビックリするケースもあります。藤川教授:「お金を使っている」という意識が生まれにくい仕組みではあります。ただ、子どもの携帯電話の費用を負担するのは多くの場合、親御さんですから、お金の出方を制限することはできるはずなんです。
まず、携帯電話を契約するときに、どのような契約内容になっているかしっかり確認することは必要不可欠です。有料コンテンツが自由に使えないように制限することもできるはずです。
お子さんの通話・通信料に注意を払う親御さんは多いですが、コンテンツにかかるお金については、まだまだ認識が追いついていないと思います。親のクレジットカードを登録して、自由に使えてしまうような状況は避けるべきです。
舟生:モラルとともに、お金の感覚を子どもに身につけてもらう必要がありそうですね。
藤川教授:お金の使い方についての教育は、学校でなかなか実践しにくいのが現状です。なので、ご家庭でしっかり教えなくてはなりません。お小遣いを計画的に使うとか、なくなれば使えないとか、自分自身で考えて自制することを身につけさせなくてはなりません。
金銭感覚の教育をおろそかにしたまま携帯電話を自由に使うようになってしまうと、大きな問題につながる可能性もあります。お金が払えないから恐喝する、援助交際する...といった短絡的な方法で解決しようとしたお子さんの話を、実際にいくつか聞きました。
舟生:インターネット社会にあった金銭感覚を養うことも、メディアリテラシーの育成の一つだということですね。
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今回のお話しでは、特にインターネットに関しては、親のコントロール下でメディアリテラシーを学ばせることが需要なのだとわかりました。
次回も藤川教授へのインタビューを後編としてお届けします。後編では、「子どもとインターネットの関係性」についてご紹介します。子どもがインターネットとどのようにして関わっているのかを知ることは、家庭でおこなうメディアリテラシー教育のヒントになります。ぜひご覧ください。
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2012.06.07