【座談会】3.11アンケートから考える「あの日」と「これから」~小学生ママたちの本音を聞く<その2>~
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セコムの舟生です。
前回に引き続き、
子どもの危機回避研究所の所長 横矢真理さん、
高校生の男の子と小学校3年生の男の子をお持ちの野元美香さん、
小学校4年生の男の子をお持ちの内海(うちみ)加織さん、
小学校3年生の男の子と3歳の女の子をお持ちの森泉洋子さん、
そしてセコムから舟生と堀越が参加して実施した座談会の模様をお届けします。今回のレポートでは震災後に目を向け、子どものメンタルケアについてまとめました。震災後には、子どものメンタル面が心配とメディアでも取り上げられましたが、実際にお子さんと向き合うお母さんとして、どんなことを感じていたのでしょうか。
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▼ 震災で受けた子どもの"心の傷"の深さは?
舟生:震災を体験したあと、お子さんのメンタル面や行動に変化はありましたか?野元さん:上の子(高校生)はそうでもありませんでしたが、やはり下の子(小学校3年生)はすごく怖がっていましたね。余震も続いていたので、「眠れない」と言っていました。
かわいそうだけれど、どうにもできない状況がもどかしかったです。気持ちを晴らしてあげたいのに、余震が続いていて外出を控えなくてはならない。電車もきちんと動いていなかったし...落ち着くまでは子どもの様子を注意して見ていました。今はもう大丈夫です。
それでも今も、テレビで被災地の状況が映ると、お兄ちゃんも弟も嫌がります。舟生:震災当日から数日間は、ずっと被災地の映像ばかりでしたね。それが子どもに悪い影響を与えるとメディアで問題にもなりました。野元さんは、お子さんたちにそういう映像を見せないように意識はされましたか?
野元さん:もちろん現実をきちんと受け入れないといけないとは思いますが、あれほど徹底して全部のチャンネルが同じような映像だと、私も悲しい気持ちになりました。今でもあまり見ないようにしているところがあるかもしれません。
横矢さん:震災があまりにもひどかったので、意識がそちらに全部行ってしまい、子どものほうを見ない。子どもは地震そのものの怖さと親の不安そうな様子を感じ取り、余計に不安を感じていたのかもしれませんね。
舟生:親は子どもを守るためにも情報が欲しいから、とりあえずテレビを見るしかない。
野元さん:ただ、本当に欲しい情報はあまりなかった気がします。東京でも水やトイレットペーパーなど手に入りませんでした。それにテレビの報道では、これからどうなってしまうんだろうという不安な気持ちばかりが駆り立てられましたね。
横矢さん:そういう意味では、ラジオが有効かもしれません。ラジオなら情報は入るし、映像の怖さがありませんから。
森泉さん:うちの子ども(小学校3年生の男の子と3歳の女の子)はまったく変わらなかったです。震災の直後どうだったかを聞いたとき、「地面にしゃがみこんだ。ママ助けてって言っちゃったよ」なんて話していましたが、その後はなにも変わりませんでしたね。テレビの報道を見て「なんでいつもの番組がやってないの?つまんないよ」と言っていたくらい。
堀越:落ち着いていますね。家庭で事前に防災について教えたりしていたのですか?
森泉さん:特にはしていませんでした。学校の避難訓練が行き届いていたんでしょうね。ですから子どものケアとしては、それほど意識しませんでした。周りの方からは、怖がるようになったとか、テレビを見なくなったというお話は聞きました。
▼ 震災を再体験して乗り越える
内海さん: うちの子(小学校4年生の男の子)は、被災地の映像を見たがります。実は主人の実家が東北なので、そちらの状況を知るためにも津波の映像なども見ていたのですが、子どもがあまりに見たがるので「もうテレビをなくそうか?」と言ったほど。
子どもは3.11の直後は非常に怖がっていましたし、いまでも「あのときは怖かったね」という話をよくするんですけれど。横矢さん:震災を体験した子どもは、再体験したがることがあります。たとえば津波ごっこをしたり、地震のときの絵を描いたり。それによって、心の傷を乗り越えていく時期があると言われているんです。ご親戚が東北にいらっしゃるし、余計にいろいろなものを感じて、乗り越えようとしているのかもしれませんね。
内海さん:主人の実家の周りがとても大変な状況になっていたのですが、それをきちんと子ども(小学校4年生の男の子)に見せておきたいと、ゴールデンウイークに連れて行きました。「こういうことがあった」という現実も知っておいてほしかったので。賛否両論あるとは思いますが、小学4年生なら、ある程度、現実を受け入れられると判断して連れて行きました。
舟生:お子さんの性格や強さにもよりますね。そういうものをプラスに転じられる子もいますし、マイナスに捉えてしまう子もいますから。
横矢さん:防犯教育にも通じたことがいえますが、子どもの性格に配慮することはとても大事です。子どもの性格を見極めることは難しいですけれどね。
▼ 子どもの不安を受け止めていますか?
横矢さん:今回のアンケートでは、地震があったとき親子で一緒にいた子と、離れていた子とで分けて集計しているのですが、ひとつわかったことがあります。
それは、「震災時に親と離れていた子のほうが、あとになってから感じる不安度が高かった」ということ。
震災直後は、それほど差がないんですよ。舟生:親と一緒にいた子は、時間がたつにつれてだんだん落ち着き、「一緒にいれば大丈夫」ということを実感したのでしょう。逆に、離れていた子は「またあんな怖いことがあったら...」という思いが募ったのかもしれません。
横矢さん:それから、小学校高学年の子のほうが、不安度が高くなっている傾向があります。漠然とした怖さを感じているけれど、親には言えずに内に秘めている子というのが意外と多そうです。
小学校高学年ともなると、思春期にさしかかって親とのコミュニケーションが難しくなってくる時期でもありますからね。注意して見ておく必要があると思います。舟生:子どもの不安を見過ごさず、うまくコミュニケーションを取って気持ちを引き出してあげられるといいんですが。
野元さん:子どもの不安度が高いと親は、行動できなくなってしまいそうですね。仕事に行くにしても「残していっていいのかしら」という気持ちになってしまいそう。
横矢さん:確かに生活を変えた家庭もあるようですね。遠くの塾をやめたり、働き方を変えたり。なにも無理にだれかに合わせる必要はないと思いますが、変えられる範囲で生活を微調整して、不安度を下げることはできるのではないでしょうか。
舟生:子どもだけではなく親にとっても安心につながりますよね。
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横矢さんは、震災があったあの日、ひとりで留守番していた子どもの心細さにも触れました。アンケートの回答に「お母さんが帰ってくるまで机の下で泣いていた」というお話があり、私も胸が締め付けられる思いがしました。
震災当日、お父さんやお母さんが帰宅することができず、ひとりで一晩を過ごしたお子さんもいたと思います。そのようなことが二度とないよう、地域の子育てサポートなども活用して、お子さんがひとりになる状況を普段から作らないようにしたいものですね。
次回の座談会レポートは震災後の"これから"の対策についてまとめます。
2011.10.06