子どもの安全ブログ

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書籍『子供の放課後を考える~諸外国との比較で見る学童保育問題~』を読んで

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セコムの舟生です。

このブログでも、何度か取り上げている「放課後の安全対策」。小学生のお子さんをお持ちの、共働きのご家庭にとっては、お子さんの放課後をどうするかは切実な悩みのひとつだと思います。学童保育は、保育園より預かり時間が短いため、多くのご両親が子供の預け場所の確保に苦労なさっているようです。

また、お子さんを保育園に通わせているご家庭では、小学校に上がると同時に直面する、いわゆる「小1の壁」と呼ばれるこうした問題に不安に感じている方も少なくないと思います。この話題に関して、興味深い本があったのでご紹介させていただきます。
→池本美香 編著『子どもの放課後を考える~諸外国との比較で見る学童保育問題~』(勁草書房)

* * * * * *

▼ 学校だけでは解決できない「放課後対策」 まずは日本の放課後対策の現状に注目してみましょう。

小学校3年生までの子供を預かる日本の学童保育。しかし、学童保育のない小学校は依然3割ほどあり、また保育所を卒園した子供の6割程度しか入所できていないというデータがあります。また、所得水準に準じた料金体系や低所得層への保育料減免のない自治体もいまだ多く、経済的な理由から、学童保育を利用しない家庭も年々増えているそうです。

公立の学童保育以外にも、保育園で実施している小学校低学年保育や地域の子育てサポート事業、民間の学童保育など、いくつか留守家庭の子供を預かるシステムがありますが、すべての親が安心して子供を預け、満足いく形で働ける環境にあるとは言えない状況です。

学校だけではフォローしきれない小学生の放課後対策を、様々な形で創出しようと苦心しているのが、現在の日本の姿です。


▼ 世界に見る「豊かな放課後」とは?
日本における放課後対策は、「家庭で放課後を過ごせない子供をどうするか」という考え方が強いように思います。

この本を読んで驚いたのは、子育て支援先進国では「放課後」をそのように捉えていないことです。学力低下、格差社会、犯罪不安、少子化...こうした問題を解消し、子供たちが人間的に豊かに成長する場として「放課後」が活用されているのが、世界の主流になりつつあります

この本の中に登場する、世界各国の放課後対策から、ユニークな事例をいくつか紹介します。

■ フランスの場合
家族と子供に関する政策を重視しているフランス。その効果は、先進国トップクラスを誇る出生率に現れています。手厚い家族手当はもちろんのこと、課外活動支援の充実が、"生み育てやすい"環境を形づくっているようです。ここでは、課外活動支援のひとつ「余暇センター」を紹介します

余暇センターは、2歳半~17歳の就学児童に日常的な余暇を提供する場所。平日の放課後は各学校で短時間保育をするシステムが整っていますが、学校が休みの日には、親の就労状況に関わらず、子供は余暇センターで過ごすのが一般化しています。

たとえば、パリ市の余暇センターでは、芸術、科学、スポーツ、文化研究などの各種プロジェクトを提供。さらに深く学びたいと望めば、パソコン、音楽、ガストロノミー(美食学)など、専門家の行うワークショップに子供を連れて行き、指導を受けられる仕組みです。また、大型バスでの遠足や、美術館訪問、映画鑑賞、宿泊キャンプなどイベントも多彩。夏季休暇中もオープンしているため、子供たちは年間を通して、日常的に余暇センターを利用しているそうです。

地域社会や施設と連携することで、大人から見ても魅力的なプログラムを提供している余暇センター。子供に豊かな体験を提供する政策が、複合的かつぜいたくに実施されている点に感銘を受けました。

■ フィンランドの場合
フィンランドの学童保育の歴史は、さほど古くありません。そのあり方が議論され始めたのは1990年代後半で、制度化されたのは2004年からです。しかし、特筆すべきは、学童保育以外の子供の居場所として90年以上前からフィンランドに定着していた「レイッキプイスト(児童公園)」の存在です。

街中いたるところに点在しているレイッキプイストは、通常、児童館のようなキッチン付きの屋内施設が併設されています。中には保育資格を持つ職員が常駐していて管理が行き届いており、「安心して子供を遊ばせられる場所」そして「簡易保育所のように利用できる場所」として制度化されているそうです。

午前は幼児と保護者が遊びや情報交換を行い、午後は学校を終えた子供が集まり児童保育のような役割を果たします。遠足や季節ごとのパーティ、母親を対象としたレクチャー、リトミック、工作指導などのクラブ活動やサークルが充実しており、しかもすべて無償。長い夏季休暇中、昼食を配給するサービスなどもあり、働く保護者にとってはなくてはならない場となっています。

フィンランドでは近年、テレビゲームの悪影響、インターネットによるいじめや犯罪など、日本と同様の問題が懸念されています。こうした問題に早期介入し、社会的疎外の予防を目的としてさらなる放課後事業の拡充を目指しているそうで、わが国も見習う点が多そうです。

■ イギリスの場合
イギリスにおける放課後活動は、授業時間外の学びの場であり、子供の体験を豊かにする活動を指しています。通常の学童保育のほか、学校外活動が充実しているのが特徴で、「学習支援」というコンセプトのもと、学校主導で様々な活動が行われています

授業の遅れや宿題に対応する学習指導のほか、スポーツ、音楽、ダンス、美術、手芸、チェスなどのクラブ、救急救命の講習会、美術館や博物館の見学、外国語学習、ボランティア活動、企業での職業体験など、活動内容は多種多様。子供の楽しめる場を増やし、苦手意識を克服することで、学校が好きになる効果もあるそうです。

親の就業に関係なく、すべての子供に豊かな放課後を保障し、能力を最大限に伸ばす機会を与えることを目指すイギリス。将来的に自立した人間を育成し、将来の社会保障負担を減らす...という壮大な目標を持って、放課後政策が行われているのです。子供が国の宝として、社会全体で大事に育てられている印象を受けました。


▼ 子育て支援先進国を目指して...日本の取り組み
日本国内でも、放課後を活用した学習指導や、プレイパークやワークショップといった多様な遊びや学びの場の提供など、自治体主導で様々な放課後対策がさかんになりつつあります。

2007年には「放課後子どもプラン」がスタートし、諸外国と同様に放課後対策に力を入れるようになってきました。これは、子供の健やかで安全な活動場所の確保を目指し、厚生労働省による「放課後児童クラブ」(学童保育)と、文部科学省による「地域子供教室」が統合・連携して行うプランです。

子供たちの適切な遊びや生活の場を創出するため、小学校の余裕教室などを活用し、地域の参画を得て、学習やスポーツ・文化活動、地域交流などの取り組みを行うというもので、親の就労に関わらず、すべての子供が対象となります。

社会的ニーズが高まっていた「放課後の子供の安全な居場所づくり」に行政が本腰を入れ始めたことは、大きな前進だと言えます。しかし、留守家庭の子供にとっては、従来の学童保育のような家庭代わりとなる"生活の場"も必要であり、すべての子供に一元的な「放課後」を提供するだけでは、カバーしきれない側面があることも否めません。

第2回のキッズデザイン賞を受賞した 放課後NPOアフタースクール の取り組みなど、民間からも注目される活動が各地で行われ始めています。皆さんのお住まいの地域でも、近隣でどのような活動が行われているかを調べ、積極的に利用してみてはいかがでしょうか?


▼ 豊かに成長する場としての「放課後」
先ほども言いましたが、いまの日本における放課後対策は、どちらかと言うと「家庭で放課後を過ごせない子供をどうするか」という視点で議論が進められています。

しかし、いわゆる子育て支援先進国と呼ばれる国々では、子供たちが人間的に豊かに成長する場として「放課後」が活用されています。そして、それが世界の主流になりつつあります。「放課後」を親が不在の間、子供をただ預かってもらうだけという視点でしか考えないのはもったいないことです。学校だけの人間関係と違った、異年齢の子供たちや大人との交流を通して、子供たちが社会を学ぶ場として活用していけるようにしたいですね。

学力低下、格差社会、犯罪不安、少子化...子供を取り巻く問題は様々ですが、今後、日本における放課後対策が、子供の人間的成長や家庭支援まで視野に入れて永続的に運営されることを期待したいと思います。

もし、子供たちの放課後のあり方について皆さんもご興味を持たれましたら、ぜひ、こちらの本を手にとって読んでみてください。そして、子供たちの放課後について、一緒に考えていくことができればと思っています。

→池本美香 編著『子どもの放課後を考える~諸外国との比較で見る学童保育問題~』(勁草書房)

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