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月刊長嶋茂雄

  • 2014年09月01日 更新
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第48回 使い古した新品グラブと守備の形

第48回
使い古した新品グラブと守備の形

 高校野球でも、プロ野球でも、あるいは大リーグの試合でもいいのですが、テレビ中継を観ていて、ふと気がついたことがあります。画面を通しての印象ですから、正確なところは分からないのですけれど、選手が使っているグラブがきれいだな、と思うことがあります。新品のようだ、とまでは言いませんが、私たちの現役時代と比べるとずいぶんきれいな気がするのです。

写真:長嶋茂雄氏

 これからの話は、私のプレーヤー時代が"物差し"になりますから、1970年代半ばまでの事として聞いてください。ともかく、私たちの時代には、試合で今のようなきれいなグラブを使っている選手はあまりいなかった。たいていの選手が使い込み、手に馴染んだ、皮は渋く変色したグラブでプレーしていました。そもそも試合用のグラブとはそういう、使い古した感じの外見をしていたのです。それも当然で、新品のグラブにかなりの時間と労力を注ぎ込んで試合用に"作り上げていった"からです。

守備スタイルを考えることを夢中にさせてくれたグラブ作り

守備スタイルを考えることを夢中にさせてくれたグラブ作り

写真:長嶋茂雄氏
 その工程ですが、まだ皮が固い新品のグラブにオイルを塗って軟らかくし、捕球するポケット部分を小槌で叩いて整えます。そこにしっかりボールを入れて、グラブがボールをつかんだ状態にして紐で縛りその形をグラブに"覚えさせる"、形を固定するのです。そして、練習で使い、気になる部分の調整を重ねながら手に馴染んだところで、晴れて試合用グラブの完成です。私たち世代のプレーヤーはこんなグラブ作りをプロもアマもやったものです。
 大学でも巨人でも私の後輩になりますが、土井正三さん(故人・巨人V9時代の名二塁手)に至っては、新品のグラブの縫い合わせの一部をほぐして中の詰め物、パンヤとかアンコと呼んでいましたが、これを引っ張り出して自分の気に入った厚さに調整していました。セカンドはゲッツーなど捕球をキーにしたプレーが多いので、グラブでボールをしっかり握るために、小型で薄手で平べったい手袋のようなセカンド用グラブを自分で作ったのです。
 では、試合用のグラブを作っていく過程が面倒だったか、というとそんなことはありません。どんなグラブにするかは、自分がどんな守備をするか、したいかのイメージによって決まります。夢中になってグラブ改良している間、その選手は夢中になって自分の「守備のかたち」を考え、追い求めていた、ということです。
 私は三塁ですから強い打球への対応です。ポケットは深め、グラブの縁の土手の部分はしっかりした、ボールを誘い入れるような形を狙ったものです。新しいグラブをはめてポンポンとポケットを叩いて「長嶋流三塁守備のかたち」に合うよう手を加え、練習で使って、また部分修正。グラブとの共同作業で自分の守備スタイルに合った形を作っていきました。

弱まったように感じられるグラブへの愛着度

弱まったように感じられるグラブへの愛着度

写真:長嶋茂雄氏
 今ではメーカーは各ポジション用に合わせたグラブを作っていますが、私たちの頃は投手と外野手が大きめで、内野手はそれより少し小さめ。そんな程度でしたから、選手たちはそれぞれ自分で工夫したのです。今のプロ選手たちは契約メーカーのグラブ職人に細かい注文を出してオーダーメードなのではないでしょうか。新品のグラブが選手の手に届いたときは、もう形としては完成している。形の修正にそれほど手間をかけず、練習で慣らす時間も短くて済みそうです。それで試合できれいなグラブを使っている選手が増えたのだと想像しています。具合が悪ければ、職人に頼んで調整してもらう。「アウトソーシング」というのですか、すべて外注できちんとやってもらえる時代になりました。
 こだわって自分で手を加える選手もいるでしょうが、少なそうです。
 きれいなグラブを眺めて私はこんなことを思いました。選手のグラブへの愛着度は自分で手塩にかけて馴染ませていった昔の方が強かったような気がします。あまりに便利な時代は、人と道具の関係も薄くしてしまう...と。
 ただ、どんなグラブであっても、素晴らしい守りを達成してこそいいグラブになります。「道具を生かすのは、それを使う人間」、それだけは昔も今も変わりありませんね。

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第48回 使い古した新品グラブと守備の形

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