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月刊長嶋茂雄

  • 2013年11月01日 更新
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第38回 ユニホームへの別れ

第38回
ユニホームへの別れ

 野球シーズンが終了しました。サクラの3月末から始まった試合は7カ月余り続いて、深まった秋の落ち葉の季節にようやくチャンピオン決定、こんな厳しい条件の競技は野球だけでしょう。こうしてユニホームを脱いで12年もたつと、自分でやっていたことなのに「大変なスポーツだな」との感を強くしています。そして、今年も多くの選手たちがユニホームに別れを告げ、そのうちのごく少数の選手たちがメディアで取り上げられました。いずれも長年プレーを続けた選手です。彼らのプレー期間の長さだけでも「伝える価値がある」と記者たちが思うのは、自然のことでしょう。

写真:長嶋茂雄氏

 引退を自分で決め、それを自分の口からファンに伝える記者会見の場を球団に設定してもらえる選手は幸せです。ほとんどの選手が球団から「来季の契約を結ぶ意思はない」と告げられ、ユニホームを脱ぐのですから。

魂は炎で肉体は薪

魂は炎で肉体は薪

写真:長嶋茂雄氏
 私は1974年、38歳で17年間の選手生活に終止符を打ちました。
 ご承知のファンもいるかもしれませんが、実はその前年のシーズン末、5試合を残したところで"引退勧告"を受けました。川上(哲治)監督から「今季でバットを置いて、わしの後(後任監督)を継がないか。君にはもう3割は打てない。通算打率3割もある、引き際だ」と言われたのです。
 おそらく球団の意向もあったのでしょう。私は「もう1年、現役でやらせてください」と頼みました。打率は下がっていましたし、体力の衰えも自覚していましたが、バッティングの奥義のようなものをつかみかけていた思いがあったのです。願いは聞き入れられました。

 不思議なもので、身体が衰えてくると打撃術を突き詰める思いが研ぎ澄まされます。たとえば、相手投手は打者のスイングの衰えを見てとると、容赦なく内角を突いてきますが、その対応策。グリップ・エンド一杯を握って長めに持ったバットを内角に来る投球と同時にバックスイングし、バットが右肩のあたりにきた瞬間に両手を緩め、バットをスッと落として短く持ち替えて鋭いコンパクトなスイングで打ち返す。そんな精緻な技を繰り出したりしていたのです。まだ、やれることはたくさんあるはずだ、と。
 古武道の老名人が3段、4段の大学生と竹刀を持って立ち合って、大学生を身動きできなくさせてしまう、と言う話を聞きます。老武道家の極めた奥義は体力に勝る若い有段者を圧倒するのです。しかし、剣道は短い時間の1対1の戦いですから、老錬の磨き上げた技が若い体力に勝つのですが、野球ではそうはいきません。
 1打席勝ってもまだ3打席は回ってくる。1試合勝っても翌日、そして翌週、また次の月・・・相手投手ばかりではなく、7カ月もの時間にも勝ち続けなければならないのです。そして最後の試合後の挨拶の一節「いまここに体力の限界を知るに至り」となりました。「魂は炎で肉体は薪」と言ったのは誰だったか。ともかく印象に残る言葉です。"燃える男"も燃やすべき薪(肉体)が心細くなっては、バットを置くだけです。

ファンの心に名前を刻んだ

ファンの心に名前を刻んだ

写真:長嶋茂雄氏
 私が尊敬していたヤンキースのジョー・ディマジオは「野球でプレーするのが楽しくなくなったら、それは私にとってもう野球ではない。ジョー・ディマジオのプレーができなくなったと言うことだから」と引退したそうです。
 それぞれの選手の自分らしいプレーのレベルの高低はともかく、ひとかどの選手は皆、自分の「名を惜しんで」ユニホームを脱ぎます。ファンもその心を理解してくれます。守りの宮本慎也(ヤクルト)、打撃の前田智徳(広島)、代打の桧山新次郎(阪神)らの個性派の名が浮かびますが、「御苦労さまでした、君たちは確実にファンの心に名前を刻んだ」とエールを送ります。
 なかでも桧山はよかったなあ。巨人のクライマックスシリーズの相手はどちらか、と甲子園の阪神対広島戦の中継を観ていたら、9回裏代打・桧山が2ランホーマー、現役最後の打席で自分の看板通りの仕事なんて選手の夢。「おい、最高だね」と声をかけたくなったものです。私はショート・ゴロのゲッツーでしたから。

  • 2013年11月01日 更新
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セコム シニアの安全を考える委員会 著 あなたの親は大丈夫?高齢な親を守る安全生活ガイド

第38回 ユニフォームへの別れ

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長嶋茂雄さん 看板豆知識・伝説・語録

 歴代のセコムオリジナル長嶋茂雄さんの看板(ビッグボード)と、それにまつわる豆知識のご紹介や、1957年に通算8本塁打で東京六大学リーグ本塁打の新記録を達成してから現在にいたるまでの、長嶋茂雄さんの伝説「NAGASHIMA Living Legend」と、数々の名言を世の中に送りだしてきた長嶋茂雄さんの名言「伝説の長嶋茂雄“語録”」をご紹介します。

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