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第18回
震災から約1年。ファンの心に元気を起こすスポーツ選手とは
東日本大震災から1年を迎えます。しかし、まるで昨日のことのようです。
一生に一度経験するかどうかの強烈な体験でした。いまもただ瓦礫だけが延々と続いている海辺の町の映像を見せられると、復興は進んでいるのか、とやきもきしないではいられません。
私たちは心に大きな傷を負ってしまったように感じます。こんな時に人々の心に明るい灯をともし、背中をポンと押してくれるのがスポーツでしょう。
前にもお話しましたが、昨年の女子ワールドカップの「なでしこジャパン」の大活躍がどれだけ日本を元気づけたことか。スポーツの効用、存在意義はこれに尽きる、と断言したいところです。
もっともプレーする選手がいつも「ファンに元気を与えるため」とプレーしているわけではありません。プロ野球選手ならば、自分が納得できるプレーをして日々の仕事を達成することに集中していればいいのです。そうすれば、仕事の出来がよいと、選手がファンを意識していなくとも、それを観てくれたファンの心に元気を起こす火種を残せるのです。

ジョー・ディマジオが「元気の火種」
私は、選手時代「今日だけ長嶋のプレーを観に来るファンもいるはずだから、そんなファンの印象に残るプレーを」と心がけていました。前向きな性格もありますが、見せびらかし、オーバーアクション、やり過ぎ、と評されたプレーには、そんな思いも込めていたつもりです。
同じ気持ちでプレーしていた大リーガーにジョー・ディマジオがいました。私の現役生活より10年ほど"先輩"のヤンキースの名外野手、日本でもある年齢以上の人たちには女優のマリリン・モンローと結婚していた選手として記憶されているかもしれません。彼の56試合連続安打は大リーグのアンタッチャブル・レコードです。「一度しか観にこられないファンのために」と職業病の踵の故障(骨棘=こつきょく=激しい運動での骨の変形)の激痛を押してプレーを続けたのです。
「今日はちょっと身体のキレが」とか「どうも気力が湧かない」と心の隅でささやきが聞こえてくるとき、ディマジオの名前がひょいと浮かんでくるのです。それで「よし、いくぞ」となる。"元気の火種"というわけです。
選手時代だったか、監督になってからだったか、記者たちを相手にこの話をしたことがあります。すると『老人と海』の主人公の老人と同じですね、と言われました。ノーベル賞作家のアーネスト・ヘミングウェイの中篇小説が『老人と海』。
84日もの間不漁が続いたキューバの老漁夫が、自分の小舟と同じほどの巨大なカジキマグロをかける。四日間の孤独な戦いの末に老人は大物を仕留め、舟にくくりつけて帰途に就くが、獲物はサメの群れに襲われ、骨だけになってしまう。そんな老人の敗北の、けれども闘志を失わない人間の気高い姿を描いた物語です。
巨大なカジキマグロとそれに続くサメの群れとの不眠不休の戦いの中で老人が思うのは「踵の痛みに耐えて戦い続けたディマジオ」の姿です。ディマジオが不屈の勇気への象徴となっています。

最高のパフォーマンスで人々に明るい光を
ヘミングウェイがディマジオを老人のヒーローに選んだのは、すべての読者に納得させる存在感をディマジオがプレーで築き上げていたのに眼を付けたからに違いありません。スポーツ選手の真摯な姿がファンに"勇気の糧"、"元気の火種"になることを教えられます。野球人として、嬉しくなる挿話です。
さて。そこで、閉塞状況の中で光を待つ人たちへの贈り物を生みだすことができるスポーツ選手ですが、大震災後の一年はもっぱら「なでしこジャパン」が主役でした。今年はオリンピック・イヤーです。7月のロンドンは「なでしこ」はもちろん、多くの競技選手がそれぞれ最高のパフォーマンスを達成することで人々に明るい灯をともすチャンスに恵まれるわけです。
我らが野球にはオリンピックの舞台はありませんが7ヶ月間のペナントレースがあります。日々勇気を届けられる機会はどの競技よりも多いのです。おろそかなプレーは1球、1打にも許されません。
第18回 震災から約1年。ファンの心に元気を起こすスポーツ選手とは
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