カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?クレームとの違いや具体事例・対応・法律を解説!

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
クレームとの違いや具体事例・対応・法律を解説!

更新日:2025年7月24日

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近年、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます)への関心が高まっており、
2025年6月4日には、カスハラ対策を雇用主に義務付ける労働施策総合推進法※1などの改正法が国会にて可決されました。
この記事では、企業が今取り組むべき対応策や、クレームとの違い、具体事例、法的リスクまでを網羅的に解説します。
事前にしっかりとした対策を講じることで、従業員の安全・安心を守るだけでなく、企業の信頼性やイメージ向上にもつながります。

1:正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」

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カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、カスハラとは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」※2としています。
これらは単なるクレームとは異なり、従業員に精神的・身体的な負担を与え、業務の妨げとなるため、企業には防止策や対応体制の整備が求められています。

2:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

カスタマーハラスメント(カスハラ)の具体事例

実際にあった事例を厚生労働省の「カスタマーハラスメント事例集」からご紹介します。

  • 情報通信業
    顧客が(サポートデスクに)「徹夜で明日までにバグを開発チームと直せ」「2000万払え」といった過剰な要求を行った。
  • 運送業
    運転見合わせ時に、お詫び放送を繰り返していたところ、旅客から「いつ出発するのか放送しろ」としつこく詰問を受けた。
    運転再開見込みが分からない旨を伝えたが、旅客は納得せずスマホで車掌の対応を無断で動画撮影した。
  • 宿泊業
    顧客が宿泊のたびに清掃不備を指摘し、客室のグレードアップや顧客の前で清掃することを要求した。
  • 医療、福祉
    利用者が看護師をたたく、つねる、唾を吐く、看護師にものを投げる、看護師に必要な物品を破損する等していた。

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント事例集

最近カスタマーハラスメント(カスハラ)が増加している背景

近年、カスハラが増加している背景にはさまざまな要因がありますが、SNSの普及により、苦情や不満が即座に発信・拡散できる環境が整ったことで、従来は潜在的に行われていたハラスメントが可視化され、社会的な問題として表面化したことが一因と考えられます。

企業がカスタマーハラスメント(カスハラ)を対策すべき理由

適切なカスハラ対策がされていないと、従業員に精神的・身体的な負担を与え離職などに繋がります。また、社会的信用の低下や炎上リスクも考えられます。
SNS等での情報拡散により、対応の不備が広く知られることで企業イメージが損なわれ、取引先からの信頼喪失にもつながる恐れがあります。こうしたリスクを回避し、従業員の安全・安心な労働環境を守るためにも企業はカスハラ対策を講じる必要があります。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とクレームの違いは?

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カスハラとクレームの違いは、要求内容の妥当性とそれを実現するための手段・態様が社会通念上適切かどうかにあると言われています。
クレームは、商品やサービスに対する正当な不満や改善要求であり、企業にとって貴重なフィードバックです。
一方、カスハラは妥当性を欠いた過剰な要求や、暴言・威圧など社会通念上不相当な手段によって従業員を攻撃し、就業環境を害する行為を指します。
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」より判断基準の例についてご紹介します。

要求内容が妥当性を欠く場合の例

  • 企業の提供する商品・サービスに欠陥・過失が認められない場合
  • 要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合

要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動の例

  • 身体的な攻撃(暴力、傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 持続的な、執拗な言動
  • 拘束的な行動
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃、要求

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

カスタマーハラスメント(カスハラ)に対して企業が行うべき対策

企業が直面するカスハラへの対策と、従業員を守るための取り組みを解説します。

緊急時に通報できる体制の整備

納品先や見込み先など、取引先を訪問した際にもカスハラは発生します。外出先でのハラスメント対策として、持ち歩ける防犯機器・通報装置を持つことで安心して訪問することができます。「ココセコム」はボタン操作のワンアクションで通報信号を送信でき、あらかじめ指定された緊急連絡先にセコムから電話でご連絡します。オペレーションセンターからの連絡はオプション選択により「ココセコム」本体へ連絡することも可能です。

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対応マニュアルの作成

カスハラへの適切な対応を従業員が行うためには、明確な対応マニュアルの整備が不可欠です。マニュアルには、ハラスメント行為の種類、初期対応の手順、記録の取り方、上司や専門部署への報告・相談の流れなどのさまざまなパターンをあらかじめ想定して作成する必要があります。さらに、マニュアルは一度作成して終わりではなく、定期的な見直しを行い社会的な傾向を踏まえた内容にすることが大切です。

基本方針・基本姿勢の明確化

カスハラに対して企業の基本方針や基本姿勢を明確にしておくことが重要です。顧客対応について企業の立場を明文化し社内外に発信することで、組織としての一貫した対応が可能になります。基本方針は、経営層のメッセージとして示すことで、従業員の安心感と信頼を高める効果もあります。

カスタマーハラスメント(カスハラ)対応について従業員等への教育・研修

企業としての基本方針・基本姿勢や対応マニュアルの内容を全従業員に周知することで、カスハラに直面した際にも、落ち着いて適切な対応が可能になります。研修では、ハラスメント行為と通常のクレームとの違いを明確にし、ケーススタディや過去の実例・経験を共有することで、実践的かつ効果的な学びが得られます。また、初期対応者や相談対応者など、役割に応じた階層別の教育・研修を実施することで、より深い理解と対応力の向上が期待できます。

カスタマーハラスメント(カスハラ)が発生した際に対応すべきこと

カスハラを受けた際の対応方法について、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を基にハラスメント行為別にご紹介します。

時間拘束型

長時間にわたり、顧客等が従業員を拘束する。居座りをする、長時間、電話を続ける。

【対応例】
対応できない理由を説明し、応じられない事を明確に告げる等の対応を行った後、膠着状態に至ってから一定時間を超える場合、お引き取りを願う、または電話を切る。複数回電話がかかってくる場合には、あらかじめ対応できる時間を伝えて、それ以上に長い対応はしない。現場対応においては、顧客等が帰らない場合は、毅然とした態度で退去を求める。状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報を検討する。

リピート型

理不尽な要望について、繰り返し電話で問い合わせをする、または面会を求めてくる。

【対応例】
連絡先を取得し、繰り返し不合理な問い合わせがくれば注意し、次回は対応できない旨を伝える。それでも繰り返し連絡が来る場合、リスト化して通話内容を記録し、窓口を一本化して、今後同様の問い合わせを止めるように伝えて毅然と対応する。状況に応じて、弁護士や警察への相談などを検討する。

暴言型

大きな怒鳴り声をあげる、「馬鹿」といった侮辱的発言、人格の否定や名誉を毀損する発言をする。

【対応例】
大声を張り上げる行為は、周囲の迷惑となるため、やめるように求める。侮辱的な発言や名誉毀損、人格を否定する発言に関しては、後で事実確認ができるよう録音し、程度がひどい場合には退去を求める。

暴力型

殴る、蹴る、たたく、物を投げつける、わざとぶつかってくる等の行為を行う。

【対応例】
行為者から危害が加えられないよう一定の距離を保つ等、対応者の安全確保を優先する。また、警備員等と連携を取りながら、複数名で対応し、直ちに警察に通報する。

威嚇・脅迫型

「殺されたいのか」といった脅迫的な発言をする、反社会的勢力とのつながりをほのめかす、異常に接近する等といった、従業員を怖がらせるような行為をとる。または、「対応しなければ株主総会で糾弾する」、「SNSにあげる、口コミで悪く評価する」等とブランドイメージを下げるような脅しをかける。

【対応例】
複数名で対応し、警備員等と連携を取りながら対応者の安全確保を優先する。また、状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。ブランドイメージを下げるような脅しをかける発言を受けた場合にも毅然と対応し、退去を求める

権威型

正当な理由なく、権威を振りかざし要求を通そうとする、お断りをしても執拗に特別扱いを要求する。または、文書等での謝罪や土下座を要求する。

【対応例】
不要な発言はせず、対応を上位者と交代する。要求には応じない。

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

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訴えることは可能?カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する法律・条例

ここ数年、カスハラへの関心が高まっており、注目度が上がっています。そのような背景からカスハラに関連する法律や条例についてご紹介します。

カスタマーハラスメント(カスハラ)を規制する法律

カスハラそのものを直接的に禁止する法律は現時点では無いものの、カスハラ行為の内容によっては該当する場合もあります。
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」には以下条文がカスハラと関連性があると記載されています。

【傷害罪】
刑法204条
人の身体を傷害したものは、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
【暴行罪】
刑法208条
暴行を加えたものが人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
【脅迫罪】
刑法222条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2 年以下の懲役又は 30 万円以下の罰金に処する。
【強要罪】
刑法223条
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3 年以下の懲役に処する。
【名誉棄損罪】
刑法230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3 年以下の懲役若しくは禁固又は 50 万円以下の罰金に処する。
【侮辱罪】
刑法231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は過料に処する。

カスタマーハラスメント(カスハラ)を規制する条例

東京都はカスハラに関する「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を2025年4月1日から施行しました。
条例でのカスハラの定義は「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい行為であって、就業環境を害するもの」としています。
本条例に違反した場合でも罰則はありません。東京都の条例に対するQ&Aによると、罰則を設ける場合は刑罰の対象となる行為を厳格に定める必要があり、その結果、禁止されていない行為はしても良いとの理解が広がる懸念から罰則を設けず、防止の啓発に重点を置いた条例としています。

出典:東京都

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例 | 計画 | TOKYOはたらくネット

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例 Q&A

まとめ

ここまでカスハラとは?から企業のすべき対策までご紹介しました。2025年6月4日に法改正が可決され、企業のカスハラ対策は無視できない課題となっています。
企業としてカスハラにどう向き合い対策を行うのか検討することで、従業員の「安全・安心」が守られます。
セコムでは訪問先・外出時のカスハラ対策としてワンアクションでセコムに通報できる「ココセコム」を提供しています。
GPS端末なので通報した場所も確認でき、お客さまからのご要請によりセコムがカスハラ現場へ同行します。

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【執筆】セコム株式会社

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