介護と仕事を両立するコツと心の保ち方
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
親御さんやパートナーの介護をしながら、仕事を続ける。
とても大変なことで、両立するのは簡単なことではないと思います。
時間どおりに物事が進まない、自分のことができない、ゆっくり眠れないなど、ストレスも増えることでしょう。
仕事をしながら介護をしている人は、精神的にも肉体的にも追い詰められてしまうケースが少なくありません。
介護離職も深刻な問題になっていますが、仕事をやめれば経済的な負担があらたなストレスになることもあります。
仕事と介護。
バランス良く両立していくことは、本当にできるのでしょうか。
今回は、実際に長年仕事と介護を続けてきた方のエピソードも参考にしながら、在宅介護を無理なく続けるコツやピンチの乗り越え方、そして仕事と介護の両立に役立つ考え方などをまとめます。
● 在宅介護の現場でよくある困りごとにどう対応するか
仕事をしながら介護を続けている方は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを組み合わせて、仕事で不在の時間を埋めることが多いと思います。
ところが、昨今は訪問介護事業所の人手不足などの問題もあり、「来てほしい日にヘルパーさんの都合がつかない」という事態が起こることも否定できません。
また、デイサービスでも送迎車の都合がつかない、インフルエンザが出て施設が休みに...といったことがまれにあります。
在宅介護の現場では、こうしたイレギュラーな非常事態がときどきあるものです。
働いている方にとっては大変困ることで、「やっぱり仕事を続けていくのは難しいのではないか...」という心情になるのもわかります。
しかし、仕事をしていても、していなくても、介護に"イレギュラー"はつきもの。
予定どおりに物事が進まなくても、状況に応じて対応を変える。
在宅介護には、そんなスキルが少なからず必要だと思います。
「ヘルパーさんが来られない」「デイサービスに行けない」など、仕事の時間帯に介護してもらうことができない非常事態が起きた場合は、まずケアマネジャーを頼りましょう。
ほかの事業所を探す、代替サービスを考えるなど、ピンチを乗り切るための手段を提案してくれます。
ケアマネジャーは「なんとかする」方法をいろいろと知っています。
普段からコミュニケーションを密にとって家庭の事情などを話しておきましょう。
以前、ショートステイの利用方法などを話してくれたセコムシニア倶楽部 鎌倉の管理者、下城睦さんは、長年母親の介護をしながら仕事を続けてきたひとり。
5人の子どもの子育ても同時にしてきた母でもあります。
下城さんによると、どうしても代わりのヘルパーが見つからずに困ったことも、一度や二度ではないそう。
そんなときは、昼間ヘルパーさんにお願いすることを出社前にできるだけ終わらせ、おむつを厚めのものを当てるなどして、訪問介護を1回パスしても乗り切れる工夫をしていたそうです。
また、デイサービスを利用できないときは、日中の訪問介護で体を拭く介助を入れてもらうなどの工夫も。
ケアマネジャーに相談して介護プランを変更してもらえば、いつもはお願いしていない介助に対応してもらうことも可能です。
困ったことが起きたら、「どうしよう...」ではなく、「どうしたら乗り越えられるか」と気持ちを切り替えることが大事なのだと思います。
●好きなこと、楽しい時間を、意識して持つ
以前、「介護がつらい...」とならないためのプロからのアドバイスというテーマで、在宅介護を続けていくためには、「睡眠時間」と「介護から離れる時間」が大切だと紹介しました。
仕事は「介護から離れる時間」でもあり、社会人としての責任が自分のアイデンティティを保つことにつながります。
けれども、仕事だけでは心は満たされません。
自分のためだけに使う時間、自分に戻れる時間が絶対に必要だと思います。
時を忘れて没頭できる趣味や楽しみがあれば、ぜひ大切にしてください。
「そんな時間はない」とおっしゃる方もいるかもしれませんし、病人や年寄りをおいて自分だけ遊ぶのも気が引けるという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、わずかでも自分だけのために使える時間を、今の生活のなかで見つけましょう。
通勤時間に本を読んだり、家族が起きる前にウオーキングをしたり、職場でおいしいランチを食べに行ったり、たまにはコンサートにでかけたり...楽しみは人それぞれです。
忙しすぎる毎日を過ごしていると、自分を見失ってしまいます。
自分ばかりが犠牲を払っているようで、介護がつらくなってくる。
仕事と介護の両方をがんばっていたら、そのようなこともあると思います。
だからこそ、好きなこと、楽しい時間を、意識して持つことが大事。
何をしているときに幸せを感じるのか、自分自身に聞いてみてください。
まずは自分を大事にすることが家族を大事にすることに繋がります。
そのための時間を死守しつつ生活リズムをつくると、仕事と介護の毎日にメリハリができます。
下城さんは、仕事から帰ってシャワーを浴び、一杯飲みながら家事をするのが、何よりの楽しみだそう。
家族とおしゃべりしながら料理をつくっていると、気持ちがリセットされると言います。
料理好きな彼女ですが、時間的にできる家事が限られているので「やりたいことしかやらない」と決めているそう。
ほかの家事は家族で分担。
働きながら介護する母を助ける家族の生活リズムができているようです。
ご自身で「やること」「やらないこと」の取捨選択をすることも、介護と仕事の両立をするうえではかかせないことです。
すべてを100%こなすことは、誰にもできません。
介護や家事では、多少手を抜くところ、後回しにしても良いことなど、一度整理してみてはいかがでしょうか。介護は赤点スレスレで良い、を思い出してみてください。
もちろん命や健康に関わることは手抜きができませんが、冷静に考えてみると、一度サボったくらいで命や健康に直結することはそれほど多くないものです。
「これだけは譲れない」というものを大切にして、あとは「ほどほど」。
介護と仕事を両立するなら、これくらいのバランスがちょうど良いのかもしれませんね。
● もうがんばれない...仕事と介護で困難に直面したときは?
仕事と介護、2つの役割を責任持ってまっとうするのは、本当に大変なことだと思います。
悩みや困難を抱えながら、「これ以上がんばれない」というくらい追い詰められた気持ちになっている方も少なくないでしょう。
下城さんは、仕事や介護で困ったことが起きたときは、思い悩まず体を動かすそうです。
精神的に落ち込んでいると悪い方ばかりに考えてしまうので、とりあえず今できることをなんでもいいからやってみる。
動いているうちに、視点が変わって違う解決方法を思いついたり、気分が落ち着いて冷静になったりできるのだとか。
もしも『これ以上は無理!』と思うなら、それを外に向かって発言してください。
必ず助けてくれる人がいます。
介護のことは、ケアマネジャーやヘルパーなど介護関係者に。
仕事のことは、会社の上司や同僚に。
ケアマネジャーは、いろいろな利用者を知っていますし、介護の愚痴も不満も受け止めてくれます。問題を解決する方法も一緒に考えてくれるはずです。
会社でも、昨今は介護離職を防ぐために、時短勤務や時間有休の制度等、働く社員とそれを支えている家族の支援にも積極的に手を差し伸べる制度が整えられるようになってきました。会社や職場から発信される働き方関連の情報は常にキャッチしていましょう。
何かしらのサポートが得られるのではないでしょうか。
どんな介護でも、喜びや楽しみは必ずあります。
介護される方の笑顔だったり、ちょっとした言葉だったり。
困難な介護状況でも、小さな幸せは必ずどこかに散りばめられています。
大事なのはそれに気づくことができるかどうかです。
仕事で忙しくても、幸せを見落とさないように、おおらかに介護の日々と向き合いたいですね。
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