認知症介護にポジティブプランの考え方を
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。介護における「ポジティブプラン」とは、「できること」「やろうとしていること」に着目して必要なケアプランを考える取り組みです。
従来のケアプランのように「できないこと」や「困っていること」を支えるというアプローチとは異なります。
介護専門職の間で広まりましたが、家庭で介護を担う介護家族にこそ、知ってほしい考え方です。
ポジティブプランの考え方が介護を前向きにしてくれます。
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● 失敗や喪失より「意欲」に目を向けてみる
認知症介護では「どうしてできないの?」[どうしてそんなことをしようとするの?]と思うことが多々あります。
でもそんな「できないこと」にこそ、本人の「できること」や「やろうとしていること」が隠されているものです。「もともと好きだったこと」や「自分が果たすべき役割」に対する思いがあらわれることもあります。
たとえば庭の手入れ。
足もおぼつかないのに、日に何度も庭に出て水やりをしようとする。
植物を大切にしていた人なら、それは変わらないそのひとの生活であり、「その人らしさ」です。
手順や頻度が変わっても、「やりたい」という気持ちは残っています。
行動の奥にある意図や感覚に目を向けてみると、すっかり変わってしまったように見える認知症の方のなかにも、本人らしさが残っていることがきっと感じられます。
たとえば着替え。
手が止まり、なかなか着替えが終わりません。
でも本人は、ボタンを一生懸命とめようとしている。
着替えに時間がかかっていても、なんとか着替えようとする気持ちがそこにはあります。
また、ひとり暮らしなのに、毎日5合のご飯を炊いてしまう方もいました。
お米も安くないのに、まわりのご家族にとってはやっかいな問題です。
でも、本人の中に今でもご家族のために、ご飯を準備するという思いやりと行動力があるといえます。
私たちにできることは「待つこと」です。
何かをやってみようとする気持ち、かつての自分の役割につながる行動は、認知症があってもなお、意欲や生きがいにつながる大切な要素といえます。
「できたかどうか」ではなく、「やりたいこと」「どうしてやろうとしたのか」に目を向けましょう。
そうしてみると気持ちがやわらぎ、認知症の方との接し方が変わるはずです。
● 「ポジティブプラン」は支える人の心を守る介護の知恵
「支える人」の心を守ることはとても大切な視点です。
ポジティブプランの考え方を応用すれば、心に少しの余裕ができます。
やろうとしていること、やりたいことに目を向けることで、「こんなことがまだできた」「今日は少し違った」という発見が増えていきます。
それは、小さな喜びとして介護を前向きにしてくれるはずです。
完璧でなくても良いではありませんか。
やろうとしたこと、やりたいことに目を向けてあげましょう。
ポジティブプランの考え方が支える人自身のためにもなります。
●「放っておく勇気」を持つということ
必要以上に手を出さず待つ、見守る。
介護現場ではそれも立派な支援とされています。
「失敗しそうだから」と先回りするのではなく、「失敗してもいいし、もしかしたら、できるかもしれない」と信じて、ちょっとだけ待ってみる。
たとえうまくいかなくても、「やろうとする気持ち」を尊重してあげられると、本人の「自分でやりたい」という気持ちはしぼまずに残ります。
目の前の出来事だけに反応して、その対応に振りまわされてしまうと、どうしても疲れてしまうものです。
「本人がやろうとしていることを、できるように支える」という、シンプルなかかわり方を意識してみてください。
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認知症介護では「どうしてこんなことに...」と悲しく、やっていられない気分になる時も多いはず。
それでも「できたこと」や「やろうとしたこと」に目を向けていれば、関係も気持ちも上向くはずです。
本人に残った力を信じてポジティブなケアを見つけていってください。
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