「がんばること」に疲れないために
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
今年も、残すところあと数日。
この1年を振り返ってみて、皆さんの在宅介護生活はいかがだったでしょうか。
在宅介護では、思うままにならないことも多いものです。
「本人のため」と思ってやったことを拒否されたり、否定的な言葉を返されたりすることもあります。
認知症の方ですと、「あんたなんか大嫌い」「もう帰れ」などストレートな言葉で怒りをぶつけてくることもあります。
相手にもいろいろな感情や考え方があり、思い通りの反応が返ってこないことがあるのは当然です。
けれども、懸命に介護にあたっている側としては、自分を否定されたようでやりきれませんよね。
元気なときの人となりが記憶されているだけに、要介護になってからの変化をうまく受け入れられないこともあるでしょう。
こうした悲しみ、悔しさを感じているのは、あなただけではありません。
今回は、介護をしている方ががんばることに疲れすぎないためのアドバイス。
「相手に気持ちが伝わらない」「介護に疲れてしまった...」というときの参考になれば幸いです。
● 「大嫌い」はあなたに向けられた言葉ではありません
認知症の方の在宅介護ではさまざまな大変さがありますが、心が通じないことが何よりも介護する方を疲弊させます。
何もかも否定するような、憎しみのこもった言葉をぶつけられたら、いくら「相手は認知症だから」と頭でわかっていても、心は受け止めきれるものではありません。
思わず感情的に対応してしまい、後悔する...こんなことを繰り返しているうちに、すっかり疲れ果ててしまったご家族もたくさんいらっしゃるでしょう。
ひとつだけお伝えしたいのは、認知症の方の拒絶や否定の言葉は、介護する方に向けて発せられたものではないということです。
ケアに対して、「いまはそれをやりたくない」という気持ちのあらわれだったり、「何をされるのかわからない」という恐怖心だったり、いろいろな意味が込められています。
あなた自身への否定ではなく、いま自分が置かれている状況やケアが「嫌だ」という意味なのです。
認知症や高齢により弱った方は、自分が置かれている状況を理解して「何をするべきか」を判断できず、怒りや憎しみに転嫁されてしまうことがあります。
また、「こういう理由でこうしたくない、こうされたくない」ということを頭の中で整理して相手に伝えることもできなくなり、感情が先走った言動をとるようになってしまうのです。
身近な人ほど感情が向かう対象になりやすいと言えます。
認知症の方は、介護する方を映す鏡です。
怒りの感情に怒りで対応すれば、お互いにそれがどんどん増幅してしまうもの。
「自分に向けられた言葉ではない」ということを思い出して、あなた自身の心がすり減ってしまうのをなんとか食い止めてください。
● 気持ちをリセットしましょう
「認知症の方を怒ってはいけない」と言われています。
けれども、献身的にケアしているのにひどい言葉を浴びせられていたら、自分の感情を押しとどめておくことなんて、誰にもできません。
ときには、感情のままに対応してしまっても、仕方がないと思います。
あなただけではなく、誰もがそのようにしてしまうでしょう。
大切なのは、深刻になりすぎないこと。
ネガティブなコミュニケーションを連続させないためには、気持ちの切り替えが必要です。
「自分だけではない」「仕方がないときもある」と言い聞かせ、終わったことには自分なりに折り合いをつけていきましょう。
介護から離れる時間をなるべくつくって、がんばっている自分にご褒美をあげることも必要です。
「自分だけ申し訳ない」とか「いまごろどうしているだろう」などと考えないこと。
あなただけのための時間は、在宅介護を良い形で継続させるために絶対に必要なものです。
介護だけにすべてをささげる必要はありません。
大丈夫。
どんな介護でも、喜びや楽しみを見つけることはきっとできます。
過ぎたことを思い悩まず、新しい一日をまたはじめましょう。
● 相談できる人、なんでも話せる人を見つけましょう
「家族」という閉鎖的な関係の中だけで完結しようとすると、在宅介護はいつか行き詰まります。
誰にも相談することができず、介護される方を傷つけてしまうなど、不幸な介護も見てきました。
他人に話したり、助けを求めたりするのは恥ずかしいことだと考える方も、少なからずいます。
しかし、どんなに優秀な人でも、要介護状態の方の生活のすべてを、ひとりで面倒を見ることは難しいものです。
困ったこと、悩んでいることがあれば、思い切って誰かに相談してみてください。
親しい友人でも良いですが、在宅介護サービスをうまく利用するのもおすすめ。
ご家庭の事情を聞くことができれば、介護スタッフもサポートしやすくなります。
愚痴でも文句でも、話すことで解決の糸口を見つけられる場合もあります。
ケアマネジャー、訪問介護スタッフ、訪問看護師、リハビリ職...在宅介護で関わるスタッフはさまざまですが、ひとつの「チーム」です。共有できる情報が多いほど「チーム」は強く結束します。
なにより、自分の悩みをわかってくれる人がいれば、気持ちがきっと軽くなります。
第三者と話すことで客観的に見たり、考えたりするきっかけになることもあります。
在宅介護は、思い描いたとおりにならないことも多いですし、迷ったり悩んだりすることの連続です。ときにはご自分を責めてしまうこともあるでしょう。
けれども、100点満点ではなくても良いのです。
たとえ赤点ギリギリでも、今日まで続けてこられたことのほうがずっと素晴らしいことです。
今年も、「在宅介護」という大変な仕事を担ってきた皆さん。本当にお疲れ様でした。
あなたのしてきた「介護」を、どうか否定しないでください。
明日から、来年からの介護生活を、"がんばりすぎずに"続けていけるよう、応援しています。
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