認知症の「2つの空白」とは?
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。「最近、物忘れが増えた気がする」
「あれ、いつもと違うかも」
そんなふとした違和感が、認知症のはじまりだったというケースは少なくありません。
今回は、認知症の早期発見・早期対応を阻むと言われる「2つの空白」について紹介します。
認知症の方にとっても、支える家族にとっても、必要な"つながり"を、どこでどう結べば良いのか。
そのヒントになれば幸いです。
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● 認知症における「2つの空白」とは?
認知症の人とその家族が直面しやすい"空白の時間"。
それが「2つの空白」と呼ばれるものです。
【1つ目の空白】は、本人や家族が異変に気づいてから、医療機関にかかるまでの期間。
【2つ目の空白】は、認知症と診断されてから、介護サービスや地域の支援につながるまでの期間。
この2つの空白が長くなることは、症状の進行や家族の負担の増加にもつながります。
本人にとっても、認知症初期は自分の変化への戸惑いが大きいものです。
記憶が抜け落ちていく感覚、人との会話や社会に適応できなくなっていく恐怖。
こうした感情は、大きなストレスであり、自信や尊厳を傷つけるものでもあります。
認知症を進行させないためにも、なるべく早く、穏やかに過ごせる環境に身を置けるようにすることが大切なのです。
● 早期受診と支援へのつながりが、家族と本人を守る
「もう少し様子を見よう」
「年齢のせいかも」
そんなふうに受診が先延ばしになってしまうのは、よくあること。
しかし、早期に医療につなぐことで、病気の進行を緩やかにしたり、適切なサポート体制を整えたりすることができます。
あまり重く考え過ぎず「いざというときに備えて、いろいろ話を聞いてみる」くらいの気持ちで、かかりつけ医に相談してみるだけでも、一歩前進です。
認知症の診断には、神経内科や老年内科、精神科、物忘れ外来などの医療機関を受診することになります。まずはかかりつけ医に相談し、紹介を受けるのが一般的です。
無理に受診を迫るのではなく、「ちょっと心配だから、一緒に話を聞きに行ってみようか」などと穏やかに声をかけてみてください。
診断後は、介護サービスの検討もはじめましょう。
地域包括支援センターに相談すれば、要介護認定の申請など、今後の助言を受けることができます。ケアマネジャーや地域の支援機関ともつながります。
家族だけで抱え込まずにチームでかかわることが大切。
今、支援は必要ないと思うかもしれません。
でも、必要な時に適切な支援を早く受けられると、本人の不安や混乱がやわらぐだけでなく、家族の負担も軽くなります。
そのためにも早めに地域の専門家とつながっておくとよいでしょう。
●社会全体が「受け止めてくれる場所」に
認知症基本法が目指しているのは、まさにこの「空白」を埋める社会づくりです。
認知症であることを恐れず、すぐに適切な支援を受けること。
認知症になっても、本人が尊重され、地域で孤立することなく安心して暮らし続けられること。
そのためには、社会全体が認知症への理解を深め、「支える側」になることが求められています。
家族が「ひとごと」ではなく「じぶんごと」として、普段から認知症について理解を深めておくことも、いざというときの空白を短縮する大きな備えになるはずです。
高齢の親に異変を感じたとき、あるいは自分自身が年齢を重ねていくなかで、あらかじめ知っておくことが、いざというときの判断を助けてくれます。
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認知症と診断されても、決して慌てる必要はありません。
誰もがなる可能性があるからこそ、当たり前に受け入れられる社会づくりが進んでいるのです。
まずは、自分にできることから。
不安な気持ちをそのままにせず、早めに誰かに相談することが、よりよい未来への一歩につながるはずです。
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