セコム・ホームセキュリティ
個人向けサービス・商品一覧
防犯商品
防火商品
防災商品
企業情報
その他
超高齢社会となり、認知症患者数も増加傾向にある今、認知症のご家族を見守ることは、他人事ではなくなってきています。しかし、認知症の症状は非常に多様で、専門的な知識をお持ちでない方には理解が難しく、いざ介護に直面すると戸惑うこともしばしば。認知症について知り、「もし認知症になったご家族を介護することになったら」という心の準備をしておくと、いざ見守るというときに必ず役に立ちます。
今回は、セコムの介護応援コンテンツ「あんしん介護のススメ」のモデレーターであるセコム医療システムの武石が、認知症になった家族を見守る立場として大切なポイントをお伝えします。
認知症の諸症状は、普通では考えられない行動としてあらわれることが多く、簡単なことが解らなくなったり、できなくなったりします。以前のきちんとした暮らしぶりを知っているご家族なら、「どうして?!」と理解できないかもしれません。しかし、それこそが認知症というものなのです。
ご家族としてできることは、ちょっとした"異変"を見逃さず、ありのまま受け止めてできるだけ冷静に対応を考えることです。
認知症によって引き起こされるさまざまな症状に共通しているのが「認知機能障害」です。「認知機能障害」は以下の4つに大きく分けられます。
① 「記憶障害」
物事を覚え、脳の中で整理して取っておき、必要な時に取り出すことができなくなります。単なる「物忘れ」とは区別されます。認知症では、昔のこと【長期記憶】は保持されやすく、最近のこと【短期記憶】が障害されやすいといわれ、新しいことが覚えられなくなります。
② 「見当識障害」
「いつ・どこで・誰が」ということが分からなくなります。例えば、今の季節が分からなくなることで、真夏なのにセーターを重ね着したり、場所が分からなくなることで、家にいるのに「うちに帰る」と訴えたりします。部屋の隅に放尿するというのも、おそらく「トイレ」がわからなくなる見当識障害でしょう。時間、場所、人の順で障害されることが多く、最後は人の認識もできなくなります。
③ 「判断力、問題解決能力の低下、実行機能障害」
ちょっとしたことも正しく判断できなくなり、計画的に段取りを踏んで行動することができなくなります。料理ができなくなる、必要なものを買い揃えられない、リモコンや電子レンジといった電化製品や湯沸し器が使えなくなったりします。
④ 「失語・失行・失認」
たとえば、お皿の上のものが食べ物だと分からなくなるのが「失認」、食べ方、食べるという行為がわからなくなるのが「失行」です。一見、遊び食べのようにみえますが認知症の症状です。他にも歯ブラシを「歯を磨く道具」と認識して正しく使うこと、トイレに行ってズボンと下着をおろし、排せつすることなどの簡単な日常生活動作が障害されます。
信じられないような事態に誰よりも傷ついているのは、他でもないご本人です。自覚しない不安や焦燥感、いらだち、喪失感に苦しんでいるはずです。認知症なので、上手く整理して言葉にすることはできませんが、心の奥底に多くの感情を抱えているのです。
認知症の方は暮らしの中で「わからない」ことが増えていくことですから、考えても答えが出ず、どうすることもできなくて途方にくれているはずです。
自分に何が起きているかわからないまま、不安と混乱のなかに身を置いているような状況で、自信を失い、ショックをうけていることでしょう。なかには、失敗を隠そうとしたり、失敗を指摘されると攻撃的に怒りだしたりする方もいますし、抑うつ的になる方もいます。人のせいにして、自分の心を守ろうとする方もいます。
考えてもわからない、聞いても忘れてしまうということが増えていくのが認知症です。
長年親しんできた場所も人も、記憶から少しずつ失われていくため、まったく知らない場所で、知らない人に囲まれているような心もとなさを感じていることがあります。転校の初日や、会社に入社したばかりのことを想像すると、認知症の方の気持ちが少しわかります。緊張してストレスを感じますし、どう振る舞って良いのかわからず、身の置き所がない思いがするでしょう。言いたいことがあってもうまく表現できないので、言葉が通じない外国にひとりで置かれたような心細さに近いものがあるでしょう。「早く帰りたい」「ここではない場所に行きたい」と考えても不思議ではありません。
認知症の方の不可解な行動や困った行動には、必ずご本人なりの理由があります。
たとえば、徘徊(はいかい)。きっかけは、判断力の低下や場所や時間の混乱など中核症状によるものです。何かとても気がかりなことがあり外に行ってしまうことが考えられます。何度確かめても、その場所が大丈夫だったかどうかの記憶をとどめておくことができません。
落ち着きがない行動をとったりするのは、不安やいたたまれなさに起因しています。
また、暴力や暴言の背景にあるのは、さまざまな感情のあらわれです。「わからない」「できない」ことが増えていくことへの不安や、長年蓄積してきた怒りや悲しみなど、人それぞれです。また、介助に対して「今はそれをしたくない」という意志が精神的に不安定で判断力が低下していることや適切な言葉をうまく伝えられないもどかしさなどから暴力という形であらわれる場合もあります。
自分でもコントロールしきれない行動をご家族に責められたりすると、「迷惑をかけている」「できない自分を消してしまいたい」と考える方もいます。自信をすっかり失い、考えてもどうして良いかわからない。そんなときは、誰だってその場から逃げ出したくなるのではないでしょうか。落ち着きのない言動は、認知症の方が失われていく自分をなんとか保とうとする抵抗なのかもしれませんね。
一方で、認知症の方の気持ちを理解することが難しいことも事実です。ここでは、認知症の方が感じている不安や心細さ自分に置き換えて想像してみます。
言いたいことがあってもうまく表現できない方は、こんな気分なのかもしれません。
本人にとってみれば切羽詰まった状況なのに、周囲の人は知らぬ顔で通りすぎる。周囲に理解してもらえない辛さが想像できるかもしれません。認知症の方の行動を無理やり止めたり、力ずくで押さえつけたりすると、余計にひどくなってしまう可能性があることも理解できる気がします。
こんな、いてもたってもいられないとき、あなたならどんな言葉をかけられたいでしょうか。「違うよ」「また忘れちゃったの」といった否定的な言葉より、「そうだったの、つらかったね」「大丈夫だよ」といった共感や思いやりの言葉なのではないでしょうか。
人間は誰でも、自分が受け入れられていると感じると安心するものです。
ちょっとしたひと言で気持ちが落ち着いたり、気分が変わったりするのは、認知症の方も同じです。
記憶や言葉が失われていく認知症の方との、有効なコミュニケーション手段は、「スキンシップ」です。認知症が進行していると、会話が成立しないことも多くなりますが、言葉が通じなくても、穏やかな笑顔や声のトーンを心がけるだけでメッセージは伝わります。
赤ちゃんがお母さんに抱きしめられることで、安心し、信頼感が育まれていくように、スキンシップが認知症の方を落ち着かせます。優しく手に触れて握りしめるとか、そっとなでるとか、シンプルで愛のこもった触れ合いが「ここに居ても良いのですよ」とメッセージとして伝わるはずです。いきなりつかんだりすると怖がらせてしまうので、少し離れた場所から少しずつ距離を縮め、相手の表情や反応を見ながら触れたり、声をかけたりすると良いようです。穏やかな笑顔も忘れないでくださいね。
こうした心がけは、認知症の方だけでなく、介護する側の気持ちも落ち着かせ癒やされます。お互いの癒やしの時間として、認知症の方との触れ合いを大切にしていただきたいと思います。
2019.10.23公開
こちらもぜひご確認ください!
セコムの見守りサービス
ご自宅にも備えを
家庭用AED