老人ホームのスタッフとの付き合い方
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。 シリーズ「老人ホーム」の連載も今回が最終回。
前回は、「老人ホームに入りたくない」という気持ちとどのように向き合うべきかをまとめました。
家族間の意見が食い違うときも、老人ホームのスタッフは強い味方。
入居後は長い付き合いになりますから、家族としても良い関係性を築きたいですね。
老人ホームのスタッフとは、どのようにコミュニケーションを取れば良いのでしょうか。
老人ホームで不自由なく暮らしてもらうために、家族として何を伝えておくべきなのか。
「こんなこと聞いて良いのかな...」と思うような疑問もあるかもしれませんね。
前回に引き続き、セコムグループの介護付有料老人ホーム「アライブ」の入居相談室 室長 前島健司さんと、ケアサービス室 課長 藤田祐子さんに話を聞きます。
老人ホームのスタッフとのコミュニケーションのコツが聞けました。
【あわせて読みたい!「在宅介護と老人ホーム」シリーズ】
・老人ホームへの入居を考えるのはどんなとき?
・後悔しない老人ホームの選び方
・入居しなくても使える!老人ホームの便利な活用方
・老人ホームに「入ってほしい」「入りたくない!」家族と本人それぞれの葛藤
● 老人ホームのスタッフには話しかけにくい? 老人ホームは、大切な家族がお世話になっている場所。
面倒を見てもらっているという思いから「わずらわせてはいけない」「クレームだと受け取られないか」などとためらってしまうこともあるようです。
忙しそうなスタッフへの遠慮もあって、面会に行っても「スタッフとはあいさつ程度にしか会話を交わしたことがない」という方も多いのではないでしょうか。
面会に来る家族の遠慮に対して、ケアサービス室の藤田さんはこう言います。
「ご家族からの意見は、どんどん伺いたいと思っています。
特にご本人のケアや生活の質を高める可能性がある情報ならば、どんなに小さなことでも知っておきたいのがホーム側の本音です。
たとえば、言葉遣いや接し方など接遇面。
食事の好みや配慮してほしいことなど、ホームの対応で気になることがあれば、何でも遠慮なくおっしゃっていただけるとありがたいですね」
とはいえ勤務中の介護スタッフはいつも忙しそうに見えるもの。
時間帯や日によってスタッフの顔ぶれが違うことも多いですね。
誰に、どのタイミングで話しかければ良いのか、戸惑うご家族も多いのではないでしょうか。
入居相談室の前島さんが、コミュニケーションのきっかけを教えてくれました。
「老人ホームからご家族に連絡をするときなど、窓口になるのはケアマネジャーが多いです。
事務所にいるときに声をかけていただければ、快く対応してもらえるはずですよ。
また、ご入居者のことをよく知っているのは居室の担当者。
ご入居者ごとに主担当スタッフを決めてケアをしているホームも多いです。
面会のときに顔をあわせるチャンスもあると思いますので、『母の様子はどうですか?』などと気軽に声をかけてみると良いと思います。
忙しそうで話しかけにくい、ご本人の前では話しにくいなどというときは、『あとでちょっとお話しできますか』と一声かけておけば、時間をつくってくれるでしょう」
「ホームにいるスタッフなら、基本的には誰に話しかけても大丈夫」とのこと。
疑問や不満を抱えたまま遠慮しているくらいなら、思い切って伝えたほうが老人ホームとも良い関係を築けそうです。
● 老人ホームで「本人らしい生き方」を実現するコミュニケーション 藤田さんは、入居者の生活をサポートするために「過去」を知ることが欠かせないと言います。
「老人ホーム側は、入居してからのご本人のことしかわかりません。
だからこそ『入居前はどうだったのか』を知ることが大事だと考えています。
たとえば、これまでの生活リズム、嗜好や習慣などはとても大事な情報です。
『こんなことが好き』とか『いつもこうしていた』とか、反対に『こういうことは嫌がる』といったこと。
些細なことでも、教えていただければ私たちにできることはたくさんあります。
老人ホームでの暮らしをより良くするためにも、ご家族からもお話をたくさん聞きたいです」
どんな人生を送ってきたのか。
大切にしている価値観は何か。
家族とはどんな関係性だったのか。
ときには本人が生きてきた歴史をひも解かなければ、「今」が見えてこないこともあります。
前島さんも、こう続けます。
「できないことが増え、いろいろなことをあきらめて老人ホームでの生活を選ぶ方が多いですが、老人ホームは、我慢や遠慮をしながら暮らす場所ではありません。
あきらめたこと、やりたいことがあるなら、今の身体状態では無理だと思えることでも良いので、言葉にして伝えてみてください。
介護のプロが24時間365日そばにいる老人ホームだからこそ、できることもあるはずです。
ご本人が望む『生き方』や『暮らし方』を実現するお手伝いがしたい。
こういう方針で運営している老人ホームが増えています」
在宅介護でも施設介護でも、関わるスタッフは家族と一緒に支えるサポートチームの一員。
「思い」や「願い」を伝えることが実現のきっかけになることもあるのです。
● 介護スタッフとの距離の縮め方
とはいえ、唐突に深い話を切り出すのは難しいもの。
スタッフとしても、ご家族にあれこれ聞きだすのは失礼かもしれないと遠慮もあるでしょう。
どうしたら気負わずコミュニケーションを取れるのでしょうか。
藤田さんがこんなエピソードを教えてくれました。
「アライブ入居者のご家族に、スタッフととても上手に関係性を築いていらっしゃる方がいます。
親御さんの話ばかりするのではなく、『この仕事を続けてもう長いの?』『今日は何時から働いているの?』とスタッフに聞いてくださるんです。
そうした会話の延長で『うちの父、最近どう?何か迷惑をかけていない?』などとおっしゃるので、スタッフも話がしやすく、ごく自然にいろいろな話題に広がっていくようです。
スタッフ自身との会話を楽しんでくださるご家族とは、距離も縮まります。
親御さんのために、何ができるかを一緒に考える同志のような関係にもなれるでしょう。
ご家族との信頼関係が、ホームでの生活やケアの改善につながっていると感じます」
自分の親をみてくれているスタッフがどんな人なのか、関心を持って接してみる。
それほど難しいことではありません。
スタッフの人となりを知ることで、ご家族としても安心感が生まれるでしょう。
「老人ホームはあくまで『住まい』ですから、ご家族もかしこまる必要はありません。
気軽に話しかけてくださったほうが、スタッフとしてもありがたいです。
親御さんにどんな思いを抱いているのか、子どものときどんなことがあったのかなど、息子さん・娘さんとしてのエピソードも大変興味深く伺っています。
ご家族のいろいろなエピソードが蓄積されれば、ホームでのご本人とのコミュニケーションに活かすことができます」と藤田さん。
心を開いて話すことは、自分の味方を増やすこと。
老人ホームに入居すれば家族の介護負担は減りますが、「本当にこれで良かったのか」という複雑な思いは残り続けるでしょう。
ご家族だからこその痛みや迷いも、思い切って話せばきっと受け止めてもらえるはずです。
* * * * * * * * *
これまで5回にわたってお届けしてきた連載「老人ホーム」シリーズ。
介護において「本人を支える」ということは、「家族も支える」ことなのだとあらためて実感しました。
次の暮らしを模索する介護家族の皆さんに、安心して「家族ぐるみ」の付き合いができる場所が見つかることを願っています。
【ショートステイのご紹介】
アライブでは介護保険適用の「短期特定施設入居者生活介護」と、実費での「有料ショートステイ」をご用意しております。
短期でホーム利用をお試ししてみてはいかがでしょうか。
アライブのショートステイはこちら
【あわせて読みたい!関連コラム】
■「認知症」の方とのコミュニケーションのコツ
意思疎通ができないなど、認知症の方の介護で苦労するご家族に、「謎解き」のコツをレクチャーします。
家族の歴史や過去のエピソードが重要なヒントになることが多々あります。
■介護家族の「心の支え」をつくるには
迷いや苦しみのなかにある介護家族には、ひとりでも多くの「味方」が必要です。
在宅介護で心の支えと出会った読者Aさんのエピソードから、上手な「甘え方」が見えてきます。