老人ホームに「入ってほしい」「入りたくない!」家族と本人それぞれの葛藤
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
シリーズ「老人ホーム」の連載も今回が4回目。
前回は、入居を検討する老人ホームの雰囲気を確かめるなど、便利に使える「ショートステイ」の活用方法についてまとめました。
さて、誰もが前向きに老人ホームへの入居を考えられるわけではありません。
「住み慣れた家で過ごしたい」と希望する方が多いのも事実。
ご家族としても「本人の意思に反して老人ホームに入ってもらう」ことは望まないでしょう。
自宅での暮らしぶりを心配する気持ちと、本人の意思を尊重したい気持ち。
どちらも大事なことです。
在宅か施設かをめぐって、それぞれの立場で葛藤があるのは当然のことだと思います。
どうしたら皆が安心できる「暮らし方」を見つけられるのでしょうか。
今回もセコムグループの介護付有料老人ホーム「アライブ」の入居相談室 室長 前島健司さんと、ケアサービス室 課長 藤田祐子さんに話を聞きます。
「老人ホームに入ってほしい」ご家族と、「老人ホームに入りたくない」ご本人。
どう向きあえば良いのかアドバイスしていただきました。
【あわせて読みたい!「在宅介護と老人ホーム」シリーズ】
・老人ホームへの入居を考えるのはどんなとき?
・後悔しない老人ホームの選び方
・入居しなくても使える!老人ホームの便利な活用方
● 意見がわかれたときは「老人ホーム」に相談を
ご家族から見ると、自宅暮らしは危なっかしくて心配が尽きない。
しかし、本人は自宅暮らしの継続を望んでいる。
こんな状況で葛藤している介護家族は決して少なくありません。
こうした問題をどのように乗り越えるのか「アライブ」の入居相談室を担当する前島さんに聞きます。
「ご家族のすすめでやむなく見学に来たけれど、ご本人は全く納得していないというケースはよくあります。
施設見学や入居相談の段階では、8~9割の方が『老人ホームなんて入りたくない』とおっしゃっていますね。
老人ホームに入るべきか否か、ご家族やご本人からそれぞれお話を聞きながら、意見を調整していくのも入居相談担当の仕事です。
それぞれの気持ち、懸念点や問題を整理すると、解決の糸口が見えてくることもあります」
とはいえ、『これからお世話になるかもしれない老人ホームで、険悪なところを見せたくない』と考えがちになります。できれば嫌がる本人を連れていくのではなく、皆が納得して前向きに見学に臨みたいと思うのが、ご家族の心情でしょう。
「あまり気にしなくて大丈夫ですよ。
よそ行きの顔ではなく、ありのままを見せていただいたほうが、こちらも状況を把握しやすいです。
ご本人が納得していないなら、そこも含めてご相談ください。
家族同士ではどうしても感情的になりがちですし、強引にご本人を説得しようとするとかえって話がこじれることもあるものです。
『本当は嫌だったのに無理に入居させられた』とご家族が悪者になってしまうこともあるでしょう。
老人ホームに入居されたあともご家族との関係は続きます。
良い関係を継続するために、家族は見守ることに徹して『老人ホーム側に対応を委ねてしまう』というのもひとつの方法です」
「自宅にいたい」というご本人の気持ちは大切ですが、心身状態によってはそれがベストではないこともあります。
自宅暮らしは何が問題か。
それは誰にとっての問題か?
本当に問題なのか?
本人にとっての「本当のベスト」はどこか?
自分たちだけの価値観にとらわれず、いろいろな角度から客観的に問題を考えることが大切です。
家族同士の話しあいがこじれたときは、ケアマネジャーや老人ホームのスタッフなど、介護のプロに介入してもらうのは良い方法だと思います。
● 老人ホームによくある誤解が本人をかたくなにしている?
老人ホームでの暮らしを拒む理由として「この歳になって集団生活なんてしたくない」「自分の好きなように暮らしたい」という話を聞くことがあります。
老人ホームに窮屈な生活をイメージする人は少なくないようです。
ケアサービス室の藤田さんは「誤解も多い」と言います。
「老人ホームにもいろいろな種類の施設がありますが、介護付有料老人ホームは『ご本人らしい暮らし』を尊重しているところがほとんど。
時間や行動を管理されるイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえばアライブでは、ご入居者にほとんど制約を設けていません。
ご本人とご家族が望めば、ひとりでお散歩やお買い物に行くことも可能です。
お食事もホームから提供されたものしか食べられないわけではなく、外食をしたり出前を取ったりする方もいます。
お酒やたばこをたしなむ方もいますし、泊まりがけでお出かけする方もいます。
自宅で困っていたことを補うけれど、自宅と変わらず自由に生活できる。
ショートステイなどを体験していただくと、このことをご理解いただけてネガティブなイメージが変わることもあるようです」
事業所によって特色はそれぞれですが、柔軟な対応をしているホームが増えているそう。
「どこまで許可してくれるのかはホームによって違うので、そこは入居前に確認したおいたほうが良いですね。やりたいこと、やりたくないことをはっきり伝えて、要望がかなうホームを選んでいただくと良いと思います」と藤田さんは言います。
老人ホームはあくまで「住まい」。
集団行動が必須というわけではありません。
プライバシーを保って一日中共有スペースの談話室などで過ごすことも可能ですし、アクティビティへの参加は義務ではありません。
もちろん、気が向いたら人と話すこともできるし、困ったら助けてくれる人が複数そばにいます。
自宅では寡黙で老人ホームを嫌がっていたけれど、いざ入居したら顔なじみができて朗らかになり、家族ともよく話すようになった...という方もいるそうですよ。
「集団生活は向いていない」「やりたいことができなくなる」などと決めてしまうのは尚早。
できること、できないことをホーム側に確認したり、ショートステイでホームでの生活を体験したりして、ご本人の「入りたくない」気持ちが和らぐ可能性はありそうです。
● 高齢期の住み替えは当たり前になりつつある
超高齢社会を迎え、高齢者のための住まいや暮らし方の選択肢も増えています。
スタッフやサービスの質はどんどん向上しており、自分にあった住まいを選べるようになってきていると感じます。
「以前よりも柔軟に住み替える高齢者が増えている」と前島さんは言います。
「かつては自宅暮らしが難しくなったら、次の選択肢は老人ホームくらいしかありませんでした。
今は住宅型の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)などもあり、高齢者の入居施設は種類も数も豊富です。
ですから、70代、80代くらいのお元気な方はまず住宅型に入居して、介護が必要になったら有料老人ホームにお引っ越しする...というパターンが非常に増えてきています。
あまり重く考えすぎず、気になる高齢者施設があったら資料を取り寄せたり、見学したりしてみると良いかもしれません。
判断材料をいくつか持っておけば、いざ次の住まいを考えるときに『どこが良いか』という悩みを軽減できますから」
身体の状態にあわせて、住まいや暮らし方を選ぶことができる時代。
『もう自宅では暮らせなくなってしまった』と思うと後ろ向きになってしまいますが、今は高齢期の暮らしにもいろいろな選択肢と可能性があるのです。
もちろん、老人ホームに入居したからといって、自宅に戻る選択肢がなくなるわけではありません。
やっぱり自宅が良いと思えば、在宅介護で自宅暮らしを再開することも可能ですし、実際にそういう方もたくさんいます。
ショートステイをうまく使えば、自宅暮らしのリスクや介護の負担を減らしつつ、在宅生活を継続することもできます。
大切なのは、ご本人がご本人らしくいられること。
そしてご家族が笑顔でいられること。
自宅か施設かの二択にこだわりすぎず、ご本人とご家族の皆が安心できる住まいや暮らし方を考えてみてくださいね。
【ショートステイのご紹介】
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