こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
認知症の親を見て、「別人のようだ」と感じてしまうことはありませんか。
おかしな行動が増え、言動がかみ合わなくなるほど、その思いは強くなるものです。
認知症だからといって、その人自身が消えてしまうわけではありません。
親が「別人」に見えるときに思い出してほしいことをまとめます。
●「別人になってしまった」と感じる理由
認知症になっても、性格や本質そのものが大きく変わるわけではありません。
認知症によって、状況を把握する力や判断力が低下すると、もともと持っていた性格の傾向や反応のクセが調整されないまま表に出るものです。
調整されずに表に出るため、「別人になってしまった」と感じてしまいます。
たとえば、家のなかを落ち着きなく動き回る方がいるとしましょう。
「じっとしていられない」ようになってしまったと思うかもしれません。
ですが、その方がもともと家族のために家事をこまめに行い、常に手足を動かしているような働き者のお母さんだったとしたらどうでしょうか。
「何かしなきゃ」「自分がやらなきゃ」という感覚は、もともと持っている性分で認知症でも残っているものです。
何をすれば良いのかわからなくても、体は動いているという姿なのではないでしょうか。
同じように、責任感が強かった人ほど怒りが前に出やすくなったり、人に頼るのが苦手だった人ほど手助けを拒んだり、不安になりやすかった人ほど動揺が激しくなったり。
行動だけを見ると「おかしい」「変わってしまった」と感じるかもしれませんが、「その人らしさ」に目を向けると、大切にしてきた価値観や役割に対する意識が見えてくるかもしれません。
●不安や恐怖への反応は、人それぞれ違って当たり前
不安なとき、困ったとき、怖いとき。
その感じ方や反応の仕方は、人それぞれです。
黙り込んでしまう人もいれば、イライラを表に出す人もいます。
誰かに頼って気持ちを落ち着かせる人もいれば、逆に強がって平気なふりをする人もいるでしょう。
同じ出来事に直面しても、反応がまったく違うのは、ごく自然なことです。
認知症の方も、これと同じ。
ただ違うのは、不安や混乱を言葉や理性で整理し、調整する力が弱くなっているという点です。
戸惑いや恐怖が、そのまま行動や言葉として表に出やすくなります。
怒りっぽく見えたり、拒否が強くなったり、落ち着きなく動き回ったりするのも、「わざと困らせている」のではなく、どう反応して良いかわからない状態にあるからです。
「困った行動」にだけ目を向けると、その人の本質は見えてきません。
「困っている気持ち」に目を向けることで、行動の理由が理解できることもあるはずです。
●「変わってしまった親」ではなく、「今もここにいる親」を見つける
「私が知っているお父さんではない」
「もう、あの頃のお母さんはどこにもいない」
そう感じる瞬間が何度も訪れます。
子どもの頃に守ってくれた姿。
頼もしかった背中。
自分が知っている「親らしい親」に、もう二度と会えないのか。
その喪失感や悲しみは、言葉にしづらく、親子にしかわからないものです。
けれども、認知症になったからといって、その人自身が消えてしまうわけではありません。
ふつうでは考えられないような行動や言葉のなかに、「その人らしさ」の欠片が、ふと顔を出すことがあります。
口調の強さに、かつての気丈さがにじんだり。
妙なこだわりに、昔からの几帳面さが残っていたり。
一瞬見せる表情に、「そういえば、こんな人だったな」と胸が熱くなることもあるでしょう。
認知症が進むにつれて、それまで背負ってきたものが少しずつ削ぎ落とされて、なかには本当に子どものようになる人もいます。
それは「失われた」のではなく、これまで本人が築いてきた飾りが取れた「本当の姿」とも言えるのかもしれません。
安心できる関係性や環境のなかで「その人らしさ」は、攻撃や混乱ではなく、穏やかさとして表れやすくなります。
ふと、記憶にある親に再会できる瞬間が訪れることもあるでしょう。
「認知症」ではなく、その人自身を見ること。
親のためだけでなく、あなた自身が後悔しないためでもあります。
「もう会えない」のではなく「ちゃんと向き合えた」。
そう思える時間をひとつでも重ねていきましょう。
いつかそれは、あなたにとってかけがえのない意味になるはずです。
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2026.01.27







