在宅介護のご家族が知っておきたい「認知症」のこと

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在宅介護のご家族が知っておきたい「認知症」のこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

認知症の初期症状は小さな変化です。普段の生活に違和感があったら、かかりつけ医に相談するなどしましょう。以前に比べて、ご自宅で認知症の方のお世話をしているご家族が増えていると感じます。平均寿命が延び、認知症の方の人口も増えているのでしょう。

内閣府によれば、認知症の高齢者は増加傾向にあり、現在65歳以上の方のおよそ15%を占めます。今後も高齢化にともない、増え続けるものとみられます。

街中に普通に認知症の方がいらっしゃるという社会がすぐそこにきています。今後はますます、在宅介護で認知症の方をお世話するということが増えていくのかもしれませんね。

認知症の症状は非常に多様なので、専門的な知識をお持ちでない方には理解が難しく、いざ介護に直面すると戸惑いが大きいようです。

認知症のことが正しくわかると、いざというときの心構えや準備につながると思います。
今回は、「もし認知症になったご家族を介護することになったら」ということについて考えてみましょう。

● 「認知症って何?」をまずは理解する
認知症は、脳の変化によって「認知機能」つまり、物を認識し、記憶し、考え、実行する力が低下し、生活していくことに支障が出ている状態のことをいいます。

症状は人それぞれ異なりますが、「当たり前」と思われるような簡単な生活動作にも介助が必要になったり、何度、どう説明しても解ってもらえなかったり、ご家族ももどかしく、つい感情的になってしまうことがあるかもしれません。

適切なサポートをおこなうためには、認知症によって引き起こされるさまざまな症状を、正しく理解することが大切だと思います。


● 認知症になるとこんなことが起きる
認知症は脳のある部分が変化することによって起こる症状ですが、その原因はさまざまです。
少し専門的になりますが、代表的なものとして次の3つに分類されます。

脳が萎縮するアルツハイマー病が原因となる「アルツハイマー型認知症」。
脳梗塞(こうそく)や脳出血などで血流が悪くなり、神経細胞が壊れてしまうことが原因となる「脳血管性認知症」。
特殊なタンパク質(レビー小体)の蓄積によって、神経細胞が破壊されてしまうことが原因となる「レビー小体型認知症」です。

いずれの症状にも共通しているのが「認知機能障害」です。
「認知機能障害」は以下の4つに大きく分けられます。

① 「記憶障害」
物事を覚え、脳の中で整理して取っておき、必要な時に取り出すことができなくなります。単なる「物忘れ」とは区別されます。認知症では、昔のこと【長期記憶】は保持されやすく、最近のこと【短期記憶】が障害されやすいといわれ、新しいことが覚えられなくなります。

② 「見当識障害」
「いつ・どこで・誰が」ということが分からなくなります。例えば、今の季節が分からなくなることで、真夏なのにセーターを重ね着したり、場所が分からなくなることで、家にいるのに「うちに帰る」と訴えたりします。部屋の隅に放尿するというのも、おそらく「トイレ」がわからなくなる見当識障害でしょう。時間、場所、人の順で障害されることが多く、最後は人の認識もできなくなります。

③ 「判断力、問題解決能力の低下、実行機能障害」
ちょっとしたことも正しく判断できなくなり、計画的に段取りを踏んで行動することができなくなります。料理ができなくなる、必要なものを買い揃えられない、リモコンや電子レンジといった電化製品や湯沸し器が使えなくなったりします。

④ 「失語・失行・失認」
たとえば、お皿の上のものが食べ物だと分からなくなるのが「失認」、食べ方、食べるという行為がわからなくなるのが「失行」です。一見、遊び食べのようにみえますが認知症の症状です。他にも歯ブラシを「歯を磨く道具」と認識して正しく使うこと、トイレに行ってズボンと下着をおろし、排せつすることなどの簡単な日常生活動作が障害されます。

認知症の諸症状は、普通では考えられない行動としてあらわれることが多く、簡単なことが解らなくなるし、できなくなります。以前のきちんとした暮らしぶりを知っている家族なら、「どうして?!」と理解できないかもしれません。しかし、それこそが認知症というものなのです。

そんな時、信じられないような事態に誰よりも傷ついているのは、他でもないご本人です。
自覚しない不安や焦燥感、いらだち、喪失感に苦しんでいるはずです。認知症なので、上手く整理して言葉にすることはできませんが、心の奥底に多くの感情を抱えているのです。

整理しきれないネガティブな感情が「徘徊」、「興奮」、「妄想」、「暴言、暴力」、「抑うつ」などの症状になって表出されます。
それを先ほどの4つの症状「中核症状」とは区別して、「周辺症状」といいます。
「中核症状」はよくなりませんが、「周辺症状」は傷ついているご本人に寄り添う働きかけによって改善するといわれています。

認知症による行動を「そういうもの」として受け入れることが、認知症と向き合う第一歩となのです。


● もしかして認知症?...そんなとき家族ができること
認知症の初期には、認知機能の低下が原因で、いままで考えられなかったような失敗や間違いを起こしてしまうことがあります。家族が異変に気づくきっかけとなる「できごと」はさまざまです。

認知症の初期症状は、小さな変化であることがほとんどです。
ごはんが食べられない、眠れないなどの身体症状が先にあらわれる場合もあります。
経過観察を続けて、「何かおかしいな」「やっぱり前とは違う」と感じることがあったら、かかりつけ医に相談してみましょう。診察して認知症の診断が必要だと判断したら、専門医がいる病院を紹介してくれるはずです。

認知症の正体、詳細をあきらかに診断して頂くことで、ご本人にあったお薬やケアのヒントを見つけられるかもしれません。

ご家族としては、強くて頼りがいのあった父親や綺麗好きで何事にもきちんとした対応をしていた母親の変化等が受け入れられず、「もっとしっかりしてよ!」といら立ってしまうこともあるかもしれません。

けれども、認知症の方は暮らしの中で「わからない」ことが増えていくことですから、考えても答えが出ず、どうすることもできなくて途方にくれているはず。
自分に何が起きているかわからないまま、不安と混乱のなかに身を置いているような状況で、自信を失い、ショックをうけていることでしょう。

なかには、失敗を隠そうとしたり、失敗を指摘されると攻撃的に怒りだしたりする方もいますし、抑うつ的になる方もいます。人のせいにして、自分の心を守ろうとする方もいます。
ご家族もストレスを感じると思いますが、責めたりするのは逆効果です。
ご本人を追い詰めることになり、「周辺症状」は悪化、かえって認知症が進行してしまうこともあるからです。
ご家族としてできることは、ちょっとした"異変"を見逃さず、ありのまま受け止めてできるだけ冷静に対応を考えることです。

とはいっても、身近な親やパートナーが、子どものように手がかかったり、聞き分けがなくなっていくことは受け入れがたいものであります。それだけでなく、理不尽に感情的になられたりすると、「認知症だからしようがない」とわかっていても腹も立つし、悲しくもなります。

認知症と向き合うことは、他人であっても大変なことです。それが身近なご家族となると、決して一人で抱えきれるものではありません。
介護者自身の心と体を大事にするこが何よりも大切です。
打ち明けられる「誰か」、相談できる「誰か」を必ず見つけてくださいね。

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