在宅介護で認知症の方の介護拒否に困ったときのヒント

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在宅介護で認知症の方の介護拒否に困ったときのヒント

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

拒否する理由も理解・尊重することが大切です。認知症の方の介護拒否で困っている介護家族は全国にたくさんいます。
前回、在宅介護にあたるご家族のために、介護を拒否する認知症の方の気持ちを理解する方法や、接し方のコツについてまとめました。

してもらいたいこと、受け入れてほしいことを拒否されると、介護するご家族は困ってしまいますが、認知症の方にも意思があります。
なぜ嫌がるのか、拒むのか、ご本人の意思を見極め、できるだけご本人の気持ちに立って考えることが、解決の第一歩です。

今回はもう少し踏み込んで、認知症の方が拒否する原因を探り、どのように対応したら良いかをまとめます。

● 認知症の方を傷つける言葉
これまで多くの認知症の方のケアに携わってきました。
その経験から学んだのは、今のご自身に傷ついている認知症の方がとても多いということ。
認知症のご本人が一番傷ついているのです。わからなくなってしまったことや、できなくなってしまったことを恥じ、受け止めきれずに葛藤しています。

傷つく認知症のご本人を「介護の手」が、より傷つけてしまうことが少なくありません。
たとえば、「ヘルパーさんに手伝ってもらったら?」「やらなくて良いよ」といった言葉に対して、「余計なお世話!」「勝手に決めないで!」などと強い言葉で拒否されたことはありませんか。

認知症の方の心はとてもデリケート。
「あなたにはできない」と言われているような気分になってしまう場合があります。
プライドが傷つけられ、他者に介入されることを感情的に拒んでしまうのです。
介護拒否は、「私はできる!」という反発のメッセージなのかもしれません。

手厚いサポートは、必ずしも認知症の方を救うことにはなりません。
たとえおぼつかなくても、ご家族から見て「できていない」ことでも、ご本人が懸命に取り組もうとしているなら、その気持ちを尊重して見守ることも、ご家族にできる大事なケアだと思います。


● 認知症の方の「困った拒否」にどう対応すれば良いのか
ご家族としては必要なケアを何としても受け入れてもらいたいのが本音。
しかし、その考えに凝り固まっていては、認知症の方との関係性を阻害しかねません。
介護拒否されたときは、介護するご家族が視点を変えてみることがとても重要です。

【「介護拒否に困った」家族のための5つの思考パターン】
(1)それは本当に問題なのか
(2)どうしてそれが問題なのか
(3)誰にとっての問題なのか
(4)行動によって何を伝えようとしているのか
(5)他の方法で解決できないか

たとえば、食事を拒否されたケースで考えてみます。

「食事をしてくれない」、何が問題ですか?
まず栄養面や健康面が心配ですよね。
人間が生きていくうえで食事は不可欠。
食事の拒否は問題だと言えます。

しかし、1日3食決まった時間に食べる必要がありますか?
今食べないといけませんか?
このようなケースでは、必要なカロリー(1日1500カロリー)を摂取することを優先すると良いと思います。

今はおなかが減っていない?
メニューが好みにあわない?

用意した食事を食べたがらないなら、お菓子でも果物でも、ご本人の好物だけでも食べてくれれば良いと思います。そういう日があっても良いと思います。

今、食事をしてくれないことが問題なのか、代替方法はないのかを考えてみると拒否への対応が少し楽になるかもしれませんよ。

「食べたくない」をもうひとつ、別のアプローチで考えてみましょう。
箸がうまく使えずイライラしている?
介助でプライドが傷ついた?

食事介助を嫌がるなら、おにぎりやスティック野菜など、手づかみで食べられるものを用意すると良いと思います。
箸やスプーンを使ってきれいに食べることが、ケアや生活の質を高めるわけではありません。

「困った拒否」にどのように対応するかを考えるとき、まずは介護するご家族が「こうあるべき」という先入観を除いてみると良いかもしれませんね。


● 「認めてもらった」ことで拒否が和らぐことも
介助やケアを拒否されたとき、ご本人の好きなようにしてもらうということも、決して悪いことではありません。
「自分でできる」「任せてもらえた」という自信も、認知症の方にとっては大切な栄養です。

もちろん、見ていてハラハラしたりイライラしたりすることもあると思います。
それでも否定的な言葉で対応するのはストップ。
気持ちがわかってもらえないと感じると、ご家族にさえ心を閉ざしてしまいます。
そうなれば、どんどん在宅介護生活がとげとげしく、難しいものになっていくでしょう。

自分の意思が尊重され「認めてくれている」と感じると、気持ちが落ち着くものです。
「認められることの充実感」は、認知症の方に限らず、誰にでも経験があることだと思います。
特に不安の渦中にある認知症の方なら、共感の言葉や笑顔を向けるだけで安心しますし、コミュニケーションがとりやすくなることも考えられます。

拒否されたときこそ、認知症の方の気持ちを理解するチャンス。
これまで困っていたならなおのこと、今までと少し違う目線から向きあってみてくださいね。

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