在宅介護でもあきらめない!毎日の「運動」と「自然排便」

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在宅介護でもあきらめない!毎日の「運動」と「自然排便」

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

株式会社アライブメディケアのアライブ世田谷下馬で自立支援介護を推進している中村優さんから在宅介護での「運動」と「自然排便」に聞きます。これまで株式会社アライブメディケアのアライブ世田谷下馬で自立支援介護を推進している中村優さんに、「元気になる介護」について話を聞いてきました。


「元気になる介護」とは、人間が生きていくうえで欠かせない、「水分」「食事」「運動」「排せつ」の4つの基本ケアに正しく取り組むことで、体調が整い、意欲や活力を取り戻すことができるというものです。

初回のインタビューでは、4つの基本ケアの概要と効果について、2回目のインタビューでは、「水分」と「食事」を上手に摂るコツについて、詳しく聞きました。

3回目となる今回は、「運動」と「排せつ」をクローズアップします。
体力が低下している要介護状態の方が持続的に運動するのは簡単ではありません。
また、排せつについても、おむつを使用したり、便秘や失禁に悩まされたりしている方も少なくないでしょう。

どうすれば、毎日の運動やトイレでの自然排便が可能になるのでしょうか。
在宅介護でも実践できる工夫をまじえてご紹介します。

● 「運動」に無理は禁物。今できるレベルでやれることを考える
4つの基本ケアを複数の施設で実践し、大勢の要介護者の方の変化を見てきた中村さん。
「水分を1日1500ml」「食事は常食(普通食)で1日1500キロカロリー」が習慣づいてくると、特別なことをしなくても身体に良い変化が見られるようになってくると言います。

「体力がついてきたら、少しずつ身体を動かすことを毎日の習慣に取り入れていくようにします。
ベッドに居る時間が長い方や車椅子の方なら、最初は10秒でも良いから立ってみる。少しでも歩ける方なら、自力で歩く機会をなるべく多くつくる。
今の身体の状態に合わせて、ちょっとがんばればできることを取り入れて、少しずつレベルアップしていきます」

体力がついて、起き上がったり、動いたりすることが負担ではなくなってくるのです。

「○時~○時まで運動するといった取り組み方だと、なかなか長続きしません。
わざわざ運動の時間をつくらなくても、日常生活での行動をよく見てみると、無理なく身体を動かせるタイミングが見つかるものです。
たとえばトイレでズボンを上げる前に10数えたり、お風呂やトイレに行くルートをちょっと遠回りにしたり。
どのタイミングで何をするのか、具体的に決めることがポイント。
毎日できそうなことを、生活のなかで見つけてみてください。
アイデアしだいで運動の機会はいくらでも増やせます」

在宅介護では、リハビリや運動の時間を苦痛に感じる方が多く、いかに身体を動かしてもらうか、私もいろいろ工夫してきました。

「ベッドじゃなくて椅子に座ってご飯を食べましょう」
「シーツを変えたいから、ちょっとこっちに座ってくれる?」
などと声をかけて、動いてもらっていました。

「やらされている」「運動させられている」と思うと、なかなか意欲的になれないものです。
目的や理由があると納得してもらえることが多くありました。
「動かないとダメじゃない」とはっぱをかけるより、「ちょっと協力してくれる?」「○○してみない?」とすると身体を動かす動機になると思います。


4つの基本ケアのうち「水分」「食事」「運動」が整うと自力で排便する体力や筋力がついてくると、中村さん。● 「トイレでの排せつ」は最初の1週間がんばってみる
便意に気づかないのでおむつが必要、便秘や便失禁で困っているなど、何かしら排便トラブルを在宅介護の現場でたくさん見てきました。

トイレでの自然排便がとても難しいことに感じるかもしれません。
しかし、4つの基本ケアのうち「水分」「食事」「運動」が整うと自力で排便をする体力や筋力がついてくると中村さんは言います。
これまで見てきた施設では、入居者全員がおむつ不要になったケースもあるそうです。

「1日1500mlの水分摂取だけでも、多くの方の便秘が改善されました。
なかなか便秘が治らない方の場合、下剤ではなくオリゴ糖やファイバーを摂っていただくのがおすすめ。
下剤は、自然排便のリズムを損なってしまうことがあります。下剤で便秘を解消するのではなく、下剤を使わずに便秘を解消するにはどうしたら良いのかを考える。そのような発想の転換も、トイレでの自然排便のためには必要です」

以前、「排便トラブルを防ぐには」というテーマや、「スムーズな排便をうながすためにできること」についてご紹介しました。

自然に排便するには、無理なく腹圧をかけられる正しい姿勢が大切です。
やや前かがみの正しい姿勢をキープする福祉器具がいろいろあるので利用すると良いでしょう。

また、なるべくゆっくりトイレに座る機会をつくることも大切です。
最初は座っても出ないかもしれませんが、排便のリズムやタイミングをうまくつかむと成功率が高まります。

排便には、その方によって出やすいタイミングがあります。
最初の1週間、こまめにトイレ誘導するうちに、どのタイミングでトイレに連れ出すと良いかわかってくるはずです。

中村さんの経験によると、「朝食後に出る方が多いようです。起床後すぐに水分をしっかり摂ると、便意をもよおしやすくなりますよ」とのこと。


● リハビリパンツは思い込みで使っている!?
トイレで排せつできても、突然のもれが心配でリハビリパンツを使っている方を多く見かけます。
中村さんによると、本来はリハビリパンツが適していない場合もあるそうです。

「リハビリパンツは、尿は吸収しますが、便を吸収するわけではありません。
また、腰回りのギャザーがゴム機能を有し、身体への密着度が強く、ひとりでは上げ下げできないために、排せつの介助が必要になっている方も多いのです。
もれが心配ならば、布パンツにパッドを装着して使ったほうが良い場合もあります。
最近はパッドも高機能で性能の良いものがたくさん出ているので、目的とサイズがあうものをきちんと選べば布パンツで過ごせる方も多いですね。
布パンツなら締め付けもなくサラッと快適ですし、ひとりで上げ下ろししやすいので、トイレでの自立度が高まります。
ひとりでゆっくりトイレに入れると、それだけで排便もしやすくなるんですよ」

本人にあうパッド選びについては、ケアマネジャーもいろいろ情報を持っていますので、相談してみるのも良いでしょう。

「おむつも、下剤も、本当は使わなくてもどうにかできるのに、手っ取り早く目の前の問題を解決するために使っているように思える方も見受けられます。
4つの基本ケアで生きる力が高まれば、不要になるものだと私は信じています。
生きるために本当に必要なものは何かという原点に立ち返ってみてください。
そして、本人が持っている生命の力を信じてあげてください」

在宅介護をしていると、先が見えない不安に駆られることもあると思います。
そのようなときは、まずは4つの基本ケアのひとつでもやってみてください。

基本となるケアに丁寧に大切に取り組むことで、あきらめていたことができるようになったり、笑顔が多くなったり、何かしらの変化と、明るい光が見えてくるはずです。

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【「元気になる介護」のための4つの基本ケアについて】
「生きる力」を目覚めさせる!元気になる介護生活のつくり方
在宅介護で自立支援につながる「水分」と「食事」の摂り方

【関連ページ】
・在宅介護の「排便トラブル」を防ぐには?
・スムーズな排便のために在宅介護でできること

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