スムーズな排便のために在宅介護でできること

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スムーズな排便のために在宅介護でできること

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

「の」の字マッサージで腸の動きを活発にしましょう 前回は、在宅介護でよくある「排便トラブル」をご紹介しました。
排便がうまくいかない原因や、自立した排泄(せつ)を実現する方法などをお伝えしましたが、何より大事なのは、あきらめないことだと思います。

身体機能や体力の低下、認知症などの要因があると、排便の失敗や便秘などのトラブルを「どうしようもないこと」として考えてしまいがちです。

できれば目を背けたい...という気持ちもよくわかりますが、きちんと向き合えば、排便トラブルを改善する方法を見つけられることもあります。

● 便の状態を観察してトラブルの原因をさぐる
在宅介護を受ける方には便秘に起因する排便トラブルがよく見られます。
便が出ない、硬くて少ししか出ない、うまく出せず便失禁を繰り返すなどです。
もちろん健康な人でも食生活や生活の乱れ、環境の変化などによって便秘は起こりますが、排便をコントロールする力が低下している要介護の方はより深刻といえます。
介護する方の負担にもなりやすいので、ひどくならないうちに手を打つことが大切です。

排便に関して気になる症状があるなら、まずはその方の排便の状態を観察してみましょう。
排便のあった時間や便の状態、量などを記録しておくと、訪問看護や介護のスタッフなどとも情報共有でき、排便ケアや体調管理にも役立ちます。


このとき気をつけたいのが、誰が見てもわかるような言葉で記録すること。
排便は個人差が大きいものなので、「たくさん・ちょっと」も「硬い・柔らかい」も、人によって感じ方が異なります。
感覚的な言葉はなるべく使わないようにしたいものです。

便の形状の表現でよく使われているのは「ブリストルスケール」と呼ばれるもの。
7段階で便の状態を示すもので、介護や医療の専門家も指標にしています。
便を観察して、どれに当てはまるかを記録しておくのです。

(1)コロコロ便:硬くてコロコロのうさぎフン状の便
(2)硬い便:ソーセージ状であるが硬い便
(3)やや硬い便:表面にひび割れのあるソーセージ状の便
(4)普通便:表面がなめらかで柔らかいソーセージ状、あるいは蛇のよう
(5)やや柔らかい便:はっきりとしたしわのある柔らかい半分固形の便
(6)泥状便:境界がほぐれて、ふにゃふにゃの不定形の小片便
(7)水様便:水様で、固形物を含まない液体状の便


量や大きさについても、「うさぎのフン」「うずらの卵」「鶏の卵大」「バナナ1本分」など、具体的にイメージできるものに例えて記録すると、誰が見てもわかりやすいです。
継続して記録すると、その方の排便リズムやパターンがわかりますし、食生活や日中の過ごし方などと照らしてトラブルの原因を推測することもできます。
適切な排便ケアが可能になるのです。


● 排便につながる水分補給や食生活
スムーズな排便には、水分摂取が非常に大きな役割を果たします。
特に、夜寝る前と朝起きた直後にそれぞれコップ1杯の水を飲むのがおすすめです。
寝る前に水を飲むと夜間に大腸で水分浸透し、朝の1杯で腸が動き出します。
直腸や大腸にとどまっていた便が出やすくなるので、就寝前と起床直後の1杯は意識して習慣にしましょう。

また、あまり知られていませんが「かむ」ことも腸の動きを刺激する動作です。
病院では、手術後の腸閉塞を防ぐために、患者さんにチューインガムをかんでもらうこともあるくらい、効果が期待できます。
口も消化器官なので、腸の動きと連動しているんですね。
「よくかんで食べましょう」というのは、消化に良いだけではなく、腸の動きを活発にするうえでも役に立つのです。

また、排便が促される食べ物を知っておくことも大切。
ヨーグルトや食物繊維が便秘に効果的と言われますが、人によって相性が違うのが面白いところです。
ステビアなどの人工甘味料が良いという人もいれば、赤ワインを飲むとお通じがスムーズになるという人もいます。

食事の献立と排便の記録をつけているとあるていど関係性がわかるかと思います。

他にも食後の新聞やコーヒーなどが、便意を催すきっかけになる人もいます。
若いときからの習慣に基づいていることも多いので、ご本人に便意を催しやすい食べ物や行動があるか、聞いてみるのも良いと思います。


● 在宅介護で手軽にできる排便を促す習慣
食事の直後は便意を催しやすいタイミングです。
便意を感じなくても、食事の直後にトイレに座っていきむ習慣を続けてみてください。
最初のうちはうまく出ないかもしれませんが、あきらめずに続けていると、便意を催すようになってくることも少なくありません。

便意があることの自覚がない認知症の方の場合、スムーズな排便がなかなか難しいのですが、決まった時間にトイレに行くことは排便トラブルの軽減につながることがあります。
トイレの意味がわからないといった失行がある方でも、便座に座ったり、立ったりを繰り返すうちに排便できることがあります。
立つ・座るといった動作の繰り返しは、腹圧がかかるので排便を促しやすいのです。

便秘になりがちな要介護者の方には、「の」の字マッサージもおすすめ。
イラストのように、おへその下あたりから「の」の字を描くように手のひらでマッサージを繰り返すと、腸の動きが活発になって便意が促されます。
なかなか出ない方なら、少し強めに押しこむようマッサージすると効果的ですよ。


トイレに座ってもなかなか便が出ない...というときは、肛門のすぐ上、直腸で便が固くなってしまっているのかもしれません。
左脇のあたりからへそ下に向けて、ぐっと押し下げるようにマッサージすると、便が出ることが多いです。
前かがみになると出やすいという方もいるので、人それぞれに違いがあるようです。
何度か試していると、コツがつかめてくると思います。

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今回ご紹介したケアは、どなたでも試せる簡単なことばかりですが、大事なのは継続すること。
排便トラブルが起きてから対処するのでは振り回されて大変ですが、毎日スムーズな排便のために努力することで、しだいにタイミングや症状をコントロールできるようになってくると思います。
できることをひとつでも続けてみてくださいね。

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