在宅介護で自立支援につながる「水分」と「食事」の摂り方

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在宅介護で自立支援につながる「水分」と「食事」の摂り方

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

株式会社アライブメディケアの中村優さんに自立支援介護に欠かせない「水分」と「食事」について聞きます。自立支援による「元気になる介護」を推進している株式会社アライブメディケア アライブ世田谷下馬の中村優さんに話を聞いています。

前回のインタビューでは、元気になる介護のための4つの基本ケアについて聞きました。

【4つの基本ケア】
・ポイント1:水分は1日1500ml
・ポイント2:食事は1日1500キロカロリー
・ポイント3:1日30分の運動
・ポイント4:トイレでの自然排便

基本ケアの4つのポイントは、互いに影響しあっています。
続けることで身体も、精神も健康状態が回復し、生きる意欲が高まり、「元気になる」のです。

認知症の方が意思疎通できるようになったり、ターミナルケアを受けていた方が回復したりする、驚きの事例も聞けました。

とはいうものの、在宅介護で4つの基本ケアを徹底することは容易ではありません。
気力や体力が低下した高齢の要介護者なら、なおのこと。

今回は、在宅介護で4つの基本ケアを実践できるよう、「水分」と「食事」の摂取についてまとめます。

● 1日1500mlの水分を摂取するには?
人間が1日に排出する水分は約2400ml。
健康を維持するためには、失われた水分を適切に補う必要があるのですが、食事に含まれる水分量や、細胞が分解してできる水分量を加味しても1500ml程度足りないと言われています。
1500mlの飲み物を飲まなくてはなりませんが、高齢者にとっては簡単に飲みきれる量ではありません。
毎日1500mlの水分摂取を徹底するためには、どうしたら良いのか中村さんに聞いてみました。

「きちんと計測することが非常に大切です。
朝起きたら白湯を300ml、朝食のときにお茶を200ml、10時に牛乳を250ml...というように時間と目安量をあらかじめ決めておきましょう。
水分摂取の日課表をつくって、飲んだら「○」をつけるなど、目に見える形にしておくと達成しやすいと思います。
ケアマネジャーに相談すると、ケアプランとして適切な水分摂取方法を提案してもらえます。
日中ヘルパーさんが入っているご家庭も多いと思いますので、情報共有しながら進めると良いですね」

以前、私も訪問介護の現場では、1日1500mlの水分を摂っていただくための工夫を心がけていました。
用意した飲み物が飲めないときも、違うものを勧めると飲んでくださることもあります。

中村さんも「お酒以外の飲み物なら何でも良いのです。牛乳でも炭酸飲料、ジュースでも、ご本人が好きなものをおいしく飲んでいただくのがポイント」だと話していました。

日によって体調も気分も異なりますから、ご本人にも希望を聞きながら、柔軟に進められると良いですね。

「器の工夫だけでも、飲みやすくなることがあります。
小さなコップで出すとあまり進まない方でも、大きなコップで出すとゴクゴク飲んでくださることもありますし、その逆もありました。
お酒が好きな方なら、あたためたスポーツドリンクを徳利に入れて燗酒のようにして、おちょこで勧めると喜んで飲んでくれます。味が少し似ているそうです。
また、レモン味の炭酸飲料をジョッキなどに注ぐと、レモンサワーを飲んでいる気分を味わえます。
ご本人のお好みにあわせて雰囲気を演出すると、水分摂取が楽しい時間になりますよ」

1500mlもの水分となると、最初はなかなか身体が受け付けないかもしれません。
しかし、1週間もすると便秘が解消するなど、体調が目に見えて変化してきますので、やりがいもあります。

中村さんによると、飲み続けて体内の水分バランスが保たれるようになると、少しでも不足すると自ら積極的に水分を欲するようになってくるそうです。
水分摂取に制限がある方は、主治医と相談しながら進めましょう。


● ミキサー食から常食(普通食)への移行はできる?
元気になるための4つの基本ケアでは、栄養摂取が非効率なミキサー食やペースト食ではなく、健康な方と同じもの、つまり普通食を摂ることが原則です
しかし、摂食・嚥下(えんげ)機能が低下している方は、やむを得ずミキサー食やペースト食を食べています。

かむ力や飲み込む力が衰えている方が普通食を摂るにはどうするのか、中村さんに聞きました。

「かむ力が弱っている方は、スルメや昆布、ビーフジャーキーなど、固く乾いた食べ物でかむ練習からスタートです。飲み込むことはせず、ひたすらかんでもらいます。
かむだけでも味を感じられるので、おいしいと喜んでくださる方が多いです。
かみ続けていると口の動きがよくなり、お腹もすいてきます。
かむことは実は全身運動なので、首や胸、背中など、飲み込むために必要な筋肉が柔らかく動くようにもなります。
唾液の分泌も増えますので、適度な湿り気も含まれ、食事に適した口腔状態になるんです。
かむ練習を繰り返しているうちに、ほとんどの方が普通食を食べられるようになりますね。

反対に、柔らかいものばかり食していていると、かむ機会が失われてしまいます。
咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)に必要な筋力がますます衰えてしまいますので、かむ練習は続けましょう。

あとは正しい姿勢で食べること。
介護現場を見ていると、間違った姿勢で食事をしている方が非常に多いことに気づきます。
身体が傾いていたり、座っていても足が浮いていたり...
食事に適した姿勢は、膝が90度に曲がって足裏がしっかり地面についた端座位。
座る姿勢をキープできない方も、誤嚥(ごえん)しにくい角度で食事をすることが重要です」

食事の姿勢については、「在宅介護で「誤嚥(ごえん)性肺炎」を防ぐポイント」で詳しく紹介しています。

1日1500mlの水分摂取と並行すれば意識がはっきりしてきますので、誤嚥(ごえん)も起こしにくくなるはずです。
「食べたいものが食べられる」という喜びは、ご本人を元気にしてくれるにちがいありません。


● 食べるものの工夫で1500キロカロリーはクリアできる
1日1500キロカロリーといえば、成人女性の1日の標準摂取量よりやや少ないくらいの量です。
ご高齢で食が細くなっている方には「多い」と感じてしまうかもしれません。
1日1500キロカロリーを摂るための工夫を聞きます。

「ポイントは、少ない量でカロリーを多く摂ること。
高たんぱく高カロリーなメニューが基本です。
意識してカロリーが高めのものを食べれば、1500キロカロリーを満たすのはそれほど難しくありません。

特に食べる力が弱まっている方の場合、栄養バランスを考えるより、とにかく必要カロリーを満たすことが優先。ご本人が食べられるものからはじめるのが大切です。
お菓子でもお肉でも、好きなものを好きなだけ召し上がっていただきましょう」

食が細くなった方でも「これなら食べられる」というものが、ひとつくらいあるもの。
体力がついてくれば、だんだん他のものも食べられるようになってくるそうです。

「手軽にカロリーアップする方法として、白いご飯に工夫するのもおすすめ。
卵かけご飯やとろろご飯にすると、おいしく食べやすくなります。
食材を増やすのが大変なら、市販のプロテインパウダーや粉飴を混ぜてご飯と炊くと良いですよ。少量のご飯でもカロリーを増やせますし、「ご飯が甘くておいしい」と喜ばれます」と中村さん。

食べる方もつくる方も、無理なくカロリーを満たせるメニューにすることが大事だということですね。

高齢者の低栄養には「たんぱく質」が欠かせません。
手軽にたんぱく質とカロリー摂取できるものとしては、牛乳もおすすめです。
就寝前の一杯で、ぐっすり眠れる効果も期待できますよ。

次回は、4つの基本ケアのうち残る2つ、「運動」と「自然排便」についてまとめます。

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【「元気になる介護」のための4つの基本ケアについて】
「生きる力」を目覚めさせる!元気になる介護生活のつくり方

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