「問題のある親」の介護をしたくない、あなたへ
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。 親に介護が必要になったとき、あなたはどんな気持ちになりましたか?
「どうして私が親の面倒をみなければならないの?」
「これまであんな扱いを受けてきたのに、支えるなんてとても無理だ」
「いまさら、私にたよってくるの?」
その一方で、親からの要求を拒めない自分もいて、心が押しつぶされそう...。
親と子の関係は複雑で、各家庭で異なります。
親から支配されてきた記憶
親に傷つけられてきた記憶
「なぜ、私があんな親の介護をしなきゃいけないのか」
介護を拒みたい感情の一方で、それでも「私がやらなければ」という相容れない気持ちになる。
そんなあなたの心に寄り添い、自分自身を守るためのヒントをお伝えします。
● 心に刻まれた「親と子の関係」に及ぼす影響
世の中には「問題のある親」が存在します。
無関心、暴力や暴言、過剰な干渉など。
自らの身勝手から、子どもを振り回し、迷惑をかける親もいます。
子どもの心に深い傷を残すこれらの行為は、人格形成にも影響すると言われています。
親の期待に応えなければ「見捨てられる」「罰を受ける」といった恐怖と、それでも「良い子」であろうとする心理状態。幼少期を経て、大人になっても変わることのないもの。
「親を支えるのは子どもの義務」
「自分が親の面倒をみるのが当たり前」
そのように思い込んではいませんか?
親を拒みたくても拒めない、介護なんてしたくないのに義務感から逃げられない。
もしかするとそれは、過去から続く「親と子の関係」が影響しているかもしれません。
● 「世間体」と「親への期待」から抜け出して
「介護が必要な親を放っておいたら、近所や親戚からどう思われるか」
「冷たい子だと思われたくない」
いわゆる「世間体」です。
世間体が、親との関係に苦しむ子の心をさらに苦しめるものです。
けれども、世間体や周囲の人が知る一般的な「親孝行」や「家族の絆」といった価値観は、はたしてあなたの置かれた状況に当てはまるものでしょうか?
親と子の関係で役割を果たせなかったのは、あなたではなく、むしろ親のほうかもしれません。
今になってあなたひとりが「子の役目」を背負わなくても良いと私は思います。
介護をきっかけに、親が変わってくれる。
そんな期待もあるでしょう。
親が自ら過去を振り返り、「あのときはごめんね」「感謝している」と言ってくれるかもしれない。
幼いときから今に続く、自分の気持ちが救われるかもしれない。
そんな思いが心にあるのではないでしょうか。
でも高齢になった親が自らの考えや態度を変えることは、ほとんどないのが現実かと思います。
年齢を重ねる不安や体力の衰えから、自己中心的で支配的な態度を強めることさえあります。
こう考えてみませんか?
「親は変わらない。それなら、それでいい」
親子に限らず、自分以外の他人を変えることはできません。
でも自分自身の考えを変えることはできます。
「親は変わらない」と考えることで、あなたの気持ちが軽くなるかもしれません。
親をどうするかではなく、あなた自身がどうしたいかを考えてみてください。
● 世間の目と親への期待から自由になるために
世間体や親への期待にとらわれていると、ますます疲弊します。
親の介護にどれだけかかわるかは、あなた自身で決めて良いのです。
「どこまでかかわるか」を線引きし、自分にとって無理のない距離を保つこと。
直接会わない
金銭のサポートだけする
行政や介護施設に託す
これらはすべて正しい選択です。
親を見捨てるのではなく、自分を守るために行動することが大切。
「私はここまで」と決めた範囲で対応し、それ以上を期待されても、求められても応えないと決めても良いのです。
それは今以上に親子関係を壊さないために必要なことかもしれません。
親に対する感情が複雑で苦しいとき、その心の重さを無理に否定する必要はありません。
自分が抱える傷や葛藤と向きあい、「私の人生は私のものだ」と気づいてください。
「あなたの人生は、あなたのもの」です。
親の介護をすることも、しないことも、どちらもあなたの選択しだい。
それはあなたが自分の人生を生きるための行動であり、どんな選択でも正解なのです。
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