転倒事故は誰のせいでもない!在宅介護で「歩く自由」を奪わないために

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転倒事故は誰のせいでもない!在宅介護で「歩く自由」を奪わないために

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

前回から「高齢者の転倒」をテーマに集中連載しています。
初回は高齢者が転びやすい場所やタイミングについてまとめました。

転倒はどんなに気を付けていても避けられないものです。
若くて元気でも転ぶ時は転びます。
高齢者にとって、歩く・立つ・座る・ドアを開ける・靴を履くなど、あらゆる日常動作が転倒のリスクです。100%転ばないようにすることなど、誰にもできません。

転倒予防を徹底しようとすれば、おのずと行動を制約するようになり、「ひとりでやらないで!」「危ないからちょっと待って」などと、介護家族が手出し・口出しする場面が多くなりがちです。
ただ、果たしてそれは、ご本人にとって幸せなことなのでしょうか?

今回は、「転倒予防」と相反する、「歩く自由」がテーマです。
介護家族が心配する「転ばないでほしい」という思いと、人としての当たり前の権利である「自分の意思で歩く」をどのようにしていくかまとめます。

【あわせて読みたい!集中連載「高齢者の転倒」】
(1)高齢者が転倒しやすいタイミングと場所

● 家族から「危ないから」と言われるストレス
もしあなたが、「転んだら大変」といちいち手を出されたり、外に出るのをとがめられたりしたら、どう感じますか?
きっと「わずらわしい」「放っておいてよ」などと思うのではないでしょうか。
その気持ちは、高齢者にとっても、たとえ要介護になっても、変わるものではありません。

ご高齢の方は、年齢を重ねれば重ねるほど増えていく「できなくなったこと」への喪失感を心のどこかに持っています。

「危ないから」と干渉されることは、私たちが思う以上に自尊心が傷ついたり、受け入れがたかったりすることを、介護する側の方も少しだけ想像してほしいのです。
案じて言ったことや、やってあげたことが、ストレスになっているかもしれません。

人によっては、転んでも良いから自分の意思でやりたい、行きたいということがあります。
「転ばない安全」と「歩く自由」。
どちらを優先するかは、周りの人が決めるものではなく、ご本人が決めることです。

自分らしく生きるための選択の権利を、誰かに委ねたい人などいないと思います。
「危ないからやめて」と声掛けをすることがある方は、このことを一度、想像してみてください。

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● 「なぜ転んだらダメなのか」をあらためて考えてみる
「高齢者の転倒は、寝たきりに直結する」というイメージがないでしょうか?
「転ぶことは悪いこと」「転ばせないことが家族の責任」と考える介護家族は少なくありません。

転倒させないよう、四六時中張りつめていませんか?
もしそうなら「なぜ転んではいけないのか」を客観的な視点で整理することをおすすめします。

「もし転倒すると、どのような不利益が生じるのか?」を書き出してみてください。
その不利益で困るのは、ご本人ですか?ご家族ですか?

たとえば階段での転倒・転落。
健康な方であっても命に関わる大事に直結します。
たとえば日中、ご家族が不在になるご家庭環境の場合。
転倒で歩けなくなったら、誰が日中の時間帯を見るのか。

転倒すれば、不利益が生じます。
その不利益で困るのは誰かを整理することが大切です。
「たとえ転んでも、これだけは自分の意思でやりたい」「誰にも手出ししてほしくない」と思うことがあるなら、できるだけそれを尊重してあげるのが理想。
転んでしまった時、生じるご自身の不利益を認識してもらってください。

「危ないからやめて」は、通じないものです。
客観的な情報を整理しながら、何が問題なのかを見極めていくことが大切。

かかりつけ医やケアマネージャーに転倒してしまった予後についても聞いておくと、より具体的にイメージが共有できると思います。

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● 転倒予防は「さりげない介入」がポイント
話し合って、情報を整理していくと、「問題はどこにあるのか」「どうするのが一番良いのか」が見えてきます。
「転ばない安全」と「歩く自由」の二者択一ではなく、「本人に任せて良いところ」「ご家族が介入したほうが良いところ」の折り合いの付け方も見えてくるはずです。

「こういう時が転びやすい」「ここで転んだら本当に危ない」という場面を見極めることがポイント。
転倒の影響が大きい(その後の生活が大きく変わってしまう、生命予後に関わるなど)場所や行動については、「ここだけは手伝わせて」と事前に伝えて、本人にも納得してもらう必要があります。

それ以外はある程度割り切って、ご本人のやりたいようにしてもらう。
このような折り合いの付け方ができるようになります。

ご本人が干渉を嫌がっても、ご家族が見ていて危なっかしいと感じる場所では、椅子を置いたり、手すりを付けたりすることで、転倒のリスクを軽減することが可能です。
歩行そのものがつらそうなら、しっかり支えてくれる4点杖やカートなど、「こういうものがあるけど、試しに使ってみたら?」とさりげなく渡してみるのも良いかもしれません。
最近は病院の外来に車椅子が置いてある並びに高齢者用の歩行器が置いてある場合があります。受診の際、お試しに利用して、使う感じを体験して貰うのも良いと思います。
もちろん、ケアマネジャーに相談すると、福祉用具のお試しなども紹介してくれるはずです。

「転んだら危ないからこれを使って!」と強制すると、自尊心を傷つけてしまう可能性もあります。
しかし、タイミングを見てさりげなくご家族が介入し、ご本人が「こっちのほうがラクだな」「安定感があるな」と思えば、自然と取り入れてもらえるはずです。

本当に大切なのは、転ばないことではなく、ご本人がどうしたいのか。
「自分の意思でやりたいことを継続するために、どこをサポートすれば良いのか」という視点で、転倒予防について考え直してみてくださいね。

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