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認知症の方の熱中症を防ぐには

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

水分補給の方法を工夫しましょう。初夏の日差しがまぶしく輝く季節を迎えました。
これからの季節、在宅介護のご家庭では、介護される方の熱中症をご心配されているかもしれません。

要介護の方、とりわけ認知症の方は、熱中症対策が難しいものです。
今回は、認知症の方の熱中症対策をまとめます。

「熱中症が心配だから、水分をこまめに摂ろう」など、理屈にかなった対処行動ができない方が少なくありません。
身体機能の低下で暑さ・寒さの感覚が鈍く、季節にあわない服を着こんでしまうなど、着衣に苦労されているご家庭も多いでしょう。

認知症の方は、その方なりの「こだわり」を持っているものですが、一般的な常識と照らして不適切なこともあるものです。

ポイントは、認知症の方の「こだわり」と戦わないこと。
ご本人の意思を尊重しつつ、熱中症から命を守る方法を詳しくまとめたいと思います。

● 認知症の方の水分補給・室温管理は「見守り」が重要
熱中症対策には水分補給がとても重要。
認知症の方の水分補給は、サポートがかかせません。

こまめに声かけするのはもちろん、飲み物を手渡して、目の前で飲むところを確認するまで見守るのが理想です。
普段は「水分を摂る」という行動に支障がない方も、そのときの体調や精神状態によっては、うまくできないこともあります。

熱中症予防には、水分補給が本当に重要なので、できるだけ本人任せにしないことが大切。
訪問介護サービスを利用しているご家庭は、摂取した水分量がカウントできるよう、ご家族とヘルパーで記録表を共有して、誰が見ても「いつ・どれくらい飲んだか」がわかるようにしておくと良いでしょう。ペットボトルに入っている水やお茶、ペットボトルの外側にマジックなどで100cc,200ccと書いておくと、本人とも一緒に確認ができますね。

ご家族がずっとそばにいられない場合は、熱中症のリスクが高い時期だけ、訪問介護サービスの回数を増やす方法もあります。
「何度言ってもエアコンを消してしまう」「冷房ではなく暖房をつけていることに気づかない」といったケースでも、やはり訪問介護サービスの回数を増やす方法が有効です。

たとえば、朝と夕方の2回のところ、日中もう一度ヘルパーさんに入ってもらう。
そうすれば、水分補給の見守り機会が増えますし、もしエアコンを消してしまっても、室内の温度が上がりきる前に次の人に対応してもらえます。

ご家族の心配をケアマネジャーに伝えれば、ケアプランの変更を検討してくれるはずです。

【あわせて読みたい!水分補給のコツ】
高齢者のための熱中症対策
在宅介護で自立支援につながる「水分」と「食事」の摂り方


● 熱中症のリスクが高まる認知症の方の「衣服の問題」をどうするか?
暑い日に冬物の衣服を着たがったり、何枚も着こんだり、介護家族が熱中症対策をがんばっても、認知症の方の「こだわり」が熱中症対策にそぐわないケースは多々あります。

介護する方からすれば、理不尽でしょう。
しかし認知症のご本人には、そこにこだわる理由があるものです。

暑くても、なじみのあるものに安心するだとか、なじみのものを心の拠りどころにしたいだとか、「こだわり」には理由があるのでしょう。

何枚も着こんでしまうのも、「脱いでから着る」という行動が抜け落ちているだけで、ご本人は、「ちゃんと服を着なければ」「身だしなみをきちんとしなければ」という意識を保っているのかもしれません。

熱中症対策の一般的な常識や介護する方の価値観で「こだわり」をやめさせようとすると、お互いに疲弊しますし、BPSD(認知症の行動・心理症状)がひどくなってしまう場合もあります。

熱中症対策として、衣服の問題を解決したいなら、ご本人の気持ちを想像することが大切。
手放せない服があるなら、その理由はどうしてなのか。
どのような伝え方をすれば、安心してもらえるのか。
熱中症は、身体に籠った熱を上手に外に逃がせないことで起こりやすくなります。このような時は、体全体を流れている太い血管を冷やすことが効果的です。この原理を衣服に当てはめると、襟ぐりが開いているもの、脇の下に空気の流れができる半袖、同じく空気の流れを作りやすい裾幅の広いズボンなどを本人の好みの衣服から探して提案してみるのも一つの方法です。

季節にあった新しい服も、着脱がラクで、着心地がいい素材の服だったりすると、新たなお気に入りになることもあります。

ご本人が「こうしたい」という意思が明確な部分は、ある程度は尊重する。
介護者として譲れない部分があるなら、まずはご本人の気持ちになって考えてみる。
介護する方がそのような「心のゆとり」を持つと、結果的に介護がスムーズになることも多いのです。

【あわせて読みたい!「お気に入りの服ばかり着る」認知症の方への対応】
認知症の方への対応で困っている介護家族に伝えたいこと


● 認知症の方と折りあいをつけて熱中症を予防する方法
「毎日お水を1リットル、無理にでも飲んでもらう」のは大変ですが、ご本人が好きなもの、安心できるものなら、口にしてくれるのではないでしょうか。
熱中症対策としての水分補給は、あたたかい紅茶でも、ジュースや炭酸飲料でも良いのです。
但し、疾病による糖質制限のある方は、主治医に相談のうえ、指示に従ってください。

また、夏に旬を迎える果物には、水分が豊富に含まれています。
すいかや桃、ぶどうなど、昔からある果物がお好きなご高齢者は多いです。
食べやすくカットして、冷蔵庫の目に留まるところにいつも入れておくと、すすんで食べてくれるかもしれません。

最近はスーパーでカットフルーツなどもいろいろな種類のものが売っているので、そうしたものも上手に活用しながら、不足した水分を補いましょう。カットしたフルーツが入っているゼリーなども美味しそうに売られています。但し、これはフタがきつく密閉されており、高齢者はなかなか開けられないものです。このような食品を勧める際は、カップから取り出しガラスの器に移し替え、食べやすく、見た目も涼しげな状態にして、冷蔵庫の目に留まるところに入れておきましょう。
こちらも疾病による糖質制限のある方は、主治医に相談のうえ、指示に従ってください。

果物以外でも、かき氷やアイスクリーム、冷たい水で冷やしたキュウリやトマトなど、昔ながらの「夏の風物詩」なら、なじみのあるものとして受け入れやすいかもしれません。

そもそも、暑さ対策や夏バテ対策は、エアコンのない時代からあったものです。
ご本人の生活習慣や文化になかったものを無理に取り入れるより、子ども時代の話を聞いて、なじみのある「暑さをしのぐ暮らしの知恵」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

認知症の方の「こだわり」を、「やめさせるべき困った行動」と決めつけて戦うのはやめましょう。
ご本人の今を「これまでの人生そのもの」と受け止め、あなたから歩み寄ってみてください。
そこから見えてくるものには、課題解決のヒントが隠れているはずです。

ご本人が受け入れやすいやり方、介護者として妥協できるところを見つければ、認知症の方の熱中症対策はラクになります。
「こうすべき」にとらわれすぎず、おおらかな気持ちで元気に夏をお過ごしくださいね。

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