[集中連載「認知症4」] 認知症の方への対応で困っている介護家族に伝えたいこと

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[集中連載「認知症4」] 認知症の方への対応で困っている介護家族に伝えたいこと

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

「本人が良いなら、それで良いか」と割り切って考えることが大切です。これまで3回にわたって、認知症の方の「困った」に対応する方法をご紹介してきた[シリーズ認知症]。今回がシリーズ最終話です。
シリーズのまとめとして、認知症の方を介護する心構えについて取り上げます。

いくら説明してもわかってもらえない、やってほしくないことを繰り返されるといったことは、介護する家族にとって、とてもつらく厳しいものです。
それでも、必死で向き合い、投げ出さずに今日まで介護を続けてきたことは、すばらしいと思います。

介護する方のなかには、「ちっともうまくいっていない」「後悔ばかりしている」という方も多いでしょう。
それでもいいのです。

認知症の方の介護は、いかに気持ちを切り替えて明日に向かえるかが大切。
過ぎたことよりも、これからどうしていくかを考えていきましょう。

認知症の方のお世話で息が詰まったときに気持ちを軽く、ラクにするコツをまとめます。

● 介護する側にばかり苦労を強いられる現実
認知症の方の介護では、「本人が言っていることを否定しない」「本人がしようとしていることを無理に止めない」といった対応方法がよく紹介されます。
今回の連載でも、認知症の具体的な「困った」症状とともに、介護する人の常識や価値観では測れないこと、否定や抑制は症状を悪化させる可能性があることなどを、繰り返しご説明してきました。

【集中連載「認知症」シリーズ】
こんな時どうすれば?「被害妄想」への対応方法
こんな時どうすれば?「同じ質問」「同じ買い物」を繰り返す方への対応方法
こんな時どうすれば?「暴力や暴言」への対処方法

認知症の方の介護で毎日大変な思いをしているご家族からすれば、「介護する側ばかり苦労を強いられている」「私はいったい何なんだろう...」このように感じることもあるかもしれません。

やり場のない怒りや悲しみなど、誰にも言えない複雑な感情は、介護する方を追い詰めます。
このような気持ちからうまく抜け出さないと、介護そのものがマイナスの循環に陥りかねません。


● 認知症の方にあわせるのは「自分のため」
認知症の方の言動を否定しないことは、症状を緩和するための対応として必要であるだけではありません。
ご自身のためにも、ぜひそうしていただきたいのです。

介護する方は「何とかしなくては」と思いがちですが、認知症は思うようにならないことが多いもの。
その場ではうまくいったように思えても、すぐに覆されてしまうこともあるのではないでしょうか。

ですから、状況を変えることに腐心するより、受け入れて、受け流すことが大切。
これがうまくできるようになると、認知症の方と過ごす日常が、ずいぶんラクになるはずです。

自分がこれ以上つらくならないために、「そうか、そうか」と聞いてあげる。
他の人に迷惑にならない行動でないなら、「まあ、いいや」と受け入れて、あれこれ考えるのをやめる。

このような思考習慣を意識的につくると、今まで手をかけていたことのなかに、放っておいても問題ないことに気づけるかもしれません。
ご自身が今までがんばりすぎていたことに気づき、「やらなくてはならないこと」を少しでもいいから手放してください。


● 認知症の方の行動・好みのパターンにあわせて簡素化を
相手にあわせながら、手をかけなくても問題ないところはうまく抜いていくのが、認知症の方の介護のコツです。

たとえば、「お気に入りの服ばかり着る」というケースで考えてみましょう。
汚れたら洗いたいし、同じ服ばかり着ていたら世間体も悪いし、ご家族としては別の服も着てほしいと思いますよね。
でも、ご本人にはその服が気に入っている理由があって、こちらの理屈でそれを変えることはできない。と考えれば、放っておくこともできます。

どうしても気になるなら、着てほしい服はご本人が手に取りやすい場所、よく目につく場所に置いてみてください。認知症の方は、視野も含めて、認識できる範囲が非常に狭くなるので、「目線の高さ」に置くことがポイントのひとつです。
着脱がラクで、着心地がいい素材の服だったりすると、新たなお気に入りになることもあります。

「これなら着てくれる」という服があれば、似た服を探して、洗い替え用に何枚かまとめ買いしておくのも良いでしょう。
「別の服を着てほしい」という希望はかなえられないかもしれませんが、洗濯することはできますよね。
「いつも同じ服でご近所やデイサービスの人からどう思われるか...」といった世間体を手放せば、妥協できるのではないでしょうか。

認知症の方によくあることですが、新しいものや馴染みのないものより、同じもの・似たようなもののほうが、安心して受け入れやすいようです。
これは衣服だけではなく、食事もそうです。

つくる側としては、「飽きないように、栄養バランスも考えて献立を工夫しよう」などと考えがちですが、認知症の方は、馴染みのない食べ物には手を付けたがらないことが少なくありません。

「これなら食べてくれる」というものがあるなら、同じメニューが続いても良いのではないでしょうか。
栄養面が気になるなら、たんぱく質は牛乳やヨーグルトでも良いし、ビタミンは野菜ジュースでも摂れます。
そもそも、それだけの栄養管理が本当に必要なのでしょうか?考えてみましょう。

認知症の方の介護では、「〇〇してくれない」ということで戦わないでください。
それよりも、ご本人の習慣的な部分を崩さないようにするほうが大事なことです。
困った行動のきっかけになりやすい「余計な不安」や「拒否感」を与えずに済みます。

ご本人の行動や好みのパターンをよく観察し、それにあわせてみてください。
受け入れてくれるものを見つけ、「本人が良いなら、同じで良いや」と割り切ると、日常のお世話がシンプルになります。
ご自分の気持ちが少しラクになり、お互い笑顔で向きあう時間を増やすこともできるかもしれません。

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