[ビジネスケアラーシリーズ(4)]介護の悩みを誰に相談する?
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
仕事と介護の両立にはサポートしてくれるチームが不可欠です。
介護サービスを利用したり、介護のプロに頼ったりして介護の負担を分散しましょう。
チームの層が厚いほど仕事との両立がしやすくなります。
とはいえ、ビジネスケアラーの負担は体力的なことだけではありません。
介護者としての「心の疲れ」は後回しにされがちです。
仕事でかかわる相手に、ビジネスケアラーとしての悩みは口にしにくいもの。
「家の事情で職場に迷惑をかけている」と負い目を感じている方もいるでしょう。
会社でグチを言うなんてもってのほか、先の見えない不安ややり場のないいら立ちをひとりで抱え込んでしまうことが少なくないようです。
今回は、ビジネスケアラーの「心の負担」を分散する方法を考えます。
【あわせて読みたい!シリーズ「ビジネスケアラーのリアル」】
・仕事を続けるべき?辞めるべき?
・在宅介護は8割がたうまくいかない
・仕事と介護を両立するためにやっておくべきこと
● 介護のイライラモヤモヤを放置するべきではない
介護サービスに頼っても、介護者がストレスから解放されるわけではありません。
介護以外の日常生活、仕事のストレスなど、ビジネスケアラーは常にいろいろなことを抱えています。
時間や心のゆとりがないときに、介護が必要な親と意見や感情がぶつかりあったら?
精神的に疲れているときに大人の対応なんてなかなかできません。
怒りが抑えきれない、何もかも投げ出したくなるなど、普段とは違う感情に翻弄されることもあるでしょう。
激しい感情は少し経てばおさまるものですが、時間が経てばなくなるというわけでもありません。
イライラやモヤモヤが少しずつたまって、心に暗い影を落とします。
楽しそうに笑っている人達をみて、急に涙が込み上げてきたり、何かをきっかけに、急に怒りがフラッシュバックすることもあります。
放置すれば、恨みや憎しみといった感情が芽生えたり、抑うつ状態に陥ったりすることも。
メディアで報じられている高齢者虐待やネグレクトなどの問題は、決して極端な例ではないのです。
ビジネスケアラーは、怒りや不満の感情にふたをしないことが大切。
介護が必要な親に対してネガティブな感情を持つことは、決して悪いことではありません。
「自分の心の声」にしっかり耳を傾けてあげてください。
わきあがる感情を否定したり、やり過ごしたりせず、自分の気持ちと向き合ってみましょう。
● 気持ちの「棚卸し」と「整理整頓」でできるメンタルケア
ときどき、自分と対話する時間を持つことをおすすめします。
そのときどきで抱いた感情や気持ちを思い出して棚卸し、客観的に観察することがポイントです。
頭のなかであれこれ考えているだけでは、イライラが余計に拡大してしまうだけ。
あまり深く考えず、そのとき心に浮かんだことをスマートフォンのメモや日記などにそのまま書き残してみてください。
「今日、こんなことを言われて腹が立った」など1~2文で良いと思います。
あとからまとめて見返してみると、怒りの種類や自分がイラッとするきっかけや傾向が見えてきます。
時間を置くと、客観的にそのときのことを思い出すこともできるはずです。
「なんで私はあんなに怒ったのだろう」「このモヤモヤの正体はなんだろう」と原因を探っていくと、冷静になれますし、「よく考えたら、たいしたことではない」と切り替えられることもあると思います。
あるいは、子どものころや若いころに親に言われた言葉や態度に起因していることに気づくかもしれません。
親に対してわき上げる感情は決してシンプルなものではありません。
その感情の正体がわかれば、かかわり方を考え直すきっかけにもなります。
「私が怒るのも当然」と腑に落ちれば、自分自身を許すことができ、心が軽くなることもあるでしょう。
こまめに気持ちを棚卸しして、整理整頓しておくことが大事。
雑然としたままでは、仕事と介護を両立する心のゆとりは生まれません。
● 身近に「相談できる人や場」を見つけましょう
考えなくてはならないことが山ほどあるビジネスケアラーの場合、自分の心の整理が追い付かないこともあるでしょう。
そんなときは、「介護のグチを言いあえる人」や「介護のことを話せるコミュニティー」で本音を吐き出してスッキリしましょう。
自分の気持ちを人に話すことは、ストレスを軽減に効果的です。
親の介護をしている、していた人ならば、お互いの気持ちをわかりあえるはず。
身近にそうした人がいない場合、「家族会」に参加するのがおすすめです。
家族会は、介護者同士が悩みや不安を話し合ったり、情報交換をしたりできる「わかちあい」の場。
介護仲間の会合だと考えてください。
介護経験者にしかわからないような、キレイ事ではない本音を語り合えば、「自分だけではない」と気持ちがラクになりますし、介護サービス事業所の評判や介助のコツなど介護生活に役立つ情報も得られるかもしれません。
家族会には、いろいろなカラーがあります。
ケアマネジャーに聞いてみたり、地域包括センターなどでたずねてみたりして、自分にあった家族会を探してみましょう。
義務で行く場ではないので、気負わずいくつかの家族会に参加してみると良いですよ。
また職場でも同じ年ごろの親を持つ上司や同僚のなかに介護仲間がいるかもしれません。
思い切って自分の話をすれば、共感や理解を得られることもあるのではないでしょうか。
会社に相談して、家族を介護している従業員同士が気兼ねなく話し合える場をつくる提案してみるのも良いかもしれませんね。
仕事と介護を両立するなら、「在宅介護を支えてくれるチーム」と同じくらい、「自分の心の支えとなる同志」も必要です。
何故なら介護の負担はあなたの身体にだけでなく、むしろ心にのしかかるものだからです。
あなたはひとりではありません。
あなたと同じ境遇の人はいます。
暗い気持ちに閉じ込められて、出会いや交流を拒むのはもったいないことです。
心を開いて、一歩を踏み出す勇気を出して、介護仲間を増やしてくださいね。
【あわせて読みたい!関連コラム】
■介護メンタルをアップする心の処方箋
ストレスはビジネスケアラーの大敵ですが、忙しさにかまけて自分の心をおろそかにしがち。
今すぐにできる、イライラやモヤモヤを落ち着かせる方法を紹介しています。
■同居介護に欠かせない「サードプレイス」を見つける方法
仕事とも介護とも離れて、ただの「わたし」になれる場所。
ビジネスケアラーにはサードプレイスを持つことも必要です。