[ビジネスケアラーシリーズ(2)]在宅介護は8割方うまくいかない

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[ビジネスケアラーシリーズ(2)]在宅介護は8割方うまくいかない

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

完璧である必要なんてありませんよ。働きながら介護にあたる「ビジネスケアラー」をテーマに連載しています。
働きながらの介護は本当に大変。

「うまくできない」
「思うようにいかない」

十分がんばっているにも関わらず、より完璧であろうと自分を追い詰めてしまうケースは少なくありません。

在宅介護は、ままならないことのほうが多いもの。
完璧である必要なんてありません。

今回もビジネスケアラーの事例からヒントを見つけ、介護者を追い詰めるものについて考えてみましょう。
少しでも明るい気持ちで、働きながらの介護に向きあえますように。

「働き盛りのAさん」「テレワーク勤務中のBさん」「育ち盛りの子を持つCさん」それぞれのエピソードはこちらからご覧ください

【母親思いなDさんの例】
会社員Dさん。
脳梗塞でわずかな麻痺が残る状態の母親を在宅介護中です。

杖や車いすを併用しながら生活しています。
Dさんが勤務する平日は、デイサービスとデイケアに交互に通い、週末はDさんが散歩に連れ出すなどして運動や外出機会を確保。
食事にも気を配り、タンパク質を取れるメニューを意識しているそうです。

母親の介護中心の生活を送るDさんですが、母親は。
「リハビリがつらい」
「疲れた」
「こんなにたくさん食べられない」など、たびたび不服を口にするように。

忙しい仕事の合間を縫ってケアマネジャーと話し合ったり、身体に良いメニューを考えたりしているDさん。
「母のためにこんなにがんばっているのに、なぜ伝わらないのか」とむなしさを感じることがあるそうです。

【几帳面なEさんの例】
長期入院していたEさんの父親は、自宅療養に切り替えた後、ほぼ寝たきりの生活を送っています。

Eさんが仕事に出かける日は、訪問看護師が必要なケアに対応。
在宅勤務の日は、Eさんが体温、脈拍数、血圧、尿量などをきちんと計測し、訪問看護師に共有しています。

毎日バイタルをチェックしているEさん。
わずかな変化にもすぐに気がつきます。

先日も気になることを訪問看護師に相談しましたが、「心配しすぎなくても大丈夫」と言われたそう。
父親の状態をしっかり把握しておきたいEさんは、「ちゃんと父を看てくれているのだろうか」「自分がいない間に何かあったら...」と不安でなりません。

● 介護に「仕事のやり方」は当てはめられない
DさんとEさんのエピソードは、まったく違う話のようですが、実は共通していることがあります。
どちらも計画性や数字管理を意識しすぎているところ。まるで仕事のようです。

母親がまた歩けるようになって以前のような生活が送れるようになってほしいDさん。
目標達成のために何をすれば良いのかを考えて、計画的に実行しようとしています。
しかし、連日のリハビリや外出で当の母親は疲れてしまっているようです。

寝たきりの父親がこれ以上悪くならないようにしたいEさん。
そのために父親の状態をデータで把握して、変化への対応や改善に活かそうとしています。
しかし、高齢の要介護者の体調は日によって異なり、微妙な数値変化だけでは判断できないものです。

目標を決め、達成するための行動を具体的に考え、実行する。
業績や成果を求められる仕事の世界では当たり前のようにおこなわれていることだと思います。
介護のケアプランを検討する際にも目標や行動の具体策を用いられていますが、必ずしも成果には直結しないのが仕事とは異なるところです。

介護者がどんなにがんばっても、「人」を相手にしている以上、自分の思いどおりにはならないのは当たり前。
相手にも意思があり、身体の衰えや変化は本人にもどうにもできません。

普段の仕事のやり方や考え方を介護に当てはめようとすると、「がんばり」と「うまくいかないこと」とのギャップに苦しむことになりがちです。


● 「8割方うまくいかない」を当たり前にする
「また元気に歩けるようになってほしい」
「現状を維持して、少しでも長生きしてほしい」

当然の願いです。
しかし、それを在宅介護における目標と混同すると、ご自身も介護される親もつらい思いをすることになりかねません。

あなたが目指していることは、誰にとっての目標なのでしょうか。
介護されている方は、本当にそれを望んでいるのでしょうか。

もしかしたら、「●●するべき」「●●しなくてはならない」という自分の思いを、介護される人や周囲に押し付けようとしているだけなのかもしれません。

Dさんの事例なら、「自分の考え」ではなく「母親がどうしたいか?」という視点から、もう一度ケアプランを見直すべきかもしれません。
身体状態が変わってくれば、ケアプランを決めた当初とは異なる気持ちを口にすることもあるでしょう。
介護される人が無理のない範囲で継続できることが大切。
母親の気持ちを尊重し、「完璧じゃなくて良い」というおおらかな気持ちを持つことも自分自身の救いになります。

Eさんの事例なら、数値管理にとらわれすぎず「気を付けて見ておくこと」を明確にしたほうが良いかもしれません。
かかりつけ医や訪問看護師に相談すれば、現状や予後を詳しく教えてもらえるはずです。
そのなかで「医療機関への連絡が必要なケース」「様子見をして良いケース」を、できるだけ具体的に聞いておく。
それでも心配なら、ケアマネジャーに相談してチームでの見守り体制や情報共有方法について、改めて話し合っておくと安心できるでしょう。


● 介護は「うまくいかない」ものなのです!
介護における正解とは、とてもあいまいでとらえどころのないものです。
相手によって、日によって、正解が異なります。
たとえ不正解の原因がわかっても、明日にはまた答えが変わっているかもしれません。

ビジネスの常識や価値観で考えてみても「たいていはうまくいかない」のが介護。
思いどおりにならないことにがっかりする必要なんてありません。

「なぜうまくいかないのか」を追求しすぎないことが大事。
うまくいかない悔しさや不満は、ヘルパーやケアマネジャーにも共有してください。
ひとりで抱え込まず、みんなが知恵を出し合うことが、より良い介護につなげる第一歩です。

完璧ではなくても、赤点ギリギリでも、良いのです。
1日の終わりには、「今日」を乗り切った自分をほめてあげてください。

介護をしていれば毎日いろいろなことがありますが、思い通りにいかなくても、大筋良ければすべてよし、「まあいいか」の精神が大切です。
明日またがんばるために、仕事と介護を両立していくために、ちょっとだけ意識してみてくださいね。


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