[ビジネスケアラーシリーズ(1)]仕事を続けるべき?辞めるべき?

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[ビジネスケアラーシリーズ(1)]仕事を続けるべき?辞めるべき?

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

車いす移乗に頼らない在宅介護のスタイルもあります。働きながら介護にあたる「ビジネスケアラー」。
年々増加傾向にあるそうです。

団塊世代が75歳以上を迎えるとされる「2025年問題」も迫りつつあります。
今後、ビジネスケアラーはさらに増加することでしょう。

介護と仕事を両立できないのか?
仕事は続けるべきなのか?辞めるべきなのか?

在宅介護というものは、十人十色です。
家族の数だけ、介護のカタチがあります。

少しだけ方法を工夫したり、考え方を変えたりすることで介護と仕事の両立ははかれると思います。
ビジネスケアラーの事例からヒントを見つけましょう。

【今が働き盛りのAさんの例】
働き盛りのAさん。
自宅で認知症の母親を介護しています。

日中は、デイサービスや訪問介護サービスを利用。Aさんはオフィスに出社しています。
サービスを利用することで仕事に集中できる環境を得られていますが、帰宅後は母親の徘徊(はいかい)に悩まされる日々です。

勝手に外に出てしまう、夜中に家のなかを動き回るなど、Aさんはゆっくり眠ることができません。
心身ともに限界を感じ「仕事を辞めないと身体がもたない」と思うようになりました。


【テレワークのBさんの例】
Bさんの仕事はテレワーク中心です。
テレワークをはじめた当初は「自宅で介護をしている父の面倒を見やすい」と前向きにとらえていました。

しかし、食事や排泄(はいせつ)の介助で仕事が中断されるようになります。
父親の要介護が進むと認知症状があらわれ、オンライン会議中に大声で叫ぶなど、仕事の支障は深刻になりました。

イライラして感情的になってしまうことも増え、「施設に入ってもらうか、自分が仕事を辞めるか」悩むようになっています。


【育ち盛りの子を持つCさんの例】
Cさんは育ち盛りの子を育てる主婦。
家計のためにパートの仕事もしています。

朝は会社や学校に行く家族を見送り、同居している母親をデイサービスに送り出し、家事をこなしてパートに出るのが日常です。

しかし、頻繁に母親がデイサービスに行くことを拒否するので、予定が狂うこともしばしば。
分刻みで毎日忙しいにもかかわらず、日中の用事がどんどん後ろ倒しになってしまうので疲れ果てています。

自分ばかり犠牲になっている気がして、何もかも投げ出したくなることもあるそうです。


● ビジネスケアラーに必要なスタンス
3人のビジネスケアラーの事例から何を感じられたでしょうか。
状況や環境はそれぞれ異なりますが、肉体的にも精神的にも追い詰められ非常につらい状況がうかがえます。

「仕事を辞めるしか...」と思い詰めてしまうのは、現状では十分に介護ができないと考えるからです。
介護は育児と違って成長に伴い手がかからなくなっていくことではなく、先行きの見えないモヤモヤした気持ちにもなりがちです。
また、仕事は辞められても、家族の介護は簡単に投げ出せないと考える人が多いこともそうです。

しかしながら、介護が終わったあとも、自分の人生は続きます。
そのことを忘れないでください。

一度辞めたあとに、再び就業するのは年月も経っていたりすると大変なことでもあります。
ご自分の老後の設計もあるでしょう。
まずは自分の仕事と自分の生活を中心に介護のことを考えてみてはいかがでしょうか。
あなたの仕事のキャリアや生活も尊重されるべき大切なことなのです。

仕事をしている自分が、できる範囲で介護もする。
ビジネスケアラーとして介護を担うなら、このようなスタンスに切り替えましょう。

自分の仕事を優先することで自分を責める必要はありません。
どんなに有能な人でもすべてを完璧にやるのは無理です。

自分が心や身体を壊して、介護が必要な家族との関係性が悪くなったりしては本末転倒。
介護と仕事を長く、両立するためには、考え方を切り替えることも大切なのです。


● 「できること」「できないこと」の線引きをする
たとえ自分の親でも、介護のすべてを子が負う必要はないと私は思います。
「母親の排泄(はいせつ)介助はやりたくない」とか、「夜は介護を忘れてゆっくり眠りたい」という気持ちがあるなら、その感情を抑え込む必要はありません。

その感情を実現するためのケアプランを考えることは決して不可能ではないのです。

たとえばAさんの事例なら、ショートステイやお泊りデイをできるだけ多く利用して仕事に集中する環境をつくるという方法が考えられます。

Bさんの事例なら、デイサービスに行ってもらう、訪問ヘルパーをお願いして一時的にカフェや屋外のテレワークブースなどを利用するなどの対応も可能です。

Cさんの事例なら、本人がデイサービスを拒否しても、あとは送迎スタッフに任せて自分は外出してしまっても良いと思います。

冷たいでしょうか?薄情でしょうか?
自分と仕事を大切にしなければビジネスケアラーは成立しません。

「ここまではやる」
「これ以上はできない」

この線引きを、自分なりにしっかり考えてみましょう。
この整理ができていないと、何かハプニングがあるたびに「もう仕事は続けられない」という思考に陥ってしまいます。

自立した在宅生活が継続できるよう支援するのが介護サービスです。
介護者であるあなたの生活を守ることは、結果、在宅生活の継続につながります。
自分が仕事をするために、介護サービスの利用頻度を多くしたり、今までとは違った使い方をしたりすることは悪いことではありません。

介護に必要なのは「熱いハートとクールな頭」。
親孝行したい気持ちや子としての責任感だけで介護は決して続きません。
介護は赤点で良いのです。赤点でも続けられることが大事なことだと私は思います。
人に任せたり、足りないところがあってもいいのです。

「今の自分はどこまでできるのか」「どうすれば仕事に集中できるのか」を冷静に考えましょう。

介護サービスのスタッフは、いつでもあなたの味方です。
悩んだらひとりで抱え込まず、ケアマネジャーやヘルパーなど話しやすい人に相談してくださいね。



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