在宅介護のコツ 「夢」や「目標」を持ちましょう

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在宅介護のコツ 「夢」や「目標」を持ちましょう

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

諦めてしまうのではなく、どうすれば「夢」や「目標」が実現するか考えてみましょう。年も改まり、寒さがいっそう本格化してきました。
皆さまはどんなお正月を過ごされたのでしょうか。

さて、今回のテーマは新年にふさわしく、要介護の方が「夢」や「目標」を持つことの大切さです。
在宅介護をしているご家庭では、日々の介護に忙しく、楽しみや希望を見つけるのが難しいこともあると思います。介護を受けているご本人にも、あきらめの気持ちや遠慮があり、「あれがしたい」「ここに行きたい」といった心の内を言い表せないこともあるでしょう。

しかし「夢」や「目標」を持つことは、決して悪いことではありません。
むしろ在宅介護に良い影響をもたらすものだと言えます。

「もう一度、山登りがしたい」
「娘夫婦や孫たちとレストランで食事がしたい」

いまの身体の状態では到底、無理だと思えることでも良いので、言葉にしてみませんか?
今回は、「夢」や「目標」がもたらす効能と、実現するための方法についてご紹介します。

● 「できない」「危ない」に縛られていませんか
ご高齢の方は、病気やケガなどをきっかけに要介護になることが珍しくありません。
それまで元気に歩いていたのに、わずか数日の入院期間に急激に身体機能が衰え、歩行困難になってしまうこともあります。

要介護認定では、専門家が現在の身体機能を評価して「できること」「できないこと」を見極め、その結果をもとに要介護度や必要な介護サービスを決めていくのですが、ご本人やご家族は「昔は簡単にできたことが、人の助けを借りないとできなくなってしまった」という現実に向き合わなくてはなりません。

とてもつらいことですし、在宅介護がはじまってからも希望が持てなくなってしまうかもしれません。

しかし、たとえ介護や医療の専門家が「いまの身体では難しい」と判断したことでも、そのまま受け入れてあきらめてしまうのは、もったいないことです。

周囲からの「危ない」「できない」という言葉に縛られて、ご本人が意欲を失ってしまうこともあります。
できないことが当たり前になって、がんばることをやめてしまうと、身体の機能がさらに衰えてしまうこともあります。

ご本人がやりたいことがあるならば、それを否定することは誰にもできません。
あきらめるのではなく、どうすればご本人が「したい」と思うことを実現できるかを考えてみませんか。
それができるのが、在宅介護ならではの良さです。


● 声に出して伝えることで実現することもある
ご本人の希望を、家族や介護サービスが協力して実現した例をご紹介しましょう。

脳卒中で半身不随になってしまった女性が要介護認定を受け、退院後はポータブルトイレを使用することになりました。
しかし、その女性にはポータブルトイレを使うことに強い抵抗があったのです。
介護生活がはじまってからも「ちゃんとお手洗いで用を足したいわ」といつも話していました。

介護プランは現状を見て無理のない目標が設定されるため、ご本人の希望とは異なるプランになってしまうことがあります。
この女性のケースも「身体の状態」や「家の間取り」から、トイレまで行くのは無理だと退院する時に病院の理学療法士さんに評価されていました。お手洗いで用を足すという女性の希望は叶えられませんでした。

しかし女性の希望をヘルパ―が訪問リハビリテーションの理学療法士に相談したことで状況は一変します。
この理学療法士は介護プランにのっとった生活をサポートしていて、女性の希望を知りませんでした。

ご本人の希望が伝わったことで、その後は装具を付けて歩く練習が介護プランに組み込まれ、間もなくトイレを使用できるようになるまで回復しました。
トイレに行くことができるようになると、今度は家のお風呂にも入ることができるようになり、行動範囲や生活の質が大きく改善したのです。

これには、私も驚きました。
トイレはもちろん、お風呂なんてとても無理だろうと思っていたのに、最終的にはリハビリの到達点のひとつである「湯船に入る」まで実現されたのですから。
目標を持って意欲的に取り組むことが、どれほどのパワーをもたらすかを実感しました。


この例は、ご本人のがんばりとご家族の協力、そして専門家の適切なサポートによって、実現できたことです。
何より、ご本人が「どうしても叶えたい」という思いがあったからこそ、介護チームが一丸となって支えることができたのだと思います。

ご本人やご家族に、生活の中で「これだけは譲れない」という思いがあるなら、声に出して伝えていきましょう。
言葉にしなければ、「現状で満足しているんだな」と思われてしまいます。
ご本人が「夢」や「目標」を話しやすい環境をつくることも大切ですね。

希望を叶えるために何ができるのか知恵を絞り、実現する方法を考えるのが、私たち介護職の仕事でもあるのです。


● 目標を達成すると次の目標が生まれる
在宅介護の日々は、ともすれば単調になりがちです。
けれども、目標を持つことができれば実現に向けて進むことができると思います。

たとえばご本人が「旅行に行きたい」「外食がしたい」といった夢をお持ちなら、そのためには身体を起こしている時間を増やして、端座位で座ったり、歩行訓練をがんばったりすることが目標の実現に近づくことになるでしょう。

「まだ横にならないで」「リハビリしないとダメよ」と言われるより、ずっと前向きになれますよね。
また、「旅行のための体力をつける」という理由があれば、食事や睡眠も大切に考えるようになるはずです。

「夢なんて考えられない」という方もいるかもしれませんが、ささやかなことでも良いと思います。

「毎朝、玄関まで行って家族を"行ってらっしゃい"と見送りたい」
「好きなテレビ番組を見ながら晩酌がしたい」

ご本人がしたいことなら、どんなことでも良いのです。
介護生活に彩りや楽しみがあると、日々の過ごし方も変わってきます。
目標が達成できれば、自信になって次の目標も生まれます。

先ほど紹介した女性のように、いまは「絶対に無理」と思えることでも、いつか実現できる日がくるかもしれません。

限界を決めるのは、介護の専門家ではなく、ご本人です。
最終的に到達できなかったとしても、そこまでの道のりは決して無駄にはなりません。
ご本人が叶えたい「夢」や「目標」は、希望の光となって在宅介護の行く先を照らしてくれるはずです。

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