介護家族が知っておきたい食事づくりをラクにする工夫
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。在宅介護において毎日の食事づくりは大変なことのひとつ。
「手軽に済ませたいけれど、栄養バランスが気になる」
「せっかくつくるのなら、喜んで食べてほしい」
そんなとき、食事づくりにも「がんばりすぎない」工夫を取り入れることがポイント。
栄養バランスを保ちながら、無理なく毎日続けられるコツを知っておきたいですね。
今回も、専門家に話を聞きました。
市販の総菜、冷凍食品を上手に活用する方法や、簡単なレシピについてまとめます。
介護者自身の健康管理にも役立つヒントにもなりそうです。
【プロフィール】
(左)セコム医療システム株式会社 健康サービス部長 兼 健康経営推進室長 布尾 啓明
診療所の開業・運営支援、薬剤事業、病院経営情報分析システムの営業を経て、働く人の健康増進関係事業を担当。
(右)セコム医療システム株式会社 健康サービス部 管理栄養士 佐藤 麻理花
特定保健指導、働く人の健康増進事業を担当。
【あわせて読みたい!「高齢者の栄養管理」シリーズ】
・高齢者の食事のキホンは「たんぱく質」と「水分」
・高齢者の食事管理のポイント
● 市販の総菜、冷凍食品を賢く使う!「がんばりすぎない」食事づくりのコツ忙しいときや高齢になりいろいろと面倒になってくると、丼ものやうどんなど、一品で済ませてしまいがち。
お腹は満たせても糖質に偏りがちなので、たんぱく質や野菜のおかずが欲しいところです。
「何でも手づくりしようと思うと大変ですが、市販の総菜や冷凍食品などを上手に活用してほしい」と佐藤さんは言います。
「レンジ調理できる焼き魚がコンビニで売られていたり、スーパーの冷凍食品売り場が充実していたり、栄養バランスを考えた冷凍の弁当などもあります。とてもおいしいですよ。
値段もわりと手ごろで、長期保存もできるので、まとめて買ってストックしておくのもおすすめです」
ただ、市販の総菜や弁当を活用する際には注意点も。
布尾さんがこう続けます。
「成分表示の確認は大切です。
高齢者向けには塩分が多すぎたり、炭水化物が中心でたんぱく質が十分に補えなかったりするものもあります。
あまり神経質になりすぎることはありませんが、購入する前に成分表示を確認する習慣をつけておくと、『これはやめておこう』とか、『こっちのほうがよさそう』と判断することもできます。
少し意識するだけで、食生活全体がずいぶん健康的になるものです」
塩分は、血圧に影響したり、腎臓の負担になったりするので、高齢者が気をつけたいことのひとつ。
厚生労働省の基準では1日あたりの塩分摂取量は男性7.5g以下、女性6.5g以下が目安とされていますが、高齢者の場合、さらに低めの摂取が推奨されることがあります。
かかりつけ医に確認して塩分摂取量の目安を知っておくと、市販食品を選ぶときにも参考になります。
● 栄養たっぷりメニューを簡単、手軽に佐藤さんに、簡単につくれるおすすめレシピを聞いてみました。
「私のおすすめは、『炊き込みご飯』です。
鶏肉や豚肉などの肉類に、きのこ類やレンコンやゴボウなどの根菜、ひじきなどの海藻が一緒に摂れます。
きのこ類や海藻は便通改善にも役立つので、高齢者が積極的に摂りたい食材です。
炊飯器で炊き込めば、お肉はもちろん歯ごたえのある根菜も柔らかく仕上がり、高齢の方でも食べやすいですよ。
具材をたっぷり入れれば、栄養バランスも整います。
出汁をしっかり効かせて、塩分を控えめにしましょう。
おにぎりにして冷凍しておけば、忙しいときにはそれとおみそ汁などがあれば十分。
忙しいときにもラクして栄養バランスが取れるよう、時間に余裕があるときは多めに調理して冷凍しておくことをおすすめします」
ほかにも冷凍食材や缶詰を活用したメニューも教えてくれました。
「最近は冷凍野菜も種類が豊富で下処理がいらないぶん、調理も簡単です。
ささっと炒め物やおひたしにしたり、みそ汁やスープに入れたりするのも良いですね。
ツナやサバの缶詰などと組みあわせると、たんぱく質も一緒に摂れて旨味もアップしますよ」
特にサバの水煮缶は栄養豊富で、いろいろなレシピが楽しめるそうです。
トマトの缶詰とサバの水煮缶を合わせて、レンジでチンします。甘酢やコンソメなどお好みで味を整えれば、「ちょっとおしゃれな味のイタリアンのようでおいしいですよ」と教えてくれました。
● 介護者自身の健康管理も大切に高齢者の栄養管理についてアドバイスをもらいましたが、在宅介護を続けていくためには、介護を支える家族が健康でいることがとても重要です。
布尾さんはこう言います。
「介護を支える世代は、仕事や家族の世話などで忙しく、自身の食事がおろそかになってしまうことが少なくありません。食事は身体の基本ですから、将来に備え、今のうちからご自分の食事に関心を持っていただくことが大事です」
佐藤さんが、健康維持のための食事のコツとして、次の4つのポイントを教えてくれました。
(1)噛む力を鍛える
咀嚼(そしゃく)は食べる力そのもの。
歯がしっかりしているうちから、積極的に噛み応えのある食品を取り入れましょう。
日々のデンタルケアや歯科の定期受診で歯の健康を維持することも大切です。
(2)食事リズム・栄養バランスを整える
元気なときから規則正しい食事習慣をつけておくことが大切。
1日3食が理想ですが、忙しくて2食になってしまう日は、特に栄養バランスを意識しましょう。
炭水化物中心の一品料理で済ませてしまうのは、なるべく避けてください。
(3)カルシウムを意識する
高齢になってから骨粗しょう症になる恐れがあるので、牛乳、ヨーグルト、チーズ、しらす、干しえびなど、カルシウムを多く含む食品を積極的に摂るようにしましょう。
(4)緑黄色野菜を積極的に
ピーマン、ほうれん草、ニンジン、トマトなど、色の濃い野菜は、抗酸化成分が豊富。
加熱して油分と一緒に調理すると、栄養吸収率がアップします。炒め物などがおすすめ。
* * * * * * * * *
介護者の元気は、被介護者のQOL(クォリティ・オブ・ライフ)にも大きく影響します。
今回教えてもらったポイントを参考に、食事づくりの負担を減らしつつ、ぜひご自分の健康も大切にしてください。
無理せずできる工夫で、介護の日々を少しでも心地よく過ごせることを願っています。
【セコム医療システム株式会社 健康サービス部の取り組みについて】
生活習慣病予防を目的とした特定保健指導、食事・栄養情報の発信、健康相談を実施しています。
また健康診断後の受診勧奨などを通じて、セコムグループ社員の健康支援に取り組んでいます。
⇒詳しくはこちら
【あわせて読みたい!関連コラム】
■フレイル予防のための3つのポイント
しっかり噛んで食事ができることは、高齢期の健康状態に深く関わっています。
介護保険制度でも重視されている「フレイル予防」のポイントをまとめました。
■食事介助が怖い!誤嚥(ごえん)や誤嚥性肺炎のリスクとどう向きあうか?
在宅介護で日々の食事と切り離せないのが、誤嚥(ごえん)のリスク。
安全に食事介助をおこなう方法をわかりやすくまとめています。