高齢者の食事管理のポイント
こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。食事の苦労は多いもの。
重点的に意識したいのは「たんぱく質」と「水分補給」ですが、在宅介護では不足しがちです。
高齢期には食欲低下や咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)機能が低下します。
また味覚の変化など、スムーズに栄養を摂取するうえでのハードルは増えるものです。
飲み物だけでは十分に水分を補えないことも、介護者としては悩みの種。
どうすればこれらを克服し、効率よくたんぱく質や水分を摂取できるのでしょうか?
今回も「高齢者の栄養管理」について、専門家に聞きました。
【プロフィール】
(左)セコム医療システム株式会社 健康サービス部長 兼 健康経営推進室長 布尾 啓明
診療所の開業・運営支援、薬剤事業、病院経営情報分析システムの営業を経て、働く人の健康増進関係事業を担当。
(右)セコム医療システム株式会社 健康サービス部 管理栄養士 佐藤 麻理花
特定保健指導、働く人の健康増進事業を担当。
【あわせて読みたい!「高齢者の栄養管理」シリーズ】
・高齢者の食事のキホンは「たんぱく質」と「水分」
● 「1日3食」必要か?要介護状態になって活動量が減り、食欲が低下する方は少なくありません。
「お腹が空かない」という声もよく耳にします。
食べるだけでも体力を要するのが高齢期。
「1日3食は必須」なのか、まず佐藤さんに聞きます。
「無理に3食摂る必要はありません。
1日2食でも大丈夫ですが気をつけたいのはバランスです。
厚生労働省の指針でも、主食と主菜・副菜がそろった栄養バランスの良い食事を2回摂ることが推奨されています」
主食(ごはん・パン・麺)、主菜(魚・肉・卵・大豆製品)、副菜(野菜・海藻・きのこ)を揃えることが基本ですが、なかでも不足しがちなのは、やはりたんぱく質です。
「たんぱく質は高齢期でも若い頃と同じくらい必要ですが、食事量が減ることで十分にたんぱく質が摂れていない方が多いので、間食で補うのがおすすめです。
間食やおやつには甘いもののイメージがありますが、たんぱく質不足が心配な方は、ヨーグルトやチーズ、ゆで卵などの食品が適しています。
最近は栄養機能食品といって、たんぱく質を強化した『高たんぱく』の食品もたくさん市販されています。
意識的に利用すれば、1日に必要とされるたんぱく質量を無理なく満たせるのではないでしょうか」と布尾さん。
布尾さんのおすすめは「牛乳」だそう。
200mlで約6.8gのたんぱく質が摂れ、カルシウムも豊富で吸収率も高いのだとか。
水分補給にもなりますね。
●たんぱく質にカロリーをプラス高齢者の健康維持には、十分なカロリー摂取が欠かせません。
「活動量が少ないから摂取カロリーは控えめに」という誤解から、必要量を下回る食生活を送っているケースが見られます。
「活動量が少なくても75歳以上では、男性なら1800キロカロリー、女性なら1400キロカロリーが必要です。
これを下回ると筋力や免疫力が低下してしまいます」と佐藤さん。
高齢者向けの宅食サービスのお弁当は1食500キロカロリー前後。
ごはんが茶碗に軽く一杯分くらい、お肉や魚の主菜に、ちょっとした野菜のおかずが2品くらいついているイメージです。
3食しっかり食べても1500キロカロリー。1日2食なら、間食で補わないとカロリー不足になってしまいます。
「必要カロリーを補うという考え方においても、たんぱく質を中心にするのがポイント。
ご飯やパンなどの糖質に偏らないことが重要です。
食事も間食もたんぱく質を優先することで、結果的に炭水化物の摂取量も理想的な範囲に収まると思います」と佐藤さん。
1日3食摂れない場合には、たんぱく質と摂取カロリーを意識することで、健康的な食生活に近づけることができます。
間食も大事な栄養補給の機会と考えて、食品を選びたいですね。
● 管理栄養士がサプリメントより食材をすすめる理由プロテインやサプリメントでたんぱく質を補う方法もありますが、「やはりできるだけ食事で摂っていただきたい」と佐藤さん。
「どの栄養素にも、一緒に摂ったほうが良い成分があります。
たとえばたんぱく質なら、ビタミンB6 を一緒に摂ると、たんぱく質の分解や合成をサポートしてくれます。
ビタミンB6は、赤身のお肉やヒレ肉、ササミなどの脂質が少ない肉類に多く含まれるものです。
市販のプロテインもある程度は効率的に吸収されるよう配合されていますが、食材にはそれぞれちゃんと吸収されやすいビタミンも含まれていることが多いです。
料理にひとさじ混ぜるとか、補助的な使い方は良いと思います」
「食事には咀嚼(そしゃく)という大事な運動が含まれています。
『噛む』ことをしないと身体は衰える。
しっかり噛むと、唾液が分泌されます。
胃に食べ物が入ると、結腸反射も起こる。
つまり腸で便を押し出す動きがはじまるんです。
消化器は食道から腸まで全部つながっていて、そのはじまりは『食べ物をしっかり噛む』ことなんですよ」と布尾さん。
食事は単に栄養を補うだけではなく、身体全体の健康を維持するための重要なプロセス。
サプリメントでは代替できない恩恵をもたらしてくれるのです。
食べる行為そのものが、身体を整える基盤であることを忘れないようにしたいですね。
● 水分補給にもちょっとした工夫を
要介護状態の高齢者の場合、トイレの問題もあって水分補給を敬遠する傾向があります。
認知症の方などは、水分補給の必要性を理解できず、拒否されてしまうことも。
必要な水分量をまかなうには、どうしたら良いのでしょうか。
ポイントは、「食事と間食」と佐藤さん。
無理なく水分を摂ってもらう工夫をいくつか紹介してくれました。
「寒くなると水分摂取量が減りがちです。
水分補給してほしいタイミングで、温かいお茶にちょっとしたお茶菓子を添えれば、召し上がってくれるかもしれません。
飲み物をあまり飲めないようなら、スープやお味噌汁など、水分量が多いメニューも良いですね。
ご飯を柔らかめに炊いたり、白菜や大根など、水分量が多い食材を使ったりするのもおすすめ。
茶碗蒸しなども、水分がたっぷりでたんぱく質も一緒に摂れて良いと思います。
のど越しも良いので、召し上がりやすいはずです」
水分補給は、「飲み物」にこだわらなくて良いということ。
あまり水分を摂れない方には、『水分多め』のメニューで食事から摂る水分を増やすことを意識してみてくださいね。
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次回は、介護家族が知っておくと便利な「食事づくりをラクにする方法」を聞きます。
どうぞお楽しみに!
【セコム医療システム株式会社 健康サービス部の取り組みについて】
生活習慣病予防を目的とした特定保健指導、食事・栄養情報の発信、健康相談を実施しています。
また健康診断後の受診勧奨などを通じて、セコムグループ社員の健康支援に取り組んでいます。
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