ケーススタディで理解する、認知症の人の「なぜ?」

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ケーススタディで理解する、認知症の人の「なぜ?」

こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。

認知症の人が見ている世界、感じている世界を「あなたも想像してみましょう。」 認知症を理解しようとするとき、意識したいのは認知症の人が「見ている世界」です。
認知症の人が「見ている世界」や「感じている世界」は我々とは違います。

認知症の人が怒ったり、拒んだり、逃げ出したりする原因は、「見ている世界」にあるかもしれません。
相手がどのような世界を見ているのか、想像してみましょう。
認知症の人の「なぜ?」を解くヒントになると思います。


●「想像してみてください」あなたならどうしますか?

【ケース1】言葉のわからない国で、突然トイレに行きたくなったら?
あなたは、学校のような場所で講義を受けています。
周囲は知らない言葉、知らない人、知らない空間です。


そんなとき、急にトイレに行きたくなりました。

伝えたいのに、言葉が通じない。
切羽詰まって立ち上がろうとすると、「座っていろ!」と言わんばかりに皆が自分を押さえつける。

あなたなら、どうしますか。

身振り手振りで必死に伝えようとする人もいるかもしれません。
恥ずかしさや焦りから、泣いてしまう人もいるかもしれません。
なかには暴れたり、強引に外に出ようとしたりする人もいるかもしれません。

この場面は、デイサービスなど集団の場に身を置いたときの認知症の人の心、「危ないから動かないで!」と言われたときの認知症の人の心のなかをあらわしています。
「伝わらない」という状況は、それだけで人を追い詰めているものなのです。


【ケース2】知らない人から、なれなれしく話しかけられたら?
あなたが道を歩いていると、知らない人がまるで知り合いのように近づいてきました。

笑顔で、距離が近く、いかにも親しげな口調。
その人から「覚えてないの?」と言われたら、あなたはどう感じますか。

「すみませんが、どちらさまですか?」と率直に聞く人もいます。
失礼にならないように、知っているふりをする人もいるかもしれません。
怖い、気持ち悪いと感じて逃げ出そうとする人もいるでしょう。

さらにその人が手を握ったり、肩に触れたりしてきたら?

相手に悪意があるかどうかよりも、「関係性がわからない相手に触れられる不安」そのものが強いストレスになります。

この場面は、認知症の人が「人の顔や関係性を思い出せない状態」で人と接するときの感覚を置き換えたものです。
親しみを込めて距離感の近い関わり方をしたからといって、心を開いてくれるわけではありません。


【ケース3】自分だけがまったくついていけない
あなたは、スポーツジムのスタジオレッスンに参加しています。
周囲は上級者ばかり。動きが早く、次々と変わるポーズや振り付け。


自分だけ、何もできない。
手も足も出ない。
恥ずかしさ、焦り、場違いな居心地の悪さ。

それでも負けん気で踏ん張る人もいれば、逃げ出す人もいるでしょう。
なかには、「教える人が悪い」「もうやりたくない」と怒る人もいます。

この場面は、活動やアクティビティについていけないときの感覚のイメージです。自分だけができない居心地の悪さや、焦りが重なります。
「できない」「わからない」ときの反応は人それぞれ異なるものです。


【ケース4】「できるでしょ?」と難しいことを求められたら?
キッチンで、誰かがぞんざいな口調で、ある料理をつくるよう、あなたに求めてきます。

「これくらいできるでしょ?」
「さっきも同じことを言ったじゃない!」

けれどもつくり方の説明は長くて複雑。
知らない言葉が次々と出てきて、頭に入らない。
考える時間もなく、次の指示が飛んでくる。

強い口調が怖くて、「できない」と言えない。
できない自分を見せたくない。
恥ずかしくて自信がなくなってしまう...そんな気持ちになるのではないでしょうか。

この場面は、日常動作や家事を求められたときの心のなかをあらわしています。
「いつもやっていたことだから、これくらいできるはず」と思うかもしれません。
確かに昔は段取りを考えて、キッチン用具や食材の準備ができていました。
それが思い出せなくなってしまうのが、認知症というものなのです。


【ケース5】愛想よく笑顔を浮かべた人が、勝手に家に入ってきたら?
宅配業者がニコニコしながら、当たり前のように家のなかに入ってきました。

「ついでにやっておきますよ」と、寝室や身の回りのものに手を伸ばします。
親切なのかもしれない。でも理由がわからない。

プライベートな空間に、知らない人が入り込んでくる不安。
あなたなら、どのように対処するでしょうか。

この場面は、訪問介護サービスのスタッフが自宅に入ってくる状況をイメージしたものです。
「なぜ、この人がここにいるのかがわからない」「何をされるかわからない」という感覚があれば、警戒したり、追い出そうとしたりするのは当然のことだと想像できます。そこから物が盗られと、妄想が生まれます。


【ケース6】見知らぬ場所に連れていかれて、服を脱がされそうになったら?
知らない人に誘われ、連れていかれた先は、まるで宇宙船の中のような無機質な空間。
見たこともない不思議な機械があり、水のにおいがします。


なぜこんな知らない場所に連れてこられたのか、不安しかありません。
そんななか知らない人が自分の服を脱がそうとしています。

恐怖心でいっぱいになり、「逃げなくては!」という思いに駆られるはずです。
大声で助けを求めたり、必死に暴れて抵抗したりするのではないでしょうか。

この場面は、入浴介助や医療的ケアの場面で感じる恐怖をイメージしています。
状況が理解できないまま、身体に触れられたり、服を脱がされたりすることは、認知症の人にとって恐怖そのものなのです。



●認知症の人の世界を少しだけ想像してみましょう
ここに出てきた場面は、どれも特別なケースではありません。
認知症になれば、誰にでも起こりうることです。

・ここがどこだかわからない
・何が起きているのかわからない
・誰が味方なのかわからない
・言葉がよくわからない、言葉でうまく伝えられない


そんな環境に置かれたとき、人は不安になり、混乱します。
ときに拒んだり、怒ったり、逃げようとします。
暴力的になることもあります。

認知症の人の言動も、その多くが、その人なりに状況に対処しようとした結果だということ。
反応は人それぞれ違います。

「どうして、あんなことをするのか」ではなく、「どんな世界のなかにいるのか」を想像してみてください。
認知症の人への向き合い方が少し変わるのではないでしょうか。



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