こんにちは、セコムの武石(たけいし)です。
親の介護では、負担が偏ることも少なくありません。
きょうだいで介護を分担するには、現実的な工夫が必要です。
●きょうだいの「できること」を整理する
親の介護を中心で担う人ほど、「自分ばかり負担している」と感じやすいものです。
一方でほかの家族はどのように思っているのでしょうか。
きょうだいのあいだで何となく役割が固定されていて、「何を手伝えば良いのかわからない」という声はよく聞きます。
きょうだいのあいだで感じ方に違いがあるケースは少なくないのです。
まずは、親の生活を支えるために必要なことを整理してみましょう。
食事や通院の付き添い、買い物、手続きなど、すべきことを書き出します。
「これは私がやっている」「ここは誰かにお願いしたい」など、きょうだいで見えるようにリストアップするのがポイントです。
リストをお互いに確認しながら「なんで手伝ってくれないの?」ではなく、「今こういう状況。どう思う?」と相談するのが良いでしょう。
リストという具体的な「物」があると「すべきこと」が明確に伝わります。
遠方にいても、仕事が忙しくても、できることは意外と多いものです。
送金やネットでの買い物支援、手続きの代行なども立派なサポート。
家族がそれぞれの立場でできることを持ち寄る。
その積み重ねが、無理なく続けられる介護につながります。
●「相手に期待しすぎない」ことで心が軽くなる
たとえきょうだいでも、相手の行動を変えることは難しいもの。
「言っても動かない」「わかってもらえない」と感じるたびに、いちばん苦しくなるのは自分自身です。
そんなときは「相手に期待しすぎない」という考え方を試してみましょう。
「私がやるのは、親のためでもあるけれど、最終的には自分のため」
そう思えると、気持ちの持ち方が変わります。
逆に普段から自分がやりたいと思うこと、やれると思うこと、やらなければ自分が後悔すると思うこと以外は、手を出さないというスタンスも大切にしてみてください。
「自分のために、自分が納得しているからやる」と考えれば、きょうだいのあいだで負担の多寡を比べることも、相手を責めたくなる気持ちも、少し薄れるかもしれません。
怒りが込み上げてきたときこそ、「私は何に怒っているのだろう?」と一度立ち止まってみてください。
もしかするとその怒りは、親のためというより「わかってもらえない寂しさ、くやしさ」や「自分も助けてほしい気持ち」から来ているのかもしれません。
それならば最優先でやるべきは、相手の行動を変えるより、自分の気持ちに気づきいたわってあげることです。
何よりあなたの人生において、一番大切なのはあなた自身です。そのこと忘れないでください。
●愚痴は「愚痴」として伝える
介護の疲れや不満をためこまないためには、「ただ聞いてもらう場」を持つことが大切です。
きょうだいと話すとき、最初に「今日は愚痴を聞いてほしい」と前置きするのがおすすめ。
話を聞いてもらっていると、わかりきっていることをアドバイスされ、かえってモヤモヤがたまるといった経験はありませんか?
アドバイスや解決策を求めているわけではなく、「聞いてくれるだけで助かる」ということを最初に伝えておけば会話のすれ違いは防げるはずです。
また、きょうだいと話す機会を持つことで情報共有にもつながっていきますし、量で測れないあなたの気持ちの介護負担も伝えることができます。
介護の方針が変更になったり、お金の使い方を考えたり、将来のトラブル回避にもなるので話しておきましょう。
エンディングノートなどにまとめておくのも良いと思います。
「本人の希望」「家族の考え方」を言葉や文字で残しておけば、いざというときに判断がしやすく、きょうだいとの誤解が減るはずです。
「言葉にすること」は、感情の整理であり、家族の絆を守る行動でもあります。
「感情」と「情報」を共有できれば、介護にかかわらないきょうだいにも当事者意識が少しずつ芽生えていくのではないでしょうか。
完璧な役割分担はできなくても、思いを理解しあうことはできるはず。
それこそが、きょうだいで支える介護の土台です。
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